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恋人に浮気されて意気消沈した俺はお隣に住むデカすぎる美人三姉妹に死ぬほど溺愛される  作者: かくろう
第3部

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第63話 胡桃の記憶と、たった一つの支え

【胡桃視点】


アメリカに引っ越したのは、私がまだ6歳の頃だった。


空港で手を振る悠真ちゃんの姿が、最後に見た日本の風景だった。

小さくて温かい手が、ずっと離したくなかったのに、お父さんに引かれて飛行機に乗せられた。


新しい国、新しい家、新しい学校。

すべてが大きすぎて、怖かった。


英才教育が始まったのは、引っ越してすぐのことだった。

朝から晩まで、家庭教師が来て、英語、数学、音楽、礼儀作法……

休む暇もなくスケジュールが詰まっていた。


「お友達を作る時間なんてないのよ、胡桃」

お母さんはいつもそう言った。


実際、友達はほとんどできなかった。

言葉が通じない子も多かったし、通じても「変わってる」と言われることが多かった。

小さくて、ピンクの髪で、いつも大人しい女の子。

現地の子供たちには、ただの「変わり者」に見えたらしい。


夜、ベッドに入ると、いつも同じことを思い出していた。


日本の公園で、悠真ちゃんが私の手を握ってくれたこと。

転んで泣いている私を慰めてくれた。


三姉妹ちゃんと一緒に泥だんごを作って、みんなで大笑いしたこと。


あの頃の温かさが、唯一の心の支えだった。


時間が経つにつれて、その思い出はどんどん美しくなっていった。

悠真ちゃんの笑顔はもっと優しく、声はもっと温かく、手の感触はもっと柔らかく感じるようになった。

勉強で疲れて泣きそうになると、頭の中で悠真ちゃんが「頑張れ、胡桃ちゃん」と励ましてくれる気がした。


どうしようもなく、好きになっていた。


大好きだった新体操だけは、なんとか続けさせてもらえた。

それだけが、私の心の均衡を保つ唯一の手段だった。


リボンを結んで、音楽に合わせて体を動かすたび、

日本の練習場で悠真ちゃんが「すごいね!」と目を輝かせてくれていたのを思い出した。

あの拍手が、私の原動力だった。


13年が経った今でも、その気持ちは消えていない。

むしろ、ますます大きくなっていた。


……でも。


今日、白峰家で悠真ちゃんに本当のことを話した瞬間、胸が痛くなった。


私はただ好きだから近づいたわけじゃない。

黒峰との結婚から逃げたいという、打算的な気持ちも確かにあった。


それが、悠真ちゃんに申し訳なくて、たまらなかった。


「胡桃……本当に、ずるいよね……」


部屋のベッドに座り、膝を抱えて小さく呟いた。


悠真ちゃんは優しかった。

葵ちゃんも、澪ちゃんも、雛ちゃんも、警戒しながらも、私を追い出したりはしなかった。



「もし悠真ちゃんが……私の気持ちを受け入れてくれたら」

そんな考えが頭をよぎるたび、胸が苦しくなる。


「違う……そんな風に思っちゃダメだよ」


胡桃は小さく首を振った。


悠真ちゃんは優しい。

三姉妹ちゃんも、ちゃんと私の話を聞いてくれた。

でも、それは「助けたい」と思ってくれているだけで、

「好きになってくれる」保証なんてどこにもない。


それに、三姉妹ちゃんの視線……

あの警戒と、悠真ちゃんを守りたいという強い想い。

あれを見ただけで、私が割り込む隙なんてほとんどないことが分かってしまった。


「私……本当に、悠真ちゃんの気持ちを変えられるのかな……」


布団の中で体を丸め、胡桃は目を閉じた。


13年間、ずっと夢見てきた再会。

でも、現実は想像以上に複雑で、冷たかった。


好きだという気持ちは、ますます強くなっていく。

それと同時に、「もしかしたら、受け入れてもらえないかもしれない」という不安も、

