324 母の日に向けて
ゴールデンウィークも半ば、オンライン塾とバイトのシフトをこなしながら、一週間後に控えた祝日の事を思って周は軽く眉を寄せた。
「今年は何あげようかなあ」
そう、五月の第二日曜日にある母の日である。
日頃の母の行いに感謝の意を示す日であり、毎年の恒例行事にもなっているカーネーション贈るデーのような認識の日でもある。
別に志保子に感謝を示すのは当たり前なのでよくはあるが、その内容に困るのだ。
小さい頃から毎年のように祝っていたし、一般的に考え付くような一通りのお祝いは既にやっている。
そんな訳で毎年祝っている日だし、去年は真昼と共にプレゼントを選びに行ったが、今年はどうしたものか。
「志保子さんにですか?」
前提もなしに突然呟いた周であったが、隣でテレビを眺めていた真昼はテレビの番組が母の日特集をやっていた事繋がりで呟いたと気付いたらしい。
「そう。まあ、毎年贈ってるから面白みがないんだけどなあ」
「母の日の贈り物に面白みって必要です?」
「いや母さんに無難なプレゼントを毎年贈り続けている訳なんで。カーネーションはいつもだし。母さんの部屋の花瓶にドライフラワーが増えるのはいいんだけどそろそろ入り切らなくなって来てるんだよなあ」
「周くんのプレゼントを残しているって事で良いと思いますけど」
「そりゃいいけど、そろそろ新鮮さは欲しいだろ。気持ちが大事とはいえ、そこに本人が欲しいものとか楽しいもの、っていう付加価値があった方が尚更嬉しいだろ?」
風習に則ってカーネーションを贈る、というのも、毎年やれば味気なさを感じてしまうもの。
志保子はそれでも喜びはするだろうが、どうせ感謝を示すなら他のやり方も考えたいものである。
「周くんってご両親想いですよね」
「普通ですーマザコンでもファザコンでもないですー」
「誰もそんな事言ってないですって。これが普通なのが世界的になればいいんですけどね」
「俺の母さんがスタンダードになるのはちょっと」
「そっちじゃないです、もう」
分かっていて敢えてずらした解釈をする周に真昼が横腹を小突いてくるが、痛くも痒くもない。
親の話題を出すとしんみりした雰囲気になってしまうのではないか、という勝手な気遣いだったが、真昼はいつも通りの表情なので意識を少し逸らせたようで内心ホッとしてしまった。
「さておき、本当に何贈ろうかなあ。というか物はもう一通りあげてきたからこそ困るんだよなあ」
大きくなってからは、カーネーションだけでは決まらないなという事で何かしらあげてきたが、普通に思い付くような物は過去にあげてきた。
メッセージカード、下手なりに描きあげた似顔絵、せっせと作った歪んだぬいぐるみ、未だに使われない肩叩き券、お気に入りのレースメーカーのハンカチ、好きな香りのバスソルト、といった具合に小さい頃からその時の周が贈れる多種多様なものをカーネーションに添えて来た。
正直な所、もうネタ切れである。
「物でなければ、データとか体験になりますよねえ」
「真昼の写真連投しておく?」
「そこは私と周くんにするべきでは」
「いや俺は要らないだろ」
「……周くん」
「すみません写らせていただきます」
「よろしい」
半分真昼の写真フォルダを潤すためな気がしてならない。
いやほんと別に俺は要らないだろう、ともう一度ぼやくが真昼に睨まれたので慌てて口を噤んだ。
「……仮にそれに決定したとしても、ちょっと少ないですよね。体験、ですか」
「うーん、家がもう少し近ければなあ。いやまあそしたら普通に帰省したと思うから直接親孝行くらいするんだけど。一日家事やるから父さんと二人で俺の居ない所でいちゃこらしててくれくらいに」
そもそも家が近かったら一人暮らしはしていない、というのはさておき、気軽に帰れる距離であったなら周一人一日帰省して両親に心置きなくリフレッシュしてもらう、という手もあった。
