表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
29/33

少年・ミノキ エンド


私の頭にはあの少年が浮かんだ。


「――おい……おーい」


誰がが声をかけているみたい。


「アンタ、大丈夫か……?」


名前を何度も呼ばれて、ようやく目が覚めた。

見覚えのある金髪の少年が顔を覗き込んでいる。


「もしかして、縁日で会った?」

「ああ、オレはミノキっていうんだ」


よく見ると彼は、どこか懐かしい雰囲気がある。


「私達ずっと前にどこかで会ったことがあるような気がするような……」


しかし私が村に来たのは数年前と今回だから数年前に会っている確率は低い。


「オレは間違いなく初対面だよ?」


絶対にそうだという確信があるようで、彼は私と会ったのは今年の縁日がはじめてだという。


「そこまで追求する意味はないけど、絶対なんだ?」


ミノキにたずねると、彼はこくりと頷いた。


「ああ、オレは今までずっと外出できなくて、今年ようやくこの家の外に出られたんだ」


彼の口ぶりからして最近引っ越してきたわけではなく以前から村に住んでいたんだろう。

だから病気がちだとかでこの家からでなかった。


「……ていうかミノキくん。ここどこ?」


私が今いるのは和風庭園のあるような豪華な平屋立ての邸宅だ。


「九狐家の離れだよ。村の地主一族の分家が住んでるんだ」


分家が出てくるとはつまりかなり由緒ある家?


「なんかごめんね馴れ馴れしくミノキくんなんてよんじゃって……」


というかよそ者の私なんかが運び込まれていいのだろうか?


