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恋人に浮気されて意気消沈した俺はお隣に住むデカすぎる美人三姉妹に死ぬほど溺愛される  作者: かくろう
後日談 凪沙更生編

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第92話 心持ちの問題

「私は、あなたの弟、朝倉瑛斗と交際していました」


落ち着きを取り戻し、部屋の中には私、瑛一郎さん、そして胡桃ちゃんが残された。


「驚きました。本当に世間は狭いですね」


「ええ、本当にそうです。私は、あなたや皆さんが思っているような綺麗な女じゃありません。瑛斗と同じか、それ以上に醜悪な女です」


私は過去の全てを告白する事にした。


自分の過去を曝け出すことが正解かどうかは、分からない。


でも、瑛一郎さんが瑛斗のお兄さんだったことが分かった以上、黙っていることはできなかった。






そして、過去に行なった悪行の全て……。


悠真とのこと。

生い立ち、家族のこと、前の生活でどれだけの人に迷惑をかけてきたか。


打ちのめされ、全てを失って、ようやく気がついた大切なもの。


自分を変えたくて、この町に逃げてきた。


今でも未練と後悔を引きずって、だけどこの町の人達に救われた。


包み隠さず、全てを話した。



「今回の事で思い知りました。私は、まだまだ過去を拭えてなんかいない。たった3ヶ月で洗い流すには、自分のやってきた事は汚すぎたんです」


「……」

「……」


二人は絶句していた。

想像以上だったみたいだ。


「そうだったんですね。正直、想像もしていませんでした。ボクが知っている凪沙さんからは真逆で……」


「はい。それが私の本性なんです。あなたが見てきた凪沙は、ほんの数ヶ月で作り上げた偽物です」


「それは違います!」


「え」


「偽物なんて言わないでください。それはあなたが変わろうとした結果じゃないですか!」


「瑛一郎さん…」


それに胡桃ちゃんが追随する。


「そうですよ! 確かに過去は変えられません。だけど、今から変わる事はできるじゃないですか。それをあなたは成し遂げたんです! その3ヶ月の努力を、自分で否定しないでください!」


「胡桃ちゃん……ありがとう」



「それじゃ浮子さん、副店長さんに言わなきゃいけないことがありますよね」



「え、こ、ここで?」


「ここで言わないでいつ言うんですか」


「わ、分かった。分かったから、あんまり急かさないで。流されてるみたいになっちゃうから」


「あ、すみません。胡桃、慌てちゃって」


私は自分の気持ちをちゃんと伝えようと思った。


だけどそれを瑛一郎さんが止める。


「いえ、今日は一度落ち着きましょう。大変なことがあったばかりなんです。心の整理が必要だと思います。胡桃さん、でしたよね」


「は、はい。桃峰胡桃です。胡桃と呼んでください」


「ありがとうございます。では胡桃さん、凪沙さんのことをお願いします。ボクは警察にいって瑛斗の様子を見てきます」

「あ、それなら悠真ちゃんが知らせて……あ、弟さんですもんね」


「はい、兄として、弟のしたことの責任は取らないといけません。まあ、逃げ出した身で言うことではありませんが……親に連絡もいくでしょうから、いずれバレます。ボクは、逃げ出した実家との関係に決着を付けないといけません」


「そうですか」


「はい。今は胡桃さんに凪沙さんのケアをお願いしたいのです」


「分かりました! 胡桃にドーンとお任せください!」


そうして、瑛一郎さんは部屋を出て行った。


「ああいう所、悠真ちゃんに似てますね」

「え?」


「浮子さんが言ってた、悠真ちゃんに似てるって話し、胡桃、よく分かります。自分じゃなくて、相応しい人に任せるって考え方」


「そう、かもね」


「胡桃的にはガバッと抱きしめて情熱的に慰めるでもいいと思いますけど」

「そ、それは私の心臓が持たないから」


今更こんな処女みたいなことで心臓が熱くなるなんて想像していなかった。


心を落ち着けて、瑛一郎さんに想いを伝えよう。



◇◇◇



【朝倉瑛斗 視点】


くそっ、くそっくそっくそっ!

なんで俺がこんな目に遭わなきゃならねぇんだ。


俺は何も悪くねぇ。自分の正しさを証明するために時間を稼いでただけだ。


「おい、暴れるな。署に着くまで大人しくしてろ」


うるせぇな。誰が警察署なんて行くもんかよ。


チャンスを伺え……。まだ逃げられる。


俺はそれ以上暴れるのをやめ、息を潜めてチャンスを待つ。


「さあ、着いたぞ。こっちへ来るんだ」


手錠は外せねぇ。だが逃げるチャンスは……ある。


パトカーから連れ出されて警官に囲まれる。


だが、俺を囲むのは二人だけ。


「どけっ!」

「あっ、こらっ」


俺は警官にタックルを噛まして全速力で走り出した。



手錠をされてバランスが取りづらいが、そんなことは言っていられない。


俺はこんなところで終わる訳にはいかねぇんだよ!!


「おい、待て! 被疑者逃亡! 追え!」


うるせぇうるせぇうるせぇ! 田舎警察ごときに捕まってたまるかよ!


俺は走った。少しでも遠くに離れるんだ。


知らない土地だからどっちに向かっているのかもわかんねぇけど、とにかくここから離れないと!


「あ?」


そう思った瞬間、衝撃の後に身体が浮遊感に襲われた。



世界がゆっくりと動いていた。時間がスローモーションのように緩慢になり……。


(は? え? は?)


どうやら縁石に躓いたらしい。


俺の身体は空中に放り出され、手足をバタバタさせようとして上手く動かない。


徐々に地面が迫ってくる。


(あ? ちょ、ちょっと待ってっ)


迫ってくるのは地面じゃなかった。


鉄製のポール。飛び出し防止のチェーンがついた小さなポールがせり出している。


(待てっ! 待ってくれっ! おい! おい! おい!!)


身体の自由が利かない。身をよじってもポールの直線上から逸らすことができなかった。


迫ってくる……迫ってくる……迫ってくる!


1秒が、10年にも感じた。


視界が鉄のポールの丸い部分で覆われ始めて――







――メギャッ




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