目の前でいちゃつかれると息子としては他所でやれとなるが、仲睦まじい事自体は良い事だし反対はしないので二人に束の間の休みを与えられたらよかったのだが、受験生なのでそうはいかない。
いつかは出来るといいな、くらいの希望を口にした周に、真昼はおかしそうに笑っている。
「今の周くんは家事普通に出来ますもんね」
「昔は出来なかったみたいな言い方。いや今程出来ませんでしたがね! 最低限は出来てましたんで!」
「ふふ、立派な一人前に育ちましたよ?」
その意味深な笑い方は信用していいものなのか。
確かに、当時の周は真昼が頭を抱える程度にはいい加減だったし自分でその自覚はあるが、からっきし出来ない、という程でもなかった、筈だ。致命的なまでの不器用ではないので、本当に最低限はこなしていた。
それを主張した所で真昼にとってはマイナス五がマイナス三くらいになったようなものなのだろう。微笑ましそうな眼差しが、何故だか痛かった。
「うーん、いい案だとは思うんですけど私達が向こうに行けない、と意味ないですよね。かといってこちらに来ていただくのは本末転倒感ありますし」
「あーいや」
「はい?」
「うーん、まあ、家事の肩代わりはともかく、ワンチャン来る機会自体はある、かもしれな、い?」
ここは断言出来ないし理由も真昼には話しきれないので結構な曖昧さで言い淀む。
先日指輪の件で篠塚と打ち合わせをしてきたが、その時に修斗は修斗で依頼をしていた、と聞いた。
先んじて依頼をしていたし結婚記念日に向けての贈り物なので早め早め進行だとも聞いていたので、本当にもしかしたら、直接確認のために一回こちらに来る、というのはあり得るかもしれない。
ただそれが母の日前後になるかは分からないし、画像や映像で確認という事も有り得るので、今母の日の本命として使うには弱い。
「何でそんなふにゃふにゃなんですか」
「少なくとも父さんはあるかもなー、と。それが母の日かどうかは分からないけど、空いてる日がそこになるとな、父さんの事だからそういう日は母さんの側に居たがるけど、逆に母さんのためならどこまでも動くし、うーん」
「よく分からないですけど、何かしらこちらに用事はあるのですか?」
「あるっちゃある?」
「確定ではないと」
「そうだな、聞いてみない事には」
勝手に予定を組む訳にはいかないので、ここは本当に聞いてみるしかない。これもあくまで周の予想であるため、本当にどうなるかは分からない。
要確認、と後で修斗と連絡を取る事に決めた周に、真昼は少し残念そうに目を伏せた。
「そうですか……その、もしこちらを訪ねる予定があるなら、お料理とか振る舞えたら私も参加出来るなと思ったのですが。いえおこがましいとは分かっているのですが」
無意識なのか意識的なのか、真昼は真昼なりに、志保子を母として認識しているようで。
そんな顔をされたら、そんな願いを聞かされたら、周が一肌脱がない訳がないだろう。
「聞いてみる?」
「え?」
「いや普通に聞いた方が早いだろ。用事ついでなら俺も真昼もあんまり気にせずに呼べるし。駄目なら駄目で何か贈ればいいかなって」
「え、でも」
「こっちに来る事で二人の負担が増えるのはよくないなとは思うんだけど、まあ聞いてみないと分かんないし」
確かに何の用もないのに母の日だからと呼び寄せるのは全く恩返しにもならないのだが、用事があってこちらに来た時におもてなしする、というのは一つの恩返しになるだろう。
まあ志保子に真昼が食事を振る舞いたい、なんて言ったら問答無用で二つ返事をするだろうから、本人に直接聞くのは危うさがある。逆に真昼が気を使ってしまうし、周も周で二人共忙しいのに無理を言いたくないと申し訳なさが生まれるだろう。
そういうバランス感覚を持っている修斗に連絡を取るのが一番丸い、と周は戸惑う真昼を置いてスマホで修斗に通話をかけていく。
あっちょっ、なんて慌てたような制止が聞こえてくるが、知らんぷり。
