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恋人に浮気されて意気消沈した俺はお隣に住むデカすぎる美人三姉妹に死ぬほど溺愛される  作者: かくろう
後日談 凪沙更生編

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第85話 突然の再会

【凪沙 視点】


次の日。


副店長とのお出かけを約束した私は、心がフワフワした気持ちに包まれている事に気がついていなかった。


「あ……。そういえば私……」


週末に向けて彼にどんなお礼をしようか思案していると、自分がロクに服を持っていない事を思い出す。


持っているのは仕事に必要なシャツやジーンズが数着のみ。

スカートなんか一着もない。


お化粧品も最低限しかなく、身だしなみを整えるにはあまりにも心許ない持ち物だ。


家を出る時に、過去の自分を捨て去る為に贅沢な服は全てお金に換えて処分した。


「どうしよう……流石に失礼だよね」


いくらただ食事に行くだけとは言っても、野暮ったいTシャツとジーンズで出向いたのではあまりにも失礼だ。


せめてスカートかワンピースの一着もあれば……。


「って、違う……。気を持たせちゃいけないのにお洒落してどうするんだ……」


彼のことは悪いように思っていない自分がいる。

だけど、私の罪滅ぼしはまだまだ終わらない。


そんな今、男性とのデートに浮かれている自分の頬を叩いた。


(だからといって芋臭い格好をして幻滅されたくはない)


