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恋人に浮気されて意気消沈した俺はお隣に住むデカすぎる美人三姉妹に死ぬほど溺愛される  作者: かくろう
第1部

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第13話 三姉妹の決意

【澪 視点】


ゆーまは、小さい。

ゆーまは、可愛い。

ゆーまは、守ってあげたくなる存在。


弟みたいな存在……だった。


でも、それは間違い。

本当は……好きだった。

恋人に、なりたかった。


気付くのが遅すぎた。


私達三姉妹は、どうしてだか人よりずっと体が大きく育ってしまった。

私は、それが嬉しい。大好きなバレーボールで、思う存分、力を発揮できるから。


でも、今はこの大きな体が恨めしい。


何故?


それは、この大きな体が、ゆーまのコンプレックスを大いに刺激していたことに、私達は気がついていなかったから。


思春期に入った頃だったと思う。

ゆーまは私達を避けるようになった。

話しかけたら答えてくれる。

でも、どこか素っ気ない。

よそよそしい。

遊びに誘ってくれなくなった。

家にも来てくれなくなった。


それは、弟に構ってもらえない姉のような気持ちだと、思っていた。


そして、誰とも知れない女と、いつの間にか結ばれてしまった。

小さくて可愛い、お人形さんみたいな可憐さを持つ女の子だった。


悠真と同じくらいの背丈で、清楚で明るい、でもどこかザラついた空気を持つ……嫌な女だった。


そこで初めて、私はゆーまに恋をしていたことに気がついた。

遅すぎる気付きだった。


あの子を見て確信した。この大きな体では、ゆーまの好みにはなれなかったのだと。


そのことを自覚したのは、私だけじゃなかった。

私達は三つ子。

趣味も、趣向も、全部違うけど、根本の所は同じ。

ゆーまという男の子を、誰よりも深く愛していた。

家族としてではなく、1人の男として……。


だから、ゆーまを裏切ったあの女には感謝している。

今度こそ、誰にも渡さない。

私達以外の誰にも……。


「うふふ~、うふふふふ~♡ 明日は悠真くんと二人っきりか~。楽しみだなー」


葵が勝ち誇った顔でくじ引きの当たりとなった割り箸を天に掲げていた。


結局、じゃんけんでは付かなかった決着は、ママの提案でくじ引きによる決選が行なわれることになった。


「悔しい……でも、勝ちは勝ち。今回は譲る」


「ざんねーん。あ、ねえねえ葵ちゃん、澪ちゃん」


「なぁに、雛ちゃん」


「一応さ、日替わり恋人なんだから、ちょっとしたルールっていうか、ケジメは付けておかない?」


雛が珍しく真面目なことを言う。

ケジメなんて言葉がこの子の辞書の中にあったことが驚きだった。


「ケジメって?」


「ほら、雛たち、いつも一緒だったよね。雛はみんなと一緒が楽しいからいいけど、せっかくの日替わりだから、お互いの邪魔はしないって誓いを立てておいた方がいいと思うんだー。特に澪ちゃん」


ギクリと血圧が上がる。雛は時々こういうところで鋭い。


葵が睨み付けてきた。


「みーおーちゃーん。まさかどさくさに紛れて乱入しようとしてない?」


「して……ナイヨ」


「お姉ちゃんの目を見て言ってごらんなさい」


「三つ子に姉も妹もない」


「まあまあ2人とも落ち着こうよー。だけどやっぱり、せっかくの日替わり恋人なんだから、今までできなかった2人っきりをちゃんと楽しんだ方がいいと思うんだ。雛もね、ずっと悠真と二人っきりのデートがしてみたいって思ってたから」


「うん、そうだね。確かにそこはケジメを付けたほうがいいかも。私達は、誰が選ばれても恨みっこなしのお嫁さん候補だから」


そこまで聞いて、私も考えを引き締めた。

確かに、私達はゆーまのお嫁さんになりたい。

だけど、日本の法律では妻は1人しかなれない。

高見沢家の澪に、私はなりたい。


「だからね、雛たち、約束しよ。応援はしても、足の引っ張り合いは絶対しない。そして、誰が選ばれても、誰も選ばれなくても、恨みっこ無し」


「うん。賛成。でも……私の考えは雛とは少しだけ違うんだ」


葵は言う。


「私は、私達以外の誰かと悠真くんが一緒に居るところを、もう二度と見たくないと思ってる。だから、どうあっても、私達の誰かを選んでほしい」


「ん、葵に賛成。私も……ゆーまが他の女に取られるのは、もうイヤ……寝取られは、心が死ぬ」


「寝取られてはいないけどねー。私達、自分達の恋愛感情にも気がついてなかった訳