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恋人に浮気されて意気消沈した俺はお隣に住むデカすぎる美人三姉妹に死ぬほど溺愛される  作者: かくろう
第2部

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第43話 学園を去った者

事件から2週間が経ったある午後。


浮島家のリビングは、冷たい空気に包まれていた。


凪沙は自分の部屋のベッドにうずくまり、膝を抱えていた。

カーテンは閉め切られ、部屋の中は薄暗い。

スマホの画面は通知がオフにされ、充電すらままならない状態で机の隅に放置されている。


ドアが乱暴に開いた。


「凪沙! また部屋に閉じこもってるのか!」


入ってきたのは父親だった。

顔は怒りで真っ赤で、手には退学通知の書類を握りしめている。


「学校から正式に退学処分が下りたぞ!

未成年飲酒、喫煙、ラブホテル利用……挙句の果てに脅迫まがいの行為まで!

警察からも連絡が来てるんだぞ! 事情聴取だって近々あるらしいじゃないか!

お前は一体、何を考えていたんだ!」


母親も後ろから疲れた声で続けた。


「近所の人にももう顔向けできないわ……

あなたが何の罪もない男の子にまで、あんな酷いことを……

私達、どれだけ恥をかいたと思ってるの?」


凪沙は膝を抱えたまま、俯いた。


そこへ、弟の声が刺さった。


「……姉ちゃん、クソだな」


14歳の弟は、ドアの隙間から冷たい目で凪沙を見ていた。


「僕、姉ちゃんのこと、ずっとカッコいいと思ってたのに。

優しくて、清楚で、みんなから慕われてて……

本当は全部、嘘だったんだね。

金目当てで男を騙して、貢がせて、捨てて……

最後に動画までバラまかれて、退学。

警察まで来るなんて……恥ずかしいよ」


弟の言葉が、一番深く胸に突き刺さった。


凪沙は唇を強く噛んだ。

涙が溢れそうになるのを、必死に堪えた。


「…………ごめん」


小さな声でそう言ったが、家族はもう何も返さなかった。

父親はため息をつき、母親は失望の目を向け、弟は冷たい視線を残して部屋を出て行った。


部屋に一人残された凪沙は、ベッドに顔を埋めた。


引きこもりになってから、もう10日以上が経っていた。

学校には行けず、外に出る気力もない。

スマホを開けば、過去の自分のSNS投稿が掘り返され、ネット上で叩かれている。

「清楚ぶって貢がせてた女」「最悪のサイフ女」など、容赦ない言葉が並んでいた。


特に痛かったのは、悠真からもらったプレゼントの写真だった。


ネックレス、バッグ、ブランドの小物……

自分が転売したものばかりが、スクリーンショットで晒されている。


「あの時……悠真が選んでくれたもの、ちゃんと大事にしていれば……」


今になって、悠真の優しさが痛いほど胸に蘇る。


「悠真……ごめん……でも、会いたい……会いたいよぉ……悠真ぁ」


声が震えた。


引きこもりの日々の中で、凪沙は初めて本当の後悔を知った。


◇◇◇


同じ頃——


朝倉瑛斗は、自分の部屋の床に座り込み、壁にもたれかかっていた。


煙草は取り上げられて、イライラしてしょうがない。


退学処分が下ってから、ちょうど2週間が経過していた。


この2週間は、瑛斗にとって地獄そのものだった。


最初の一週間はまだ「なんとかなる」と思っていた。

「警察が本気で動くはずがない」「動画の件は凪沙が全部悪い」「下須川さんに頼めばなんとかなる」と、自分に言い聞かせていた。


しかし、現実は容赦なかった。


二週目に入った頃、警察から正式に「事情聴取」の連絡が来た。

父親は電話を受けた瞬間、顔色を変えて瑛斗を殴りつけた。


「お前みたいなクズがうちの息子だなんて、恥ずかしい!

警察が家に来るんじゃないかって、毎日びくびくしてるんだぞ!

動画を第三者に渡したんだろ? それって立派な犯罪だぞ!

この家を巻き込む気か!?」


瑛斗は床に倒れ込みながら、父親の怒鳴り声を聞いていた。

痛みより、恐怖が先に立った。


バンドは完全に崩壊した。

メンバー全員から「関わりたくない」と絶縁され、ライブハウスからも出禁処分。

下須川の名前が出た瞬間、業界の人間まで一斉に距離を置いた。

予定していた対バンも全部白紙になり、機材の修理代やスタジオ代の請求書だけが溜まっていく。


金はもう底を尽きていた。

凪沙から最後に引っ張った金も、ライブのノルマと飲み代で消え、

今は親の財布に手を出すことすらできなくなっていた。


瑛斗は毎日、部屋に閉じこもり、スマホの画面を眺めていた。


凪沙の暴露記事はまだトップに表示されている。

【元生徒の浮島凪沙、未成年飲酒・喫煙・ラブホテル利用で退学 朝倉瑛斗とのやり取りも公開 警察が捜査開始】


瑛斗は画面を睨みながら、歯を食いしばった。

公式のニュースと違い、ネットの晒し行為にはプライバシー保護など皆無。


全て実名で晒されてしまっていた。


「全部……凪沙のせいだ……

あいつがもっと上手くやっていれば……」


そう言い聞かせながらも、胸の奥で自分が一番馬鹿だったことを、薄々理解していた。


過去の自分が、頭の中に浮かぶ。


ライブハウスでギターを弾き、観客の歓声を浴びていた頃。

「俺はプロになる」「女なんかいくらでもいる」と豪語していた頃。

凪沙を「便利な財布」として扱い、悠真を「チビのサイフ」と嘲笑っていた頃。


今はすべてが失われていた。


父親の怒鳴り声、母親の失望した目。

バンド仲間からの絶縁、警察の事情聴取の恐怖、金のない現実。


瑛斗は膝を抱え、壁に頭を打ちつけた。


「……ふざけんなよ……」


声が震えた。


あのチビ——高見沢悠真が、今は白峰三姉妹に囲まれて、幸せそうに笑っている姿が頭をよぎる。


自分はすべてを失い、部屋に閉じこもって父親の怒鳴り声を聞き、警察が来るのを怯えている。


瑛斗はゆっくりと息を吐き、虚ろな目で天井を見つめた。


学園を去った者たちは、もう二度と戻れない場所に立たされていた。


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