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恋人に浮気されて意気消沈した俺はお隣に住むデカすぎる美人三姉妹に死ぬほど溺愛される  作者: かくろう
第2部

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第55話 届いた封筒

修学旅行が終わり、帰りの飛行機、空港からのバス、そして学園到着。


全ての行程を終え、俺達は帰宅の途中にあった。


葵が左側に寄り添い、蜂蜜色の髪を揺らしながら、穏やかな声で言った。


「悠真くん……今日まで、本当に楽しかったわ。

函館の夜景も、朝市も、全部……悠真くんと一緒だったから、特別だった」


雛が右側から俺と手を繋ぎ、明るく、でも少し切なげに笑った。


「雛も! 4人で歩いた坂道とか、夜景を見たベンチとか……

全部、宝物みたいに覚えてるよ。

これからも、ずっとこんな時間があったらいいな……」


澪は無言で俺の背後に立ち、静かに俺の腰に腕を回してきた。


「……ゆーま、ずっと……そばにいて」


俺は三人の温もりに囲まれながら、ゆっくりと息を吐いた。


「俺も……みんなと一緒で良かったよ。

この旅行で、またみんなとの距離が近くなった気がする」


葵が俺の手を優しく握りしめ、瞳を細めた。


「これからも、ずっと一緒にいたい……

私達、悠真くんのこと、本当に大好きだから」


その言葉に、俺の胸の奥がじんわりと熱くなった。


三姉妹の想いが、静かで、しかし確かな力で俺を包み込んでいた。


「あ、そういえばね、先生達が話してるのを聞いたんだけど」

「どうした葵?」


「うん、なんかね、今度転校生が来るんだって」


「え? この時期にか?」


「うん。なんか家庭の事情がどうのこうの。よほどのことらしいよ」


「へえ、珍しい事もあるもんだな。家の事情でこんな時期に転校とは大変だ」


「そうだね。どんな人かな。ちょっとだけ楽しみ」


「はは、高校生活も残り少ないからな。残り半年をいい思い出にしてもらいたいよな」


「悠真、やっさしー」

「そう……立派」


「そんな大袈裟なもんでもないぞ」


転校生か。なんだか、これから始まる日常に、小さな変化が訪れる気がする。


そんなちっぽけな予感が、胸をよぎった。


◇◇◇


「はわー、帰ってきたねー」


「ちょっと色々動きすぎて疲れたけど、楽しかったなぁ」


「悠真くん、夕飯はどうする?」


「1度実家に戻る。今日はメイドさんが作ってくれる予定だ」

「うん、分かった。じゃあ明日ね」


「ああ、また明日」



修学旅行から帰宅した日の夕方。


俺は三姉妹に別れを告げ、実家に戻っていた。


自室のベッドに腰を下ろし、ようやく一息ついていた。


旅行の疲れがまだ体に残る中、木下登世子さんが部屋のドアを静かにノックした。


「悠真ぼっちゃま」


長年この家に勤めてくれている年配の女性、木下登世子さんだ。


「どうしたんですか、登世子さん」


「実はぼっちゃまが留守中に来客がありまして、お手紙を預かっております」


「え? 俺に来客ですか? どなたが?」


「とにかく、これを……」


登世子さんが差し出したのは、一通のシンプルな白い封筒と、やけに分厚い茶色の封筒だった。


俺はまず白い封筒を開けた。


中に入っていたのは、たった一枚の便せん。


カサ……


「これは……」


短い、簡潔なメモ。


それだけだった。


続いて茶色の封筒を開けると、そこには100万円の束が2つ、合計200万円が丁寧に詰められていた。


俺は一瞬、言葉を失った。


指先が微かに震える。


「……このお金は……誰が?」


登世子さんが静かに言った。


「女性でした。どうか名前は告げないで欲しいと仰っていましたが……」


その言葉で、俺の胸に冷たい予感が走った。


「つまり登世子さんには名乗ったんですね」


「はい……。失礼ながら、老婆心で申し上げます。その手紙を読んであげてくださいませんか」


俺は便せんをもう一度見つめた。


字は綺麗で、少し震えているように見えた。


登世子さんが意味ありげに「名前を聞かずに読んであげて」と言っている。


誰の物か、察しはついた。


だけど彼女の言うことだから、無視することはできなかった。


「分かりました。読んでおきます」


登世子さんが部屋を出た後、俺はベッドに座り直し、改めて便せんを広げた。


短いメモには……たったひと言。


――「悠真へ。残りは必ず働いて返します」


そのたった一行。


送り主の名前は書かれていない。


俺はメモを指で軽く叩きながら、静かに息を吐いた。


「……凪沙か」


名前は書かれていない。

でも、この筆跡と、このタイミングで200万円ものお金を送ってくる人物に、心当たりは一つしかなかった。


胸の奥がざわつく。


苛立ちと、戸惑いと、どこか懐かしいような、複雑な感情が混じり合う。


俺は目を閉じ、ふと数ヶ月前の記憶が蘇った。


初めて凪沙にプレゼントした指輪。

彼女が嬉しそうに笑ってくれた顔。

あの頃の俺は、本気で彼女を幸せにしたいと思っていた。


なのに、彼女は俺を「ただの財布」としてしか見ていなかった。


今、200万円が俺の前に戻ってきている。


「残りは必ず働いて返します……ね」


その一行に、彼女がどれだけの想いを込めているのか。


後悔か、罪悪感か、それともただの自己満足か。


俺はメモを握りしめ、静かに呟いた。


「……お前は、本当に変わろうとしてるのか?」


胸の奥が、重く疼いた。


手紙を机の引き出しにしまい、俺は深く息を吐いた。


今はまだ、深く考える気にはなれなかった。


ただ、確かなことは一つ。


このお金は、

俺がかつて失った「何か」の、形だけの返還だった。



◇◇◇



手紙を読んだ夜、俺はベッドの上で天井を見つめていた。


200万円と、たった一行のメモ。


「残りは必ず働いて返します……か。アイツからは想像できない言葉だ」


送り主の名前はない。

でも、字の癖も、便せんの質も、封筒の重さも、全部凪沙のものだと分かっていた。


俺はメモを指で軽く叩きながら、静かに息を吐いた。


胸の奥が、妙にざわついていた。


「はぁ……修学旅行の余韻が台無しだな」


怒りでも、悲しみでもない。

ただ、昔の自分が捨てた「何か」が、突然戻ってきたような、奇妙な感覚。


翌朝。


白峰家のリビングは、いつものように柔らかな光に満ちていた。


俺がソファに腰を下ろすと、葵が俺の左側に、雛が右側に、澪が後ろから、静かに近づいてきた。


でも、今日は少し違った。


葵は俺の左手に自分の手を重ねたまま、珍しく言葉を詰まらせた。


「……悠真くん、昨夜……何かあった?」


雛は俺の右腕を抱きしめながら、いつもより少し声が小さかった。


「なんか……悠真、顔が疲れてる……」


澪は俺の背中に額を押しつけ、ほとんど息を潜めるようにして言った。


「……ゆーま、なんか……重い?」


三姉妹は、俺の変化を敏感に感じ取っていた。


俺は軽く笑おうとしたが、うまく笑えなかった。


「手紙が来てな……凪沙からだと思う」


その言葉を聞いた瞬間、三姉妹の空気が変わった。


葵の指が俺の手を少し強く握り、

雛の腕が俺の右腕をぎゅっと締め、

澪の体温が俺の背中にさらに密着した。


葵が静かに、でも熱を帯びた声で言った。


「悠真くん……その手紙、どうするの?」


俺は天井を見つめながら、ゆっくりと答えた。


「まだ、決めていない」


部屋に短い沈黙が落ちた。


三姉妹は俺を囲んだまま、言葉を続けなかった。


ただ、彼女たちの体温と、静かな息遣いが、俺の周りを優しく、しかし強く包み込んでいた。


俺はふと思った。


手紙の重さは、まだ完全に溶けていない。

でも、この三人の温もりは、確実にそれを溶かそうとしている。


溶けないものと、溶けていくもの。


両方が、俺の胸の中で静かに混ざり合っていた。


※後書き※

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