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恋人に浮気されて意気消沈した俺はお隣に住むデカすぎる美人三姉妹に死ぬほど溺愛される  作者: かくろう
第2部

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第46話 修学旅行、始まる

新千歳空港の国内線ターミナルは、修学旅行生で賑わっていた。


俺はクラスメイトたちと一緒にバスを降り、大きなスーツケースを引きながら到着ロビーに入った。


周囲は同じ学年の生徒たちで溢れ、興奮した声があちこちから聞こえてくる。


「北海道楽しみすぎる!」「蟹食べまくるぞ!」「夜景絶対見る!」


俺は少し離れた場所で、スマホをチェックしながら待機していた。


三姉妹とはクラスが違うため、空港ではほとんど一緒にいられない。

バスも別、集合場所も別。

だからこそ、今日の朝は少しだけ寂しいような、いつもと違う新鮮な気持ちになっていた。


ふと視線を感じて顔を上げると、遠くのロビーの向こうに三姉妹の姿が見えた。


文字通り頭1つ分以上に回りから突き抜けているので、非常に目立っている。


葵が優しい笑顔でこちらに小さく手を振っている。

雛は元気よく飛び跳ねながら手を大きく振っている。

澪は無言でじっとこちらを見つめ、軽く頷いてきた。


俺も小さく手を挙げて応えた。


こっちは小さいのによく見つけてくれるものだ。

なんだか心が通じ合っているようで嬉しくなる。


クラスメイトの一人が、俺の肩を軽く叩いてきた。


「おうおう悠真くんよぉ。離れていても心は1つってか? 良いご身分ですなぁ。こっちは結局男衆だけでグループ組むことになったというのに」


クラスメイトの1人が絡んでくる。

普段は悪い奴じゃないんだけど、女絡みだと妙に突っかかるのだ。


「高見沢、お前三姉妹と後半一緒に回るんだろ?

マジで羨ましいわ……俺らクラスで回るのなんか味気ねえよ」


「そう言うなよ。これはこれで楽しいだろ」


「勝者の余裕ってか? いいねぇモテる男は」


「なんか突っかかるなぁ」


別の男子も悔しそうに笑いながら言った。


「後半の自由行動、絶対にいい思い出作れよな。

俺らには絶対に話すなよ、恨むから」


俺は苦笑いしながら答えた。


「まあ、頑張るよ……」


その時、アナウンスが流れ始めた。


――「函館行きの便にご搭乗のお客様……」


クラスメイトたちが動き出し、俺もスーツケースを引いてゲートに向かった。


三姉妹の視線が、まだ俺の背中に絡みついている気がした。


バスで移動してきた疲れと、これから始まる修学旅行の期待が混じり合って、胸の奥が少しざわついていた。


函館に着いたら、また三姉妹と会える。


でも、今はクラス行動がメインだ。


俺は深く息を吸い、ゲートをくぐった。


修学旅行の幕が、静かに開こうとしていた。



◇◇◇


【凪沙視点】


「そろそろ皆は修学旅行に出発した頃かな……」


薄暗い部屋の中、私はゆっくりとスーツケースのファスナーを閉めた。


身の回りの荷物は、必要最低限だけをまとめた。

高校の制服はもう着ない。

制服のスカートを畳みながら、指が止まった。

この制服を着て悠真と一緒に登校した日々が、遠い記憶のように感じる。


「悠真……」


ジワジワと心が病んでいく。

手放してしまったものの大きさが心を締め付け、苦しみで圧迫されていくようだった。




私は今日、この家を出る。結局、準備や覚悟を整えるのに1ヶ月近くも掛かってしまった。


警察の事情聴取もある程度完了した。

もうこの家に留まる理由はなくなった。


リビングに降りると、父がソファに座ったまま新聞を広げていた。

視線は一切こちらに向けず、ただ無言でページをめくり続ける。


母はキッチンで皿を洗いながら、ため息を何度も漏らしていた。

そのため息は、私に向けられた失望と苛立ちをはっきりと含んでいた。


弟はゲーム機を手に、俺の存在など最初から無いかのように画面を見つめ続け、

時折冷たい一瞥を投げかけてくるだけだった。


三人とも、私を見ようともしない。


私は静かに息を吸い、声を絞り出した。


「今日で家を出ます。お世話になりました」


返事はない。


父は新聞のページをめくる音だけを響かせ、母は水を流す音を立て続け、弟はコントローラーをカチカチと鳴らすだけだった。


もう腹は立たない。

途轍もない寂しさと、底知れぬ孤独感だけが、心を冷たく支配していた。


本当なら、私は悠真の隣で思い出を作れるはずだった。

修学旅行で一緒に函館の夜景を見たり、海鮮を食べたり、笑い合ったり……

そんな普通の幸せを、捨ててしまった。

彼を「ただの財布」として扱い、嘲笑い、捨てた私の選択が、今になって胸を抉る。



私は深々と頭を下げた。

額がほとんど床に触れるほど低く、丁寧に。


「返事はしなくて大丈夫です。

育ててくれてありがとうございました。

最後まで迷惑を掛けて、本当に申し訳ありませんでした」


その言葉を言い終えても、部屋の中は静かだった。


誰も何も言わない。

誰も私を見ない。


私はゆっくりと顔を上げ、スーツケースの取っ手を握った。


もう、ここに私の居場所はない。


私には、家族と呼べる人は最後までいなかった。

唯一感情を向けてくれた弟も、既に無関心だ。


最後に一度だけ振り返り、家族の背中を見つめた。


——ありがとう、そして、ごめんなさい。


心の中でだけそう呟き、私は玄関のドアを開けた。

外の冷たい風が、頰を刺すように吹きつけた。


私は首にかけたペンダントにそっと触れた。


それは、悠真が最初にプレゼントしてくれた指輪を、細いチェーンに通してペンダントにしたものだった。


小箱と、あの小さな手紙は、スーツケースの中に大切にしまってある。


本当ならとっくに転売していたはずのもの。

でも、どうしても手放せなくて、こうして肌身離さず持っていた。


「これだけが……私に残された唯一の……」


指輪の冷たい感触が、胸の奥に疼くような痛みを呼び起こす。


悠真……

あなたは今、修学旅行で楽しんでいるのかな。

大切な人達に囲まれて、笑っているのかな。


私が捨ててしまった幸せを、今になって激しく後悔している。


(いや違う……そんなものは、始めからなかったんだ)


心の醜い私には、始めから綺麗な思い出を作れる余地なんて存在していない。


これは、単なる自己憐憫だ。


自分を可哀想だなんて思ってはいけない。

全部、私の自業自得なんだ。


私はペンダントを強く握りしめ、玄関のドアを静かに閉めた。

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