じわじわと胸の奥に広がっていく。


「……それでも」


胡桃は小さく、けれど確かに呟いた。


「諦めたくない。

悠真ちゃんに、ちゃんと気持ちを伝えたい。

たとえ……最終的に、断られても」


部屋の明かりを消した後も、

胡桃はなかなか眠れなかった。


まだ、始まったばかりだった。


◇◇◇


朝の白峰家は、今日も大騒ぎだった。


「悠真くん! 起きて起きてー! 朝ごはんできたよー!」


雛の元気な声が廊下に響き渡り、次の瞬間、部屋のドアが勢いよく開いた。


「わーっ!」


雛がベッドに飛び乗ってきて、俺の胸の上にどすんと体重を預けてくる。

194cmのムチムチボディが完全に俺を押し潰す形になり、肺から空気が一気に抜けた。


「ぐえっ……! お、おはよう、雛……」


「えへへ、おはよー! 悠真、今日も可愛いねー!」


雛は俺の顔を両手で挟んで、鼻と鼻がくっつきそうな距離でニコニコしている。

その拍子に、大きくて柔らかいおっぱいが俺の胸板にむぎゅうっと潰れて、朝から心臓に悪いことこの上ない。


そこへ、ゆったりした足音が近づいてきた。


「ふふ、雛ちゃん、朝から元気ね。悠真くんが潰れちゃうわよ?」


葵がトレイを持って部屋に入ってくる。

蜂蜜色のゆるふわロングヘアを優しく揺らしながら、いつもの癒やしオーラ全開で微笑んでいる。

ただし、そのトレイの上には山盛りのトーストとスクランブルエッグ、そして……なぜかメイド服姿の葵本人が立っている。


「葵……その格好、どうしたんだ?」


「今日は『お嫁さん修業』デーだからね。

悠真くんを朝から晩までお世話するつもりよ……ふふっ」


葵が少し腰を曲げてトレイを置いた瞬間、胸元のフリルが大きく揺れて、目のやり場に困る。


すると、部屋の隅から静かな足音が聞こえた。


「……ゆーま、起きた」


澪が無表情のまま近づいてきて、俺の左側にすとんと腰を下ろす。

漆黒のストレートヘアがシーツに広がり、クールな横顔が朝の光に照らされている。

ただし、彼女もなぜかメイド服を着ていて、しかもスカートの丈が異様に短い。


「澪……お前まで……」


「ん。葵が『今日はみんなでメイドさん』って言ったから」


三人が三人ともメイド服姿で俺のベッドを取り囲んでいる。

しかも全員、胸が強調されすぎていて、朝から視界が危険地帯だらけだ。


「ちょっと待て! みんな、なんでこんなに……はっちゃけてるんだ!?」


俺が慌てて上半身を起こそうとすると、雛がさらに体重をかけてきて、俺をベッドに押し倒した。


「えへへー! 今日は悠真を朝から晩まで甘やかす日だもん!

ほらほら、悠真、口あーんして! 特製スクランブルエッグだよー!」


「ちょ、ちょっと待てって! 自分で食べられるから!」


「だめー! 今日はご主人様なんだから、雛たちが全部やってあげる!」


葵がくすくす笑いながらフォークに卵を刺して俺の口元に近づけてくる。


「悠真くん、今日は私たちのこと、好きに命令していいわよ?

……ね?」


澪は無言で俺の左手を自分の太ももに乗せ、じっと見つめてくる。


「……ゆーま、触っていい」


「触るな! いや、触りたいけど触るな! 朝から何やってんだお前ら!」


俺が真っ赤になって抵抗していると、三人が同時に笑い出した。


「「「ふふふっ♪」」」


雛が俺の胸に顔を埋めながら、嬉しそうに体をくねらせる。


「悠真、顔真っ赤だよー! 可愛い!」


葵が優しく俺の髪を撫でながら、耳元で囁く。


「悠真くんが困ってる顔も、すごく好き……」


澪は短く、でも熱を込めて言った。


「……ゆーま、かわいい」


俺は完全に包囲され、逃げ場を失っていた。


この朝も、白峰家はいつものように、

賑やかで、はっちゃけていて、甘くて、ちょっと危険な空気に満ちていた。

※後書き※

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