↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/87

六章 悲しみの果てに

「もう終わりだ……俺の夢は完全に断たれた……」


 バルトは暗い自室のベッドの上で静かに涙を流す。

 あれからどうやって帰ってきたか覚えてないが、気付いたらベッドに寝て天井を眺めていた。

 かなりの長い時間見つめていたのだろう、外はすっかり暗くなっている。


『あのさ……僕とは感情とか、視界とか色々リンクしてるの知ってる?』


 バルトの頭の中にいきなりシトリーの声が響く。


『あー悪い。うるさかったか?』


 声に出さず会話が出来るのか試す為にも、バルトは頭の中で返事をした。


『そこそこね。今日1日で、バルトの人間性が良く分かったよ……』


 シトリーは若干引きながら、バルトに答える。

 どうやら頭の中だけで、会話は出来るようだった。


『なら隠しても仕方ないか。俺はエロい事をするためだけに生きている』


 全く臆することなく、バルトは堂々と答える。


『だろうね。あのさ……そんなにエロい事したいの?』


『当たり前だろ!俺は幼少期からそれだけを目標に生きてきたんだぞ!……それより少しは元気が出たみたいで、安心したよ。

 この前まで闘ってる時には想像出来ないくらい、控えめだったもんな』


 バルトはシトリーがいつもの調子に戻り安心した。騎士団員やハンナ達と街であった時は、かなり弱気な発言が目立っていて心配していたのだ。


『人生を懸ける程の事には思えないけど……お陰様でもう大丈夫だよ。バルトには本当に感謝してるし……だからバルトがそういう事したいなら、お礼にしてあげてもいいけど……』


 シトリーが少し恥ずかしそうに、バルトに提案する。


『仕事仲間とはいえ使い魔だから条件的には問題ないんだけどさ……ロリは愛(め)でる対象であり、攻略対象ではないんだよなぁ……嬉しいが気持ちだけ受け取っとくわ』


『ロリ?自分で言うのもなんだけど、僕おっぱいは結構大きいよ?』


『シトリー、俺は実際に君の胸を見ているが……お世辞にも大きいとは言えないぞ』


『それは僕の不完全な姿でしょ?』


『不完全……?あっ!』


 バルトに衝撃が走った。

 そうだ……シトリーは不完全な姿で召喚されたと言っていたのだ。


『あの……どれくらい大きいんでしょうか?』


『なんで敬語なの?どれくらいって言われてもなぁ……少なくともハンナ達よりは大きいかな』


「なん……だと……」


 思わず声に出してしまった。クリスは論外だが、ハンナとリリィはサイズ的に大きい方にも関わらず、それを越えてくる……だと……


『シトリーさん、とりあえず召喚しても宜しいでしょうか?』


『え!?まぁ……うん……』


 シトリーは少し恥ずかしそうに了承する。


 バルトは急いで魔法陣を展開し、親指の先を噛み血を垂らした。

 あぁ……やっと苦労が報われる時がくるんだ。

 夢は破れたが、思わぬ幸運に歓喜の涙が溢れそうになる。

 異世界転生ばんざ……え?


「あれ?なんで?」


 召喚されたシトリーは、前回見た時と一切変わらなかった。


「あはは……バルトの魔力だとこの姿が限界なのかも」


 シトリーが気まずそうに笑いながら、目を逸らす。


「もう、誰か俺を殺してくれ」


 バルトは白目を剥(む)きながら泡を吹いて倒れた。






 バルトが目を覚ますと、シトリーが膝枕をしながら心配そうに見つめている顔が目に入った。

 昔もこんな事があった気がするが、思い出せずシトリーを見つめ返す。


「バルト大丈夫?いきなり倒れるからビックリしたよ」


「すまない、あまりの衝撃に脳が耐えきれなかったらしい」


「変に期待させてごめんなさい……こんな姿じゃ嫌だよね」


 シトリーは少し悲しそうに自分の胸を撫でる。


「いや別に良いんだけど、むしろ良いんだけど、何て言うのかなぁ……まぁ本当に困ったときはお願いするよ」


「本当に!?」


「本当だ。魔王様との一夜って価値は最強クラスだ」


「それなら良かった!……けどバルト達さ、何か勘違いしてない?」


 シトリーは嬉しそうにしながら、バルトに質問してきた。


「僕は正式には王女だからね?最初は悪魔の王女様だからそう呼んでるのかと思ったけど……君達が言ってる魔王って魔界の王の事でしょ?」


「…………え?どういう事?」


 バルトはシトリーの説明を理解出来ず聞き返す。


「だから、君達の言う魔王は僕じゃないってこと。そもそも魔王なんて簡単に召喚できないよ。僕だって見たこともないんだから」


「……まじ?」


「まじ」


シトリーが真顔でバルトに返した。


「それにバルト達が勇者と呼んでいたクズは勇者なんかじゃないよ。もう死んでしまったと思うけど、昔見た勇者は全てにおいて規格外の強さだったし。

 それに勇者の証である紋章が首に入ってなかったからね」


「おいおい……国の常識をひっくり返すようなレベルの話を淡々とするな!」


「僕からすればバルト達が非常識にしか思えないけど?」


「……確かに魔界とここの常識なんか違うに決まってるか。今更大した問題じゃないしな」


 バルトはシトリーの膝から頭を上げ、座り直す。

 良く考えたら報酬金がもらえないなら、どうでも良い問題だったのだ。


「それより、勇者を見たとか言ってたけど旅でもしてたの?」


 バルトはなんとなく気になって聞いてみた。


「そうだよ、色々僕もあったからさ。でも楽しかったし今では良い思い出だけどね」


「へぇー、なんか印象に残ってる国とかはあるのか?」


「そうだねぇ……バルトが好きそうな国だと亜人の国【ノクターナル】かな?亜人はオープンな性格の人が多いからね。色々な夜のお店があって賑やかな国だったよ」


「シトリー、ノクターナルで間違いないな?」


 バルトはベッドに入りながら、シトリーに確認する。


「そうだけど……ここからはかなり遠……」


「明日朝一から用事が出来た。俺はもう寝るからベッドに入りなさい」


「一緒に寝て良いの!?」


「シトリーは命の恩人だ。構わない」


「し、仕方ないなぁ」


 シトリーはそう言いながらも嬉しそうに、バルトのベッドに潜り込む。


 バルトはシトリーに腕枕をしてあげながら、目を閉じた。








 母さん……僕は旅に出ます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。