ここは躊躇いなく連絡を取るべきだと通話ボタンを押すと、数回のコールの内に『もしもし?』という不思議そうな声が聞こえてきたので、スピーカーにして机に置く。
「もしもし父さん、久し振り」
『久し振り、周、と?』
「真昼も居るぞ」
どうせそこに居るんだろうなという当たりをつけたらしい修斗に笑いながら、見えてはいないだろうが隣の真昼を手で示す。
数回のコールの間だけでは覚悟が出来ていなかったらしい真昼はオロ……と狼狽えたような様子だったが、周が背中をぽんぽんと叩くと意を決したようにスマホに向き直った。
「お、お久し振りです、修斗さん」
『久し振りだね、椎名さん。いつも周がお世話になっています』
「いえそんな事は……!」
「そのやり取り要りますぅー?」
まるで保護者同士の挨拶をされているようで周としては若干の居た堪れなさを感じるのだが、修斗は周の声に愉快そうに、それでいて穏やかな笑い声を上げた。
『しかし、周がかけてくるのは珍しいね。今度は私にかけてくれるのは嬉しいな』
「今度は……?」
「模試とかその関係のやつで母さんにかけたから」
「成程」
嘘はついていない。
全てを話した訳でもないが、真昼が追求してこないのも分かりきっていたので、バレる事は全く心配していない。
修斗も真昼に秘している事は知っているので余計な事は言わず、やり取りが落ち着くまで待っていた。
『それで、今回はどうしたんだい? 二人揃ってわざわざ通話するんだから何か用事があるんだろう?』
「聞きたい事があるんだけど、あー、母さんは側に居ないよな?』
一応、この時間帯は志保子は居ないだろうなくらいの認識で連絡を取って修斗が一人っぽそうなので話を続けたが、これで志保子が黙って側に居たら大惨事になる。
幸いな事に『志保子さんは今外に出ているよ』と言っているので、これなら問題なく続けられると一気に安心してしまった。
「父さんって次にこっちに予定があるのいつ? というか例の件、直接確認なのかメールで確認なのかどっち?」
例の件、で通じるだろうと雑な信頼で前提を言わずに話を投げたが、流石察しのいい修斗と言えばいいのか、周の言葉に『ふむ』と続ける。
『篠塚さんの件なら来週以降の空き時間に、とは言われてるね。直接見に行こうかとは思っていたよ』
「ちなみに、母さんを連れてこれたりする? 父さんが用件で外してる間俺達が母さんを縫い止めておく前提で」
『あー母の日かな?』
「察しが良くて助かります」
何故周と真昼が、わざわざ二人で、それも修斗に連絡してきたのだから、志保子に関する事だと当たりをつけた上で、志保子を呼びたいのに志保子には聞かせたくない事、そして時期的なものを考慮して、答えに辿り着いたのだろう。
こういう鋭い所が恐ろしいんだよな、と息子としては感心と恐れが半々である。
『そうだねえ、スケジュール的には母の日の前日の土曜なら二人で行けると思うよ。周の家に泊まっていいなら翌日に帰るかな、当日の時間が少なくて申し訳ないんだけど、私は前日に用事があって、お互いに母の日の翌日は仕事だからね。時間が少なくて申し訳ないしけど』
「だってさ」
「えっえっ」
真昼に大丈夫そうだぞ、という意味で声をかけるが、真昼は突然自分が話題に出て狼狽えるばかりだ。
『何かしたい事があったのかい?』
周の言い方的にこれは真昼側のお願いなのだと察したらしい修斗が、周に向けるものよりずっと優しい声音で続きを促す。
何だかんだ、修斗も志保子に負けず劣らず真昼を可愛い子供だと思っているようで、周としては何だかくすぐったいものがあった。
「い、いえその、あの」
『うんうん』
「……母の日、という事で、その、私も何かしたくて」
言い出した側ではあるが言いにくそうなのは、自分の母親ではない上に時間を奪ってしまう事への抵抗感があるからに違いない。
