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恋人に浮気されて意気消沈した俺はお隣に住むデカすぎる美人三姉妹に死ぬほど溺愛される  作者: かくろう
第3部

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第68話 辿り着いた町

【胡桃視点】


後部座席の中央に、黒峰蓮太郎がだらしなく腰を沈めていた。

腹の肉がシャツのボタンの間からはみ出し、グラスを傾ける手が脂ぎっている。


私はドアに体を押しつけ、必死に距離を取ろうとした。



蓮太郎は下品な笑いを浮かべ、グラスを一口煽った。

酒の滴が顎を伝い、シャツの襟を汚す。


「会いたかったぜ。お前が胡桃だな。中々可愛いじゃねぇか。ちょっと体がガキっぽすぎるけどな」


私は声を震わせながら、精一杯の敬語で答えた。


「……失礼ですが、突然お連れになるのは困ります。

私は今、学校の帰りですので……」


蓮太郎は鼻で笑い、グラスをテーブルに置いた。


「学校ねぇ。 そんなもん、どうでもいいだろ。

お前のお父さんがちゃんと了承してるんだ。

顔合わせを拒否し続けるから、こうして迎えに来てやったんだよ」


彼は体を少しだけ起こし、濁った目で私を上から下まで舐め回すように見た。


「桃峰の親父も苦労してるみたいだな。

会社がヤバいって聞いてるぜ。

お前が素直に俺のところに来れば、全部丸く収まるんだが……」


私は膝の上で手を強く握りしめ、声を絞り出した。


「……私は、そのような話は聞いておりません。

お父様にも、きちんとお話ししたいと思いますので……今は、お帰りいただけますか」


蓮太郎の笑いが、急に冷たくなった。


「クカカカ……お前、まだ分かってねえのか?」


気持ち悪い笑い方をした彼はグラスを乱暴に置き、太い指で私の肩を掴もうと手を伸ばした。


「俺は待つのも飽きた。その後、どうなるかは……お前次第だな」


私は体を後ろに引いて、必死に抵抗した。


「やめてください……!

私は、そんなつもりはありません……!」


車内は狭く、逃げ場などなかった。


蓮太郎は低い声で笑いながら、ゆっくりと体を寄せてきた。


「桃峰の家を潰されたくなかったら、大人しくしろよ。

お前が俺の言うことを聞けば、親父の会社も助けてやれるかもしれないぜ?」


私は唇を強く噛み、震える声で繰り返した。


「……お願いです。

今は、帰らせてください……」


黒峰蓮太郎の濁った視線が、私の顔に絡みつくように動かなかった。


車はスピードを上げ、街の灯りを後ろに置き去りにしていく。


(悠真ちゃん……)


私はただ、膝を抱えるように体を縮めながら、

心の中で何度も悠真ちゃんの名前を呼んでいた。



車内は酒の臭いが濃く、息をするのも苦しかった。


黒峰蓮太郎はグラスを傾けながら、だらしなく笑っていた。

彼の視線が、私の体をゆっくりと這うように動く。


「ふふ……お前、意外と細いな。

ガキっぽい体してるけど、顔は悪くない。

親父の会社を守りたいなら、少しは俺にサービスしてもいいんじゃないか?」


ぞわっと嫌な寒気が背筋を凍らせた。本能的な嫌悪感が血管を収縮させる。


私はドアに体を強く押しつけ、声を震わせながら言った。


「……やめてください。

私は、そんなつもりはありません……」


蓮太郎は低く笑い、グラスを置いた。


「お前みたいなのが、俺の前で偉そうにできると思ってんのか?

桃峰の親父はもう、俺の言うことを聞くしかないんだぞ。

お前も、素直になれば楽になるっての」


彼の声が、徐々に熱を帯びてきた。

スカートの端にネットリとした視線が絡みつくのを感じて、ハッと下を見ると、下着が見えてしまっていた。


慌てて直しても好色的な視線はやむことは無い。


「そうだ……ここで初体験も面白そうだな。

狭い車の中で、泣きながら俺を受け入れるお前……想像しただけで興奮するぜ」


蓮太郎が突然、体を乗り出してきた。


私は悲鳴を上げて体をよじった。


「いやっ……! やめて……!」


彼の太い手が私の肩を掴み、強引に引き寄せようとする。

酒の臭いと体温が、すぐ近くまで迫ってきた。


「いやっ、いやぁああっ! 離して……! 助けて……!」


私は力の限り叫び、両手で彼の胸を押し返し、全身で抵抗する。


「うるせえよ、黙れ!」


蓮太郎が苛立ってさらに力を込めてきた瞬間、私は思い切り体を捻った。


「いやあああっ!!」

「ぐっ」


私の肘が彼の顎に当たり、蓮太郎が一瞬、よろめいた。


その隙に、私はドアのロックを探り当て、必死に解除した。


ドアが開いた瞬間、私は停車していた車外に身を投げ出した。


アスファルトに転がり落ちたが、新体操で鍛えた体のおかげで、大きな怪我はせずに済んだ。


「待てっ!」


後ろで蓮太郎の怒声が響いたが、私はすぐに立ち上がり、全力で走り出した。


息が切れるのも構わず、駅に向かって走る。


「はあ……はあ……!」


駅の改札を駆け抜け、ちょうど来た電車に飛び乗った。


ドアが閉まる瞬間、私は座席に崩れ落ちた。


体が震え、涙が止まらなかった。


◇◇◇


電車はどこに向かっているのか、私には分からなかった。


ただ、できるだけ遠くへ、黒峰の人間から離れたいという思いだけが頭を支配していた。


(スマホ……置いてきちゃった)


私は終点近くまで乗り、降りる駅も確認せずに飛び降りた。

駅の看板を見ても、初めて見る地名ばかりだった。


息を整える間もなく、次の路線に乗り換える。

また終点近くまで乗り、違う路線に飛び乗る。


終電が近づく時間になっても、私は電車を乗り継ぎ続けた。


やがて、辺りが静かで、街灯の少ない町に辿り着いた。


「ここ、どこ?」


冷たい風が頰を刺し、薄着の制服ではすぐに体が震え始めた。


私は駅のベンチに腰を下ろし、膝を抱えて小さくなった。


息がまだ荒く、心臓の音が耳の中で鳴り続けている。


何時間も電車に乗っていたのに、心は全く落ち着いてくれなかった。


周囲はほとんど人気がなく、遠くの自動販売機の明かりだけがぼんやりと浮かんでいる。


「どうしたの? 大丈夫?」


突然、優しい声がかけられた。


私はびくりと体を震わせて顔を上げた。


そこに立っていたのは、黒髪の女性だった。

私より少し背が高く、清楚な雰囲気のある人。

柔らかい表情を浮かべているのに、どこか悲壮感が漂っていて、目元が少し疲れているように見えた。


彼女は心配そうに私を覗き込み、もう一度静かに聞いた。


「大丈夫? 気分でも悪いの?」


その声はとても優しかった。

でも、優しすぎて、逆に胸が締め付けられるような気がした。


私は言葉が出てこず、ただ小さく首を振ることしかできなかった。


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