第58話 突然のキスと三姉妹の決意
「えへへ、悠真ちゃん、胡桃の事、お嫁さんにして♡」
胡桃は俺から離れても、満面の笑顔で両手を頰に当て、嬉しそうに体をくねらせている。
俺は唇に残る柔らかい感触に、まだ頭がぼーっとしていた。
「な、何をするんだ胡桃ちゃんっ!?」
声が思わず大きくなった。
胡桃は悪戯っぽく笑いながら、俺の胸に指を軽く当ててきた。
「えへへ、だって胡桃、悠真ちゃんのお嫁さんになりたいんだもん!
13年待ったんだよ? 我慢できないよぉ♡」
その言葉を聞いた瞬間、三姉妹の空気が一気に変わった。
葵の優しい笑顔が、瞬時に引きつった。
「胡桃ちゃん……ちょっと、待って。
悠真くんは私達の……」
声が普段の柔らかさを失い、鋭く響く。
澪の無表情が一瞬で崩れ、漆黒の瞳に明らかな苛立ちが浮かんだ。
「……完全に、アウト」
低い声が、抑えきれない怒りを帯びて部屋に落ちる。
雛は俺の右腕をぎゅっと抱きしめたまま、体を思い切り前に乗り出し、
大きな瞳に涙をにじませながら叫んだ。
「ズルいよ胡桃ちゃん! 悠真はもう、雛たちの悠真なのにーっ!
いきなりキスなんて、絶対許さない!」
三姉妹の視線が、胡桃に一斉に集中した。
葵が俺の左手を強く握りしめ、普段の包容力ある態度とは裏腹に、
声にわずかな震えを帯びて言った。
「胡桃ちゃん……悠真くんは、私達とちゃんと約束したのよ」
澪が無言で一歩前に出て、胡桃の小さな体を睨みつける。
「……ゆーま、取らないで」
雛が俺の胸に顔を埋めながら、悔しそうに声を震わせた。
「胡桃ちゃんが帰ってきたのは嬉しいけど……
悠真を突然奪おうとするのは、ずるいよ……雛、悲しい……」
胡桃は三姉妹の反応を見て、くすくすと笑った。
「えへへ、ごめんね。
でも胡桃、悠真ちゃんのこと、本気で好きなんだもん。
13年間、ずっと待ってたんだよ?」
俺は三姉妹の間に挟まれながら、頭を抱えた。
「みんな、ちょっと落ち着け……
胡桃ちゃんも、突然キスとか……心臓に悪いぞ」
部屋の空気は、甘い日常から一転して、
微妙な緊張と嫉妬の混じったものに変わっていた。
三姉妹の視線が胡桃に注がれ、
胡桃は悪戯っぽく笑いながらも、俺から目を離さない。
13年ぶりの再会は、予想以上に波乱の予感を孕んでいた。
◇◇◇
胡桃ちゃんは嵐のように去って行った。
俺は自分のベッドに横になって、今日の出来事をぼんやりと思い出していた。
まさか胡桃ちゃんが「俺のお嫁さんになる」と言い出すとは思わなかった。
不意打ちで唇を奪われた瞬間、頭の中が真っ白になった。
柔らかくて甘い感触が、まだ唇に残っている気がして、指で何度も拭ってしまう。
あの後、地獄の無言タイムを味わうことになった。
三姉妹の機嫌が、ワーストカーニバルどころか、完全なる地獄絵図と化していたからだ。
葵の笑顔は優しいままだったが、瞳の奥に燃えるような嫉妬と独占欲がぎらぎらと輝いていた。(お玉が握り潰されて5㎝の球体に丸められていた)
澪は無言で俺の左腕を強く握りしめ、指先が震えるほど力を込めていた。
雛は俺の右腕を抱きしめながら、明るい笑顔の裏で強い不安と悔しさを全身で表現していた。
説明も何も俺が聞きたいくらいだけどな。
俺はベッドに横たわり、天井を見つめながら深いため息をついた。
(本当に……どうしよう……)
その時、部屋のドアが静かにノックされた。
トン、トン。
「悠真くん……入っていい?」
葵の声だった。いつもより少し低く、甘く、熱を帯びている。
「……うん、入って」
ドアが開き、三姉妹が部屋に入ってきた。
俺は思わず息を飲んだ。
「え、おおっ!? そ、その格好は」
三人とも、下着姿だった。
しかも、ただの下着ではない。
葵はクリアブルーのレースとフリルがふんだんに使われた、優雅でセクシーなブラとショーツ。
ガーターベルトに白いニーハイソックスが、194cmの長身を妖しく引き立てている。
澪はパステルレッドのシンプルだが、肌にぴったり張り付くようなデザイン。