志保子が理由を知れば「うちの子なのは今更なのにぃ」と言う事間違いなしのいじらしい遠慮だが、本人の性格的にそれを素直に言えないようだ。
「周くんが一日家事代理を提案しましたけど、帰省するには時間の都合が……と。それで、もしこちらにご用事があったならご飯だけでも振る舞えたらいいな、くらいの、甘い考えでした。お二人の疲労やご都合も考えずの提案で大変申し訳なく」
『どうせ周が聞いてみないと分かんないし今から聞くか、っていうノリで椎名さんの躊躇い押し切って電話したんだろうね』
「よく分かってらっしゃる」
『何年親をやっていると思っているのかな。椎名さんもうちの息子がすまないね、急な事で驚いただろう』
「いえこちらこそこんな不躾な提案で!」
『いやいや、志保子さんのために何かしようって思ってくれる事そのものが、私としては嬉しいよ。志保子さん、喜ぶだろうから』
最愛の妻が喜ぶ事をしようと計画している、というだけで修斗からしてみれば応援して協力も辞さないだろうし、それが息子の恋人だというのだから尚更好意的に受け止めているのだろう。
『後で志保子さんに聞いてみるね。今生憎席を外しているものだから確約は出来ないのだけど、私としては色よい返事をしたいとは思っているよ』
「どうせ母さんの事だから『そういう事なら行くに決まってるじゃない!』とか言い出すんだよなあ」
「そ、それがあるから躊躇ったのですけど!」
真昼も志保子と長く付き合ってきているからか志保子の性格や行動も何となく読めるからこそ、遠慮している所があったのだろう。
そこまで読めるなら、本当に志保子が真昼の事を愛しく思っているのももう少し実感してほしいものであるが。
「遠出するのは体力も時間も居るのに、私の思い付きで浪費させるのは嫌というか」
『浪費だなんて。寧ろ日々の潤い〜って志保子さんがテンション三割増しになって仕事にもやる気が出ると思うんだ』
「母さんの真昼への愛がおかしい」
『娘を欲しがっていたからねえ』
何回も聞いた台詞であるが、そこに嘘偽りがない事は周がよく知っている。
一人息子として目一杯愛されてきたが、志保子が第二子を望んでいたのは知っているし、それが叶わなかった事も。
真昼は、待望の娘(候補)なのだ。
ビデオ通話を起動していないというのに、画面の向こうでは慈しむような眼差しを向けてくれているのが想像出来た。
修斗もまた、娘を欲しがっていた一人だ。
『私達にとって楽しいお出かけになるし、おもてなししてくれるんだろう?』
「……はい!」
優しい煽りに真昼も顔色を明るくして生気たっぷりに返事を返した真昼に、周は自然と自分の頬が緩んでいくのを感じた。
『じゃあそんな気に病まないでおくれ。楽しみにしているよ』
「まずは母さんに聞くところからだけどな」
『どうせ行く! って来るよ』
「違いない」
修斗も周も志保子の反応は手に取るように分かる。
この後志保子が帰ってきたら報告するのであろう。志保子は間違いなく狂喜乱舞する、と修斗の苦労を心配しつつも、何だかんだ嬉しいんだろうな、と自分も少し嬉しくなりながら修斗の結果報告を楽しみに待つ事にした。
通話を切ると真昼は安堵からか深く沈み込むようなため息を落としたが、その表情は暗いものではなく寧ろ明るいもので。
「な、案ずるより産むが易しだろ」
真昼の性格上慎重に慎重を重ねた綿密計画型なので、こういう行きあたりばったりパッション作戦は向かないのだが、だからこそ周が強引さを発揮して引っ張っていく事も時には求められる。
かなり雑な引っ張り方であったが、振り返ってみれば勢いで成功したのだから結果オーライだろう。
どうだ、と自慢げに笑った周に、真昼はへにゃりと相好を崩した。
「申し訳なさはちょっとありますけど、その」
「その?」
「……我儘、言っていいんだなって」
真昼にとってこれが我儘だ、と思う事が、思うように育った環境が少し物悲しかった。
