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【文化祭準備編24】文化祭準備に参加させられた僕はどう足掻いてもサボる

今回は文化祭準備をサボり、逃げる光晃です

みなさんは集団の中にいる事に苦痛を感じた事はありませんか?

では、どうぞ

 昨日はえらい目に遭った……そう言えば昨日で思い出したけど、あの立て籠もり事件の後、元・実習生は警察に逮捕されたらしい。らしいってのは葵衣が真理姉さんからメールで報告してきて僕が葵衣から聞いた。僕は別に教えてくれって言ってないのに。で、そんな事件があった翌日である今日、僕は相変わらずえらい目に遭っている


「岩崎!次は看板を直すんだからね!」

「はいはい」


 登校した僕は理沙に捕まり、破損した教室の装飾を直すべく理沙にこき使われている。


「はいは1回!!」

「はい……まったく、どうして僕がこき使われなきゃいけないんだよ……」


 どうして僕がこき使われなきゃいけないんだ……そもそも、僕が何をした?僕は何もしてないのに……


「岩崎が文化祭準備をサボるからでしょ!!」


 そうだった。僕はサボった罰として朝から理沙にこき使われているんだった……こんな事なら亜優美と元・母のバカみたいな夢を見逃し、優奈の家にいるんだった……


「そうでしたね。すみませんね!サボって!」


 もう開き直るしかないけど、僕は文化祭をサボるって目的を諦めたわけじゃない。隙を見て逃げ出してやる!!


「済まないと思ってるなら開き直るな!働け!!」


 元・実習生に刺された時に大ケガしとくんだった。こんなところで僕の悪運の良さが恨めしい


「はいはい」


 僕は理沙の監視の元、看板の修復作業を黙々とこなす。作業中は理沙が見張っているだろうから逃げ出せない。と、なると逃げだすのは昼休みになってからだ


「はいは1回!手を動かす!」


 チッ、援交していたバカの分際で口うるさいな……


「看板の修復は終わったよ」


 看板の修復が終わった。それにしても、破損したって言う割には簡単に修復できたところを見ると元・実習生は本当にこの学校と僕に大ダメージを与えるつもりだったんだろうか?ひょっとしたら文化祭をメチャクチャにするのが目的じゃなく、僕を殺す目的の方が大きかったんじゃないかと思う


「そう。ご苦労様」


 別に理沙からの労いなんて嬉しくも何ともないし、達成感も感じない。学校の文化祭なんて子供のおままごとに毛が生えた程度だからかな?


「うん。それより、ちょっとトイレに行きたいんだけど?」

「ちゃんと戻ってくるって約束するなら行ってきていいわよ」

「逃げないよ」


 逃げないなんてもちろん嘘だ。こんなバカみたいな事なんてやってられるか


「そう。じゃあ、行ってらっしゃい」


 あれ?てっきりトイレまで付いて来ると思ったのにアッサリ解放された?どうして?


「さて、理沙もいなくなったし、見張りもいない。逃げるなら今しかない」


 チャンスだ!逃げるなら今しかない!どういうつもりで僕を1人にしたのかは知らないけど、岩崎光晃という人間を信用し過ぎだ。


「さて、逃げるか」


 トイレに行くフリをし、誰にも見つからずに学校を抜け出せた。今日は昼食を持ってきてないし、財布は前もって制服の内ポケットに入るタイプのものにすり替えておいた。携帯も持ってる。カバンは学校に置きっぱなしだけど、なくて困るものはない


「どういうつもりかは知らないけど、僕を信用し過ぎだよ」


 僕は遠目で学校を見ながらマンションに戻る道を歩く。理沙達に言ってるかどうかは知らないけど、僕は手放しで人を信じたりしない


「さて、このまま文化祭が終わるまで姿を隠すか」


 優奈はともかく、今回に限って言えば葵衣を連れて行くかどうか迷う。優奈は真理姉さんの連絡先を知らないけど、葵衣は知っているから絶対にチクられる


「帰ったら葵衣に文句を言われるのは間違いないだろうなぁ……」


 葵衣に文句を言われるのは覚悟しておこう。だけど、その前に警察に見つかったらどうしよう?高校生がカバンも持たずに制服でうろついてる。これって確実に補導の対象じゃないかな?


「君、高校生だよね?こんなところで何してるの?」


 言ったそばからこれだ。目の前の男性警察官はどうしてタイミング悪く僕に声を掛けてくるんだろう?


「そうですけど?それがどうかしましたか?」


 とりあえず答えたけど、この先どう切り返したものか……高校生が手ぶらでうろついていても不自然じゃない理由……何かないかな?あ、騙されるかは知らないけど、やってみる価値のある案を思いついた


