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恋人に浮気されて意気消沈した俺はお隣に住むデカすぎる美人三姉妹に死ぬほど溺愛される  作者: かくろう
第1部

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第30話 教室の波紋

スマホの電子音が、教室中に鋭く響き渡った。


クラス全員が一瞬で固まり、廊下の方からもざわめきが聞こえてくる。

もしかしたらこの音は、学校全体にまで届いているのではないかと思えるほどだった。


クラスメイトたちは怪訝な顔を浮かべながら、次々とスマホを取り出していく。

画面を開いた瞬間、教室の空気が一気にざわついた。


「すげぇ……裏垢、悪口だらけじゃん……」

「え、これって完全に私たちのことだよね。背景がこの学校の中じゃん……」

「なにこれ……『頭の軽いバカ女共』って」


一人の女子が声を震わせながらスマホを握りしめた。


「あっ、これ……モザイクかけてあるけど、私の写真だっ!

なによっ、まともな服も買えない貧乏人って……!

ウニクレの何が悪いっての!?」


別の女子が顔を真っ赤にして声を荒げた。


「はまむらのどこがゴミ袋着飾ってるのと変わんないのよっ!

良い服いっぱいあるのに……!!」


教室の空気が徐々に熱を帯び、怒りのボルテージが一気に上がっていく。


「酷すぎる……。SNSも自慢と誹謗中傷ばっかり。

どんだけ人のことを見下してるの……?」


その怒りの波は、俺のスマホにも当然のように押し寄せていた。


俺が画面を確認した瞬間、息が止まりそうになった。

複数のURLが並んでいる。学内の裏掲示板、そして凪沙のものと思われる複数の裏アカウント。


「こ、これ……俺が凪沙にプレゼントしたものばかりだ……」


見覚えのあるブランドのバッグや高級化粧品が、次々と写真にアップされていた。

どれも、かつて俺が凪沙のために必死に選んで買ったものばかりだった。


「これも……これも……全部俺が買ったものだ……」


こんな自慢ブログ作ってたのか。自慢をし終わったら用済みで、さっさと転売に回していたのだろう。


同じブランド品の写真は一つもない。

俺ってこんなにプレゼントしてたのか。改めてバカすぎるな、俺って。


クラスメイトたちの声が、次第に大きくなっていく。


「うわマジかよ……」

「これ、この間発売されたばかりの新作バッグだ。お姉ちゃんが欲しがってたけど、高すぎて買えなかったって……」

「これも……うわっ、これも凄く高いのばっかり……」

「写真に写ってるだけでも、ざっと200万くらいは買ってるんじゃ……?」


教室の視線が一斉に俺に向けられた。


「高見沢、どんだけ金持ちなんだよ……」

「ボンボンじゃん……」

「うわ、金に物をいわせた貢ぎ物ってこと? だっさっ……」

「小遣いでウハウハかよ。楽勝人生じゃん……」


その言葉が俺の胸に突き刺さった瞬間、俺の後ろに座っている三姉妹が静かに、しかしはっきりとした声で反応した。


「誤解しないでね~。悠真くん、パパやママからお小遣いは一円たりとももらってないよ……」


葵の声はいつも通り優しかったが、どこか毅然とした響きがあった。

そこには明らかに怒声が含まれている。


「……そう。ゆーま、自分で稼いでる」


澪が淡々と、しかし力強く言葉を続けた。


「毎年確定申告してるもんねー♪」


陽菜が明るく、けれど少し誇らしげに付け加えた。


俺の顔が、じんわりと熱くなった。


「え? 自分で稼いでるって……?」

「うそ……」


驚愕の表情を浮かべたのは、凪沙だった。


そう、俺は凪沙に貢いだ全てのものを、自分の手持ちのお金で買っていた。

親の財布に頼ったことは一度もない。


「白峰さん、それってどういうこと?」


クラスメイトの1人が尋ねる。葵が我がことのように得意げな顔をしながら、嬉しそうに語った。


「悠真くんはね、小学生の頃から様々なアイデアで特許申請を出して、これまでに数十個の特許が認められる天才アイデアマンなんだよ……」


葵が穏やかながらも誇らしげに説明した。


「毎月……数百万……稼ぐ」


澪が短く、しかしはっきりと事実を述べた。