ストッキングのレース部分が、彼女のクールな体を強調し、静かな色気が漂う。
雛はオレンジの明るい色合いの、フリル多めの可愛らしい下着。
ニーハイソックスが太ももを締め付け、健康的で弾力のある体をより魅力的に見せている。
月明かりだけがカーテンから漏れ、三人の姿を一層色っぽく浮かび上がらせていた。
暗闇の中に浮かぶ三姉妹の瞳は、腹ぺこの肉食獣のようにギラギラと光っているような気がした。
「悠真くん」
葵の声が、甘く低く響く。
「ゆーま」
澪の声が、静かに、しかし熱を孕んで響く。
「悠真……」
雛の声が、明るく、でも抑えきれない欲情を滲ませて響く。
「お、おう……どうしたんだ、3人とも」
俺の声が上ずった。
葵がゆっくりとベッドに近づき、俺の横に腰を下ろした。
レースの布地が擦れる音が、静かな部屋に響く。
「悠真くん……私達に言うべきこと、あるよね? ……ね?」
その声は優しいのに、底に強い圧力と嫉妬が込められていた。
「えっと……その、ごめん、油断してた」
その言葉を聞いた瞬間、三人の空気が一気に緩んだ。
葵の瞳が優しく細まり、澪の肩から力が抜け、雛の顔に明るい笑みが戻る。
「分かってるならよろしい。というわけで、澪、雛。ターゲットを確保」
「ん」
「あいあいさー♡」
素早い動きで二つの巨体が迫ってくる。
月明かりのみの部屋で、カーテンから漏れる光が三人の姿を一層色っぽく演出していた。
左右から腕を掴まれ、巨大なおっぱいが体ごと密着してくる。
更には足も絡め取られて身動きが取れなくさせてしまう。
正面からは葵が色っぽい表情をしながら密着された。
三方向から完全包囲され、3人の息遣いが間近に迫る。
心臓が破裂しそうな勢いで鼓動を早め、そのままベッドに押し倒された。
「うわっ」
ぼすんっ、とスプリングを揺らす音は、1人と3人の体重を受けて大きく弾んで軋む音を立てる。
「さ、3人とも……」
葵が俺の胸に体を預け、耳元で甘く囁いた。
「あのね悠真くん……
私達、これまでずっと我慢してきた。
キスはしてくれた。でもそれ以上のことだって、してみたかったのに。
ずっとずっと我慢してきた……」
その声は甘く、熱く、抑えきれない欲情が溢れていた。
澪が俺の左側に体を密着させ、低い声で続ける。
耳元に息が掛かり、ゾクリとした感覚が背骨を駆け上がっていった。
「……ゆーま、奪われた」
雛が俺の右側に飛びつき、明るく、でも悔しそうに言った。
その声色には確かな色気が混じり込み、雛の明るい声に大人の色めきを付与している。
「あれは不意打ちした胡桃ちゃんが悪いけどー、悠真は雛達の悠真なのにっ!」
葵が俺の胸に顔を埋め、熱い息を吐きながら囁く。
「まあそれは別にいいです。どっちにしても、いずれこういう事態が来ることはわかっていました」
「ど、どういうこと?」
「この所、学園内で悠真くんの株が急上昇しています。それは修学旅行のモテっぷりを見ても分かるでしょう」
「いや、あれは皆がお祭り騒ぎしているだけなんじゃ……」
澪が俺の首筋に唇を近づけ、静かに、しかし強く言った。
「……でも、今日の胡桃の襲撃で分かったはず」
雛が俺の胸に体を擦りつけ、元気いっぱいに、でも少し涙声で続けた。
「悠真の魅力に気がつく人、これからドンドン出てくるもんね。
雛たち、負ける訳にはいかないもん」
三人の体温が、俺の体を同時に包み込む。
レースとフリル、ガーターベルト、ニーハイソックスの感触が、肌に直接触れてくる。
3人の腕に力が籠もり、ミシミシと体が悲鳴を上げ始めた。
葵が俺の耳元で、甘く、決意を込めて囁いた。
「というわけで悠真くん……」
「は、はい」
「今からセックスしましょう」
「はぁあああ!? ちょ、ちょっと待って葵、どうか落ち着いてくれ!」
葵の瞳が、月明かりの中で妖しく輝く。
その視線が、ゆっくりと俺の下半身へと向かっていく。
「悠真くんは、私達の悠真くんです。他の誰にも渡したりしません。だから、その証を立てます」
三姉妹の瞳が、暗闇の中で一層強く、腹ぺこの肉食獣のようにギラギラと光っていた。