「どうかしましたかじゃないよ。高校生なら今は学校があるだろ?どうしてそんな時間にうろついてるのかな?」


 何となくコイツの態度が気に入らない。そもそも、警官の制服を着ているけど、本当に警察官なのかな?ま、いよいよもってウザいなと思ったら警察手帳を見せてもらおう


「僕の学校は現在文化祭の準備中でしてね。僕はその買い出しを任されたんですよ」


 文化祭の準備中だって事は嘘じゃない。だけど買い出しってのは嘘だ。


「そうか……そう言えばそろそろ文化祭の季節か……」

「ええ、ですから早いところ買い出しを済ませて学校に戻りたいんですが?」

「わかったよ。悪かったね。引き止めちゃって」

「いえ。職務なら仕方ないですよ」


 僕は警官に軽く一礼して別れた。正直、バカで助かった……


「予想外の事もあったけど、これは急いで帰った方がいいかな」


 声を掛けてきた男性警察官は簡単に騙されたから助かったけど、次がないとは言い切れない


「ただいま……」


 マンションに帰った僕は優奈に見つかってもいいけど、葵衣に見つからないように部屋に入る。


「あれ?光晃?学校はどうしたの?」


 部屋の奥から出てきたのは優奈だった


「文化祭の準備が嫌でサボった」

「そっか」

「うん。ところで葵衣は?」


 優奈がいるのはいいとして、今は僕と優奈と葵衣の共同で生活している。葵衣がいないのはおかしい


「水沢さんなら買い物に出かけてるけど?」

「そう。どうやら僕の帰ってくるタイミングはよかったみたいだね」


 帰って来て葵衣がいたんじゃすぐに学校に逆戻りだ。優奈しかいないのが幸いした


「どうしてタイミングがいいかは知らないけど、とりあえず帰ってくるタイミングはよかったんじゃない?」


 優奈といると心地いい。なんて言うか、僕がサボった事を咎めないのもそうだけど、僕がしたいようにさせてくれるし


「うん。はぁ~疲れた」

「とりあえず着替えてきたら?」

「うん、そうする」


 僕は着替えに一旦自室に戻る。


「葵衣は教師を目指しているから仕方ない。だけど、少しはやりたくない人間の意見も聞かないといい教師にはなれないんだよなぁ……」


 全てを肯定しろとは言わない。だけど、やりたくない人間にはやりたくない理由がある。例えば、人間関係で仕事を辞めた人間が仕事をしたくないのは人間関係疲れたからって理由がある。でも、ただ働けと言うなら誰だってできる。問題はどうして働きたくないかを聞き、その人にどういった職業が向いてるかを探す方が大切だ


「はぁ……僕と向き合ってくれる教師はいるのかな?」


 真理姉さん然り、北南高校の教師は自分の意見を押し付けてくるから嫌いだ


「ま、教師が生徒と向き合うなんてドラマじゃない限りは無理か」


 教師が生徒1人1人と向き合うなんて不可能だ。アイツ等は忙しさを免罪符にして生徒と向き合う事から逃げているし


「葵衣と付き合ったのは間違いだったかな……」


 今更になって葵衣と付き合ったのは間違いじゃないかと思い始める。教師を目指す人間と僕とじゃ根本的に合わない


「何……それ?」


 着替えてる最中に買い物に行ってるはずの葵衣の声がする。


「葵衣……?」


 振り返ると怒った顔の葵衣がいた


「ねぇ、光晃。私と付き合ったのは間違いだったの?」

「えっ……?」

「さっき言ってたよね?『葵衣と付き合うのは間違いだったかな?』って」


 さっきの独り言を聞いてたのか……って事は言い訳できないな


「うん、言ったね」

「それってどういう意味かな?」


 いつもの困った時に見せる泣き顔ではなく、今回のは本気の泣き顔だ


「だって、文化祭準備をしたくない人間の─────いや、僕の気持ちを考えずにただ学校に行けってしか言わないじゃん」


 嫌な文化祭の準備をさせられてるから八つ当たりしているとかじゃない。ただ単純に教師寄りの考え方をする葵衣とは合わない。そう思っただけで八つ当たりじゃない


「それは光晃にクラスの人達と一緒に何かを作る喜びを知ってほしくて言ってるんだよ!」

「それはそうかもしれない。だけど前にも言ったと思うけど、集団の中にいるのが苦痛に感じる人間だっているんだよ。それは理解してる?」

「し、してるけど……」


 集団の中にいる事が苦痛な人間もいるって事を理解してるのにどうして葵衣は僕を文化祭準備に参加させたがるんだろう?


「じゃあ、僕が集団の中にいるのが苦痛だから文化祭に参加したくないって言ったらどうする?」


 試すようで申し訳ないけど、葵衣は僕になんて言う?決まりきった答えなんてないけど、集団の中にいるのが苦痛な人間の気持ちを察する回答だったら『葵衣と付き合うのは間違いだった』という言葉は撤回しよう


「そ、そんなの参加しなくていいって言うよ!!」

「そう。じゃあ、さっきの『葵衣と付き合うのは間違いだった』という言葉は撤回するよ」


 僕はどんな形でも葵衣に文化祭準備に参加したくないって意思を示せればよかった。これ以上葵衣を傷つける意味はない


「うん……」


 葵衣は不安から解放されたせいか、その場に座り込み、泣き始めた


「やり過ぎたね。ごめん……」

「ううん、私の方こそ光晃が文化祭準備に参加したくないって言ってたのに無理矢理学校に行かせてごめんね……もう文化祭準備と文化祭に参加しなくていいから……だから、私の傍にいて……私から離れないで」

「うん」


 僕は自分を甘やかしてくれる都合のいい人間が欲しいわけじゃない。ただ、教師になるなら集団の中にいる事が苦痛な人間もいる事を知っていてほしいだけ。ただそれだけなんだ


「光晃、疲れたでしょ?今日は私が光晃を癒してあげるから」

「うん」


 僕と葵衣はしばらく抱き合い、その後は優奈も合流し、川の字で眠った。クラスの連が大変な思いをしている事なんて知るか。それに、普段は空気みたいに扱ってるクセに行事の時だけ仲間や絆なんて言葉を使う奴なんて反吐が出る

今回は文化祭準備をサボり、逃げる光晃でした

集団の中にいるのが苦痛な人間もいる。学校で1人でいる事は悪い事じゃありません。ボッチだって笑う人は笑わせておけばいい。

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました

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