だが同時に、自分の心のままに動いてもいいのだと真昼が思えた事が、動けた事が、周にとっては嬉しいものだった。もっと望んでほしい、とすら思う。
「まあ我儘と言えば我儘……? 寧ろ振り回されるのは真昼だと思うんだけどな。親孝行、という印籠を振り翳して無茶振りもありえるぞ」
「無茶振りって」
「好きなだけ真昼を可愛がっていい日、っていう認識をしかねない」
「有り難い事に普段から会えば可愛がられてますけど……」
「それが倍プッシュだぞ、親孝行してくれる娘可愛い私も親らしく振る舞っていいのよねいいわよね振る舞わうわよ、くらいに」
「嬉しいですけどね」
「それを嬉しい単体の気持ちで受け止められる真昼が凄いぞ……」
好きな相手には非常に重いと自負する周が言える事ではないが、志保子の愛もまあまあ、否、かなり重い。
嫌がられたらすぐに退く観察眼や節度こそあるが、嫌がらなかった時の押しは藤宮家の誰よりも強いし、愛情表現も激しく派手だ。
一歩間違えたら嫌われかねないムーブをかます志保子であるが、真昼はどうやらそれが心地よいとすら思っているのか「だって、嬉しいんですもん」と幾分弾んだ声で肯定するのだ。
与えれば与える程愛情を吸い込んで眩く咲き誇る真昼の懐の広さと逞しさは最近発露したものだが、その成長を見てきた周は胸に熱いものを感じる。
「その調子で小雪さんにも甘えていけー」
「え、う」
志保子に愛されているのは肯定するのだから小雪からの愛情も真っ直ぐ、小雪が意図するように受け取ったらいいのに、と真昼にけしかけるが、今度は露骨に狼狽している。
小雪には遠慮の勢力が勝っているらしく、途端に縮こまって控えめな姿を見せる真昼に、そこは押せないんだ……と苦い笑みが浮かびかけた。
「そういえば小雪さんには何か贈るのか?」
「え」
「折角なんだし贈れば?」
変な所で勢いを萎ませてしまった真昼の背中を押さなくて、何がパートナーか。
戸惑う真昼に、続ける。
「いや強制はしないんだけど、贈ったら喜ぶと思うぞ?」
小雪の事なので嫌がるなんてまずないし、メッセージを送るだけで十分に喜んでくれるように思える。
小雪としては真昼が親として慕ってくれているとは察しているが、立場的な事を考えてラインを越えないように気持ちを押し殺しているのもうっすら理解しているようだ。
そんな真昼が母の日に何か贈る、とあらば手放しに喜ぶ筈だ。
「……いいのですかね」
「いいんじゃないか? お世話になりましたくらいのテンションでもいいだろ。俺も送っていいのかな、真昼がお世話になりました的な感じで」
真昼にとって、親という存在そのものを特別なものだと認識しているからこその、躊躇い。
それを馬鹿にしたり蔑ろにしたりはしない。
ただ、そっと真昼の背中を押すだけ。
「……いい、のかな」
「なに、そんな抵抗あるなら俺の名前で贈る?」
「周くんが抵抗ないのが驚きなんですけど!」
周が真昼の分も含めてあまりにも軽く捉えているように見えるらしい真昼は、若干やけくそのような声で突っ込みを入れるものだから普段の真昼との差に笑ってしまった。
「感謝の気持ちを示す日なんだから、まあそこはいいだろ? 真昼が気持ち的に無理ーって言うなら、そりゃ俺から送るよ。小雪さんはそれでも喜んでくれるかなって」
あくまで選択は真昼に委ねる、という態度を崩さない周に、真昼は暫く物を言いたそうに口をもごもごとくねらせては一文字に結ぶ、という事を繰り返した後、膝の上で拳を握った。
「……いえ、私も、贈ります。その、急がなきゃ……何を贈りましょう」
意を決したように強い眼差しを周に見せた真昼が頭を回転させ出すのを、周は満足げに眺める。
「……何で笑ってるんですか」
「いーや、なんでも」
視線に気付いたらしい真昼が、じっとりとした責めるには至らないがもの言いたげな視線で打ち返してくるので、周は誤魔化しもせず笑ってひらりと手を振って自分は何を贈ろうかなと悩む事にした。





