二章 戦略的撤退
「あはは……ばれちゃった……」
クリスが気まずそうに笑いながら舌を出した。
「笑い事じゃないです!今まで同姓ということで大目にみていたのに!」
ハンナは顔を真っ赤にしながらクリスに詰め寄る。
「おま……まじかよ……おかしいとは思ったがまさか……」
バルトは今までのクリスにしたことを思いだし青ざめた。
まじで男だと思っていたから、それなりに同姓のノリで色々やってしまっている。
最初の頃がっつり胸を揉みしだいていたよな……
そしてそんな事がフランにばれたら間違いなく……殺される…… 下手に動いて自滅するわけにはいかず、バルトは静観することに決めた。
「悪かったよ、でも別にそこまで怒ることでもないんじゃない?僕がいうのもなんだけど、男だったからってハンナ達より有利になってないんだし」
クリスは少しバルトを睨み付けながらハンナをなだめる。
「いくら既成事実を作ろうとしても、バルトはいつも相手にしてくれないしさ……結局性別なんて、どちらでも変わらないんだよ……」
「そう言われると……そう言う気がしてきますが……」
ハンナはクリスの今にも泣きそうな顔を見て、少し同情し始めた。
「いくら男の人と思っていたとはいえど……こんな可愛いクリスさんのアピールを無視……バルトさん本当に男なんですよね?本当についてます?」
フランにいたっては、バルトの性別を疑い始めた。そして意外にぶっこむ系なのね……
ん?……そして、何で俺が悪いような方向に話が向かってるんだ?
バルトはクリスを見ると、ニヤリと口元が笑うのが見えた。
クリスの野郎……やりやがった……
ここで俺が下手に否定すれば、クリスにした様々なまずい話が表に出る。
逆に黙っていれば、俺は無神経クズ野郎確定。
クリスのやつめ……完全に自分がついていた嘘をうやむやにし、俺を嵌める気だな……
バルトはクリスをジト目で見返すと、クリスはバルトにだけ見えるように舌を出した。
「あの……色々と気を付けます……すみません」
バルトは無神経クズ野郎を選び、唇から血を流しながらクリスに謝った。
「今回は嘘をついてた僕も悪いし、水に流すよ」
クリスは勝ち誇った顔でバルトの頭を撫でた。
「バルトさん、少しは女の子の気持ちを勉強しなくちゃですよ?」
フランがバルトに諭すように言うと、ハンナが深く頷いていた。
バルトは下を向いたまま、震えている。
クリス……いつか見てろよ……
「戦略的撤退?」
リリィがバルトにしか聞こえない声で、笑いをこらえながら聞いた。
「……知ってたくせに教えなかったリリィも許さないからな……」
バルトは復讐を静かに誓った。
「本当に皆さん仲が良いんですね!羨ましいです!」
騒ぎながら騎士団本部へ歩いていると、嬉しそうにラルカがバルトに話しかけた。
「まぁな……パーティーを組んだのは最近なんだが、それなりに死線を潜ってきたし信頼は出来るのは間違いない」
「え!そうなんですか!?てっきりかなりの長いパーティーかと」
ラルカは驚き目を丸くしている。
「色々ありすぎて大変だけどな。こいつらはラルカが想像している数十倍は変わってる」
「あ、あはは……でも、仲が良いならそれだけで十分ですよ……誰が敵かも分からなくなるくらい歪んだ関係ほど辛いものはありませんから……」
ラルカは少し悲しそうにバルトに微笑んだ。
「それってやっぱり、今回の任務に何か関係が……」
「遅すぎて迎えにきたぞ!!ケルベロスの英雄達よ!」
バルトがラルカに尋ねかけたタイミングで、キースが転移魔法で目の前に現れた。
「本当いつも元気だな……まぁいい……せっかく来たなら転移してくれ」
「ん?なんだ?ん?転移していいのか?」
バルトが相変わらずのキースのタイミングの悪さに呆れながら、キースが展開した魔方陣に入り騎士団本部まで移動した。
久しぶりの更新ですが、また見ていただけると嬉しいです!