「ああああああっ! どうすればいいのよ!」


そんな思考が捨てられなかった。


机に頭を打ち付けても直ぐに思考が元に戻ってしまう。私はどうしてしまったんだろう。


――ピンポーン


「え?」


グチャグチャの思考に鞭を叩き付けるような気持ちで悶えていると、不意にインターホンが鳴る。


「は、はーい」


気持ちが空中に放り出されたような気分になり、慌てて思考を引き戻した。


丸いのぞき窓に目を凝らすと、レンズの下側にピンク色の髪の毛をツインテールに結んだ女の子が立っていた。


「え、ま、まさか」


私は慌てて扉を開く。そこには、会いたくてたまらなかった女の子が立っていた。


「浮子さん!」

「く、胡桃ちゃん!?」


胸元にギュッとしがみ付いてきた小さな女の子は、満面の笑顔で私のことを見つめていた。


◇◇◇


時は少し遡り――


【悠真 視点】


8月。

俺達は夏休みの前半を宿題の片付けに専念し、提出する課題を全て終わらせて休みを満喫する準備を行なっていた。


俺、葵の二人は数日で全て終わらせることができたが、澪、雛、胡桃ちゃんの三人がそれぞれの不得意分野の宿題に苦戦して時間が掛かってしまった。


日替わり恋人制度を使って毎日違う女の子と2人きりで過ごし、夏休みの思い出作りは順調に重なっていた。


そして8月初旬。俺達はいよいよ田舎の避暑地にバカンスに出かける事になる。


ここに決めた理由は、大半が凪沙に会いたがっている胡桃ちゃんの要望を取り入れた事にある。


俺は彼女に会うわけにはいかないが、胡桃ちゃんにとって凪沙は命の恩人と言っても良い人物だ。


正直なところ……少しだけ、嬉しい。


確かに凪沙は俺に一生ものの傷を負わせた女だ。


だけど俺は三姉妹に救われたし、既に過去の事として受け入れつつある。



あいつが過去を悔いて今をまともに生きようとしているのなら、俺はそれを少しだけ嬉しく思うのだ。


だってかつては愛した女だ。本気で幸せにしたかった。


俺との付き合いの全てが偽物だったといっても、過去の俺の気持ちは本心だった。


そしてあの件がきっかけで、俺は弱い自分を克服しようと思ったのも事実だ。


初めての彼女だったし、好きな人を守れるようになりたかったと決意もした。


結果として俺は空回りし、凪沙の本性を見抜けず破局してしまったが、そのおかげで今の俺がある。


彼女が過去を悔いて更生しようとしているのなら、俺は心の片隅でそれを応援したいと思うのだ。


「胡桃ちゃん、準備できたかい?」

「うん!」


「みんなもいいか?」


「「「はーい♪」」」


三姉妹の元気な声に思わず笑いが漏れる。


使用人の人達が運転する車に乗り込み、俺達は凪沙の住む町にある遠方の別荘へと出発するのだった。




◇◇◇


【胡桃 視点】


悠真ちゃんと共に別荘へと出発した私達は、送迎のロールスロイスの中で談話をしながら時間を過ごしていた。


私はあくまでメイドなので、一緒になってはしゃぐことはせずに三姉妹のお茶のお替わりを注いだりしながら脇に控えて、補助席を作って座っていた。


巨大なロールスロイスは半ばキャンピングカーのように広々とした空間で、194㎝の三姉妹三人が足を伸ばしても十分にくつろげるようなトンデモスペックの車だった。


運転しているのは白峰家のお抱えメイドさんで、私に仕事を教えてくれる先輩さんだった。


ここ1ヶ月で分かってきたのは、やっぱり悠真ちゃんの高見沢家も、三姉妹の白峰家も、桃峰の家とは比べものにならない上流階級だったってこと。


虚勢を張っていた父は、豪華な装飾や芸術品なんかを集めて周囲に自慢していたが、本当の一流はそんな事をひけらかしたりしないんだ。


だけどこうやって豪勢にするところにはトコトンまでお金を使う。


この大きな車も、つい先日まで白峰の家にはなかったものだ。


「胡桃ちゃん、休憩時間だから一緒にお喋りしよーよ」

「あ、う、うん。分かった。直ぐ行くね」


雛ちゃんから呼ばれ、私は先輩メイドさんに許可を取ってメイドプリムを外して四人の元にいく。


これを身につけている間は、雇い主とメイドという関係を崩してはいけない。


悠真ちゃんや雛ちゃん相手だとあまり言われないから、つい忘れがちになるけど、私はあくまで白峰家に仕えている雇われの身だ。


葵ちゃんは特に厳しい。


将来は悠真ちゃんの妻になって両家の経営を支える予定だというから、分別はハッキリした厳しさを持っていた。


「お待たせしました。って、みんな何やってるの!?」


プリムを外して後部車両に移動すると、悠真ちゃんが三姉妹に押し潰されながらポッキーゲームに興じている。


端的に言うと悠真ちゃんとのキス合戦が行なわれているのだ。


「ズルいよー。胡桃も参加する!」


そんな時間を過ごしながら数時間の道のりを進んでいく私達。


車はやがて浮子さんの住んでいる町へと近づいていった。







「胡桃ちゃん、これからの予定なんだけどさ」

「うん」


全身キスマークだらけになった悠真ちゃんが衣服の乱れを直しながらこれからのことを話し始める。


真面目な顔でキスマークだらけなのがシュールでちょっと可愛いと思ってしまった。(私も参加した)


「もともと数日間は向こうで過ごす予定だけど、胡桃ちゃんはどうする? ずっとなぎ……浮子さんのところにいてもいいよ」


「え、あ……で、でも……別荘はお仕事もあるし……」


もう一度いうが私は雇われの身だ。

半分は一緒の夏休みを過ごすためだが、もう半分はメイドとして四人の身の回りのお世話をしなければならない。


「それは大丈夫。葵に許可も取ってあるし……それに、はいこれ」


「こ、これって?」

「胡桃ちゃんの今月分の給料だよ」


手渡された封筒には、明らかにそれ以上のお金がズッシリと入っていた。


少なくとも20万くらいはある。それに給料は振込制だ。


どう考えても悠真ちゃんの気遣いだった。


「遊びに行くんだし、色々と物入りだろ。彼女はかなり働き詰めの生活をしているらしい。これで息抜きに連れてってあげなよ」


言葉にはしないが、悠真ちゃんは浮子さんと顔見知りの仲であることが分かる。


私はそれについて深くは聞かなかった。


きっと知っても仕方ないことだし、知らない方が良いことなのだろうと、直感的に思ったからだ。


「うん。ありがとう悠真ちゃん。有り難く使わせてもらうね。浮子さんのところに行かせてください」


「ああ。楽しんでおいで。別荘はさほど離れていないから、何かあったら直ぐに駆けつけるからね」

「うん、ありがとう、悠真ちゃん大好き♡」


そうして浮子さんのアパート前で降ろされた私は、そのまま彼女の部屋のインターホンを押すのだった。


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