「オレはそんな大層なやつじゃないし気にしないでくれよ!」


彼は手をふりながら慌てる私をなだめる。


「とりあえず助けてくれてありがとう」

「ああ、それにしてもなんであんなところに?」


私が事情を説明すると、ミノキは困惑した。


「あの神社か……」

「親戚にも言われたんだけどなにかあるの?」


彼から神社について説明をしてもらう。

最初に出来た神社が黄昏紫神社で女神をまつっていたらしい。


「……で、なんか詳しくは知らないけど女神の後ろには悪い神がついてるとかでさ」


特に問題はなかったようだが、その神社の裏側にあるもう一つの社が原因で村人は寄り付かないという。


「他にも黒い化け狐が出るとかうさんくさい話があって、面倒だから行かないほうがいいってなってるんだよ」


――私はそろそろ帰ったほうがいいと思い部屋を出た。


「もういくのか?」


心配そうに私を気遣うミノキは部屋から出る。

するとさっきまでは何もなかった場の空気が変わった。

女中のような格好をした女性達がこちらを見てヒソヒソと話す。


「……やっぱり私場違いだよね」


気まずくなり早歩きで門まで向かう。


「いや、間違いなくオレのことだと思う。あんまりこの家の人から好かれてないから」


どうやらワケアリのようで、ミノキは腫れ物扱いされているらしい。


「また会えるか?」

「うん、私はしばらくいるから」


さっそく明日に森の近くにあるバス停で会う約束をした。



「なんかいいことでもあったの?」

「うん、まあ……この前縁日で会った友達と再開したから」


父と母は生暖かい眼差しで話を聞いている。全部言わなくてもお見通しらしい。



翌日になり、私はバス停へ向かった。


「……らって……イイ気になってんじゃねーぞ!」

「なんでそんなこと言われなきゃいけないんだよオレは普通にしてるだけだ!」


ミノキは先に来ており、男達が彼に話しかけている。


「前々からオメーが気に食わねーんだよ。周りとは違うってお高くとまって親父殿に取り入ろうとしねえとこもな」

「あんたに直接なにかしたわけじゃないだろ」


粗野な男がミノキの胸ぐらどうやら知り合いらしいが、明らかに仲のいい相手ではない。

助けたいがそのまま私が出ても何もできないだろう。


「キャアアアアアア」


すぐそばの森に隠れて叫び声を上げた。狙いの通り、男達は森へやってくる。


「大丈夫?」


彼らに見つかる前に移動し、枯葉をはらいながらミノキの元へいく。


「やっぱり今のアンタが?」

「うん、静華でいいよ」

「……!ああ、わかった。とにかく助かったよ」


ミノキは名前を言ったとき一瞬驚いたような気がした。


「おい!!」


さっきの男達が苛立ちを露にしてやってきた。いかにも今時の不良のような出で立ちに私は恐怖した。


「そいつお前の女か?」

「けっこーかわいいじゃんお前にはもったいねーよ」


彼らは私をおいていかなければミノキを痛め付ける気だ。


「逃げよう!!」


私はミノキの手をつかんで走る。男達は追ってこずある程度の距離をとれた。

しかし、気をぬいていたら一瞬で追い付かれ、回り込まれた。


「うそ……」


まるで変な力でも使えるみたいにだ。


「悪いな~オレ達はただの人間じゃねえんだわ」

「どうせあんたの記憶もサクッと消すからいいよなー」


彼等が私に手を伸ばしてくるが、それは一瞬で何かに弾かれる。


「……その人は関係ない。オレが気に入らないなら好きに殴れよ」

「なに勘違いしてんだお前なんてどうでもいいっつの」


一人の男がこちらを向き、他はミノキのほうを見ると言葉を失った。


「おい、やべえよ!!」

「なんだよ?」


男が後ろを振りかえると、そこにはミノキだけでなく二人の青年がいた。


「やあ君たち、顔を会わせるのは元旦の宴以来かな?」


爽やかなスーツの男性は彼らに微笑む。


「で、お前達は集団で二人に絡んでいたようだが、本当はなにをしていたんだ」


もう一人のつり目の青年は冷ややかな目で彼等へとう。


「大方、長から目をかけられるミノキが気に入らないからお嬢さんを巻き込みながら虐めたといったところかな」


彼はまるで見ていたかのように的確に分析した。


「……それは」


男等は口をつぐんで目を反らしながら曖昧に語る。


「気にすることはないさ、君達の気持ちがわかるよ。僕も次期長として邪魔でしかたがないんだよ」

「そうなんすか!?」

「ムナシさんがそういうんなら遠慮なくやれるな!!」


男達は一族の関係者で、偉い立場にあるスーツの男性の言葉で水をえた魚のようにミノキに殴りかかろうとする。


「おっと……」


その拳が当たることなくもう一人の青年につかまれ、男等は困惑している。


「あと、そこにいるのは今年の女神役だよ」

「すみませんでしたー!!」


男性が私を見て彼らに言うと、先程の余裕顔がくずれ青ざめて地に伏した。



「とりあえずミノキくんは私との結婚を決められたってことでいいの?」

「あ……嫌なら辞退するよ!」


儀式当日まで好きな相手がいれば変えられるらしい。


「でも……」


私と結婚するからミノキ君は周りの冷遇を抑制できた。

なら断れば彼の立場が悪くなるだろう。


「オレなんかが女神様の夫なんて……不相応だしさ」


――これでは私はミノキ君が好きだから結婚するんじゃなく同情からって事になるだろう。

けれどもし彼でない人が同じ立場なら、私は断ったはずだ。


ミノキ君は優しい人だって、会ったその日から知っている。

だからこそ私はミノキ君と結婚できる。もしかしたら彼が嫌なのかもしれない。


「ミノキ君に好きな相手がいるなら他の人を探すよ」

「他に好きな人なんていないけど……」




「ねー厭紀テレビで見たんだけどさー」

「なんだよ」

「恋って会った瞬間に始まるらしいよ」

「どうせ一過性で終わる恋だろ。一目惚れなんて信用できねーよ」



――結婚するって決めたからには彼について知らないとだ。


「えっと……ミノキ君はどうしてそんなに、オレなんかとかいうの?」


――やはり、本題である一族から嫌われてるの系質問をいきなりするのは無理だ。


「そんなにいってるかな?」


己を卑下している自覚はないようで、私の質問に首を捻りながら驚いている。


「ミノキ君は私のいた地元の男子の数倍美少年だよ!」


とにかく自信をもってもらいたいけど、なんて言えばいいかわからず。

咄嗟に出たのはあまり喜ばれない外面を誉める言葉。

おまけに私のクラスの男子の顔なんて知るわけないのに例えてしまった。

案の定ミノキ君はきょとんとして、目をしばたたかせている。


「なんかわからないけど、静華さんが嫌だと思う不細工じゃないならいっか」


納得しているようなのでいいか。


「あれ、紅葉?」


――今は夏なのに、もう紅葉の葉が満開ついていた。


「あの木は永久に枯れない紅葉なんだって。一年中ずっと咲いてるらしいよ」


ミノキ君の友達と言いそうになったけど、彼は最近外出出来るようになったんだから落ち葉拾いなんてしているはずない。


「じゃあ誰かが焼きいもしたりしてたりする?」


テレビだとよく紅葉の葉で焼きいもするシーンがあるし。


「オレは紅葉より銀杏が好きかな。茶碗蒸しの中にあるやつ」

「初めは豆みたいな食感なのによく味わうと苦いよね」


たしか銀杏は食べ過ぎたらいけないらしい。理由はわからないけど体によくないとかで、なんだっただろう。


「でも栗のほうが美味しいよな」

「栗といえば昔普通の栗をそのまま食べたら甘くなくて不思議だったなあ」


栗ご飯は美味しいけど混ぜたご飯は好きじゃない。

なので栗と米を後から別々にする。

案外普通のご飯より塩気のあるご飯が好きだ。


「オレ栗ご飯の栗はあんまり好きじゃないんだよ。栗はやっぱりケーキに乗るのがいいな……」


このままだとひたすら食べ物議論になる。


「あの、本当に私でいいの?」


ようやく外出して好きな子が出来るかも知れなかったのに、大して縁のない私で彼は不満じゃないだろうか?


「なんでかわからないけど……オレ静華に会った時からここが変なんだ」

「私を見ると具合が悪くなるの?」

「出会う前から運命の女の子だって考えてたみたいな……?」


私は照れ臭くなり、先に進む。紅葉の木に近づくと土が盛り上がっていた。


なにかがうまっているのかも、つい気になって手が汚れないように落ちている枝で掘る。


「なんか古い感じの紙だな」


意外と腐蝕はしておらず。まるで誰かがついさっき埋めたかのように土がついているだけだ。


私はそれを読んでみることにした。



遥か太古、一柱の女神はその地にあった。名を静泉(せいせん)

神は人間よりも美しいが、特に美しい妹、華清(はなぎよ)の影にいた。

ある日のことである。静泉は気まぐれから妖狐をみつける。

妖狐は焔の力をもたずして生まれ、一族から追い出されたのだという。



「あれ、もう終わり?」


神話物語に続きはなく、白紙であった。


「狐といったら九狐家だよね。なにか関係あるのかな」


つい神話本の女神にこの村の女神と関連つけてしまう。


「いた……」


紙で指先を切ってしまった。とっさに彼へ本をたのみ、ハンカチを探す。

舐めるのはバイ菌がはいるのでよくないってテレビで見た。


「大丈夫!?」

「うん」


漫画だと主人公が怪我をしたらヒーローがペロリ、オレは実は吸血鬼なんだというのはよくある。


「あ、秋といえばハロウィンがあるよ。ミノキくんはなんかオレンジが似合いそう。吸血鬼よりくり貫いたパンプキンかな……」

「あーなんで日本にはお菓子祭り、もとい収穫祭ないんだろ」


収穫祭と言われても家は農家じゃないからピンとこない。


――こんなTHE和風な場所でハロウィンの話をしたらバチ当たっちゃうかも。


「それで私達なんで今日集まったんだっけ?」

「あー……えっと……デートがしたかっただけだよ」


ミノキ君は照れながら話している。


「そっか……」



「いよいよ明後日は儀式だね」

「うん」


「キャアアア」


――どこからか悲鳴が聞こえた。


「なにかあったのかな!?」

「あ、待って」


私は声が聞こえたほうに走る。そこには血のついた包丁を持った黒髪の女がいて、目があった。


「みーつけた」

「きゃああああ!!」



気絶した私は九狐家の部屋で目覚めた。


「ほらミノキ、女性の寝顔を見るものじゃありません!」

「えー」


話し声がして、ようやく意識を取り戻す。


「し……死ぬかと思った」

「お目覚めですか?」


心配そうに私を見るさっきの黒髪さんに事情を聞くと、このあたりで魚の内蔵を捌いていたら苦手な虫に遭遇して悲鳴を上げただけらしい。

そして彼女は私を探していて、だから見付けたと言った。


「なんて嫌な偶然……」

「ごめんなさい」

「いえ別に……私のことはともかく、貴女はミノキくんとは昔からの仲なんですか?」


なんか二人とも気のおけない間柄というかフランクというか。


「誤解をなさらないでください……私の名は九狐ミノカです」

「……もしかしてお姉さん?」

「妹です。双子ですが」


なんか叱り方が姉っぽかったので驚いた。


「お話いいですか、静華さんは私の姉君になる方ですから」

「え、うん」

「じゃ、ミノキはでてってください。女同士の内緒話をするので」

「わ、わかったよ」


「なぜ身構えているんですか?」

「あの、私じゃリエンの妻は勤まらんからさっさと都会に帰れとか言わない?」

「リエン?ここ歌舞伎役者とかいませんよ」

「なんか、ごめんなさい。話ってなんだったかな?」


「兄のことですが、聞いてませんよね」

「なにを?」


ミノカちゃんはやっぱり、と言いたそうにしている。


「お気づきかもしれませんが兄は大体の親戚に嫌われてます」

「あーなんとなく察してたけど、いい子だし嫌われる理由がわからないよ」


私がそう問いかけると、兄を褒められて嬉しいのか少し笑った。


「兄はあの通りなので実は腹黒とかはないです。問題は性格ではなくて呪いというか……」

「呪い?」


ミノキ君に祟られてる感はないけど。


「数十年前、九狐の本家には双子の兄弟が生まれ弟のほうは呪いが強いため幽閉されていました。その幼子をこっそり何者かが連れだし放置、迷子になっていたのを当時兄と私を身籠っていた母が助け起こすと呪いの一部が流れてしまったそうで、兄は長期的に幽閉されていました」


「正直、呪いって言われても霊媒師のインチキ感がするんだけど……」

「にわかには信じがたいですが、母は幼子の顔は狐のようだったと、以来ずっと伏せっています」


つまりミノキくんはなにも悪くないのにオカルトが怖くて皆が避けているということなんだろう。


「お願いです。貴女だけは兄を見捨てないでください!」

「あ、頭をあげて……見捨てたりしないから」



儀式当日は衣装に着替え目を瞑り、息災を祈りながら言葉を聞き、儀式は滞りなく済む。


「なんか結婚の約束って感じはしませんけど」

「まあ結婚式は別途で自由にやれって話だし」


――ミノキくんは村から出られないのだろうか?


「ってまだ結婚できる年じゃなかったね」

「つっ次に村へくるときには美少年からイケメンにジョブチェンジしてる!って」



夏休みが終わり、学校に登校した。


「さて二人とも。夏休みの間、アバンチュールはどうだった?」


友達の一人、八多喜さんが恋ばなを持ちかけてきた。


「とくになにもないよ?」

「さては静華ちゃん彼氏できたしょ!?」


ポーカフェイスをきめたのに友達の一人、平屋さんにバレた。


「で、どんな男子?」

「明るいのにどこか孤独そうな年下美少年」


私はミノキくんの写真を見せた。


「最近はすぐイケメンとかいうよね。どうせ大したことな……」

「イケメンじゃん!なんか雨瓦くんと系統似てる~」


雨瓦くんは病弱であまり登校できていない。


「あ、そういえば園崎さんってこの前倒れた雨瓦くんに付き添ってたらしいよ!」

「マジで!!付き合ってるんじゃない!?」


――なんかドっとつかれた。今日は早く帰ろう。


「うーん……」


なんだか喉がイガイガして、熱っぽさがある。


「静華さん」

「風邪の幻覚?」


―――私は今年三度も意識を手放した。


【二度あることは三度あり】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