「すごいよねー。悠真格好いいよ~♡」


陽菜が目を輝かせながら、嬉しそうに俺を見つめた。


三姉妹が俺の秘密を暴露してしまった。


今までずっと黙っていたが、俺は親から小遣いをもらっていない。

凪沙に買い与えた高級ブランド品の費用は、全て自分の稼ぎから捻出したものだった。


正直、高校生のうちからこんなにお金を持っていても使い道がなく、父さんたちに資産運用を任せている。

その一部が毎月振り込まれてくる仕組みだ。


税金って高いしな。


ただ、金はあっても凪沙みたいな金の亡者にコロリと騙されてしまうような未熟者だ。


だから俺は自分を凡庸な人間だと思っていた。


出せるのはアイデアだけ。商品化してくれるのは父さんの会社の人達だし、それが売れるのも彼らが優秀だからだ。


決して俺1人の力じゃない。特許料なんてのは、それを元にして商品を開発したり、売ることができる力を持っている人達がいるから成り立つ収入に過ぎないのだ。


「な、なによそれっ!

金持ちのボンボンで、お金の使い方も知らないバカチビじゃなかったの!?」


凪沙がキャラを完全に崩し、声を荒げて叫んだ。


俺は静かに、しかしはっきりと言い返した。


「別に間違ってないよ。

現に君という、金と承認欲求の亡者にATMとして都合良く使われていた事にも気付かなかった、大馬鹿野郎だ」


教室の空気が、一瞬で凍りついた。


一瞬の静寂の後、クラスメイトたちの声が一気に爆発した。


「え……マジで? 浮島さんが高見沢君に貢がせてたって本当だったの?」


「待って、ひどすぎる」


そんな事まで克明に書いてあるのか……。まるで自白の日記帳だな。


「私達、凪沙のこと信じてたのに……全部計算だったの?」


「裏垢の悪口、全部本人の書き込みじゃん。『貧乏人』とか『ゴミ袋』って……私達のことだよね?」


「うわ、動画も本物? 瑛斗とやってたって……信じられない」


「高見沢、すげえな。自分で稼いでたなんて……」


「浮島、全部計算だったのかよ……最低だな」


女子の一人が涙目で凪沙を睨んだ。


「凪沙ちゃん……私達のこと、そんな風に思ってたの?

いつも『可愛いね』って言ってたのに……」


別の男子が声を荒げた。


「散々貢がせて捨てたくせに、今更可愛い子ぶるとか……ふざけんなよ」


教室の空気が一気に冷え込み、凪沙に向けられる視線が痛いほど鋭くなった。


凪沙の顔が真っ青になり、必死に笑顔を作ろうとしたが、唇が震えて言葉が出てこない。


教室の視線が一斉に彼女に集中する中、凪沙は慌てて声を張り上げた。


「ち、違うの! これは全部……誰かが悪意で作った偽物よ!

私、そんなアカウント持ってない! 信じて……みんな!」


クラスメイトの一人が冷たい声で切り返した。


「偽物? 写真も動画もあんたじゃん。裏垢のフォロワー数も一致してるよ」


凪沙は必死に首を振り、涙を浮かべて訴えた。


「誤解よ! 私はただ……悠真のことが好きで……

あの言葉は……冗談だったの! 本気じゃなかったんだよ!」


別の女子が声を荒げた。


「冗談? 自分で書いてたじゃん!

私達のこと『貧乏人』とか『ゴミ袋』って……それも冗談なの?」


凪沙の声が震え、必死に言い訳を重ねる。


「それは……ストレス発散で……本気じゃなかったの!

みんなのことは本当に好きだったよ!

悠真のことだって、心から好きだったんだから……

お願い、信じて! 私は悪くないの!」


男子の一人が呆れたように言った。


「例え冗談だったとしても、言って良いことと悪いことの区別も付かないのかよ。タチが悪いな」


凪沙は涙を拭いながら、必死に笑顔を貼り付けた。


「それは……全部誤解!

私はただ、悠真に振り向いてほしくて……

本当は今でも悠真が好きなんだよ!

お願い、もう一度チャンスを……」


しかし、教室の空気は冷え切ったままだった。


凪沙の言い訳が、逆に自分の墓穴を深くしていることに、彼女自身も気づき始めていた。

俺は静かに息を吐き、三姉妹の温もりを背中に感じながら、教室のざわめきを聞いていた。


この瞬間、凪沙の仮面が、完全に剥がれ落ちたことを実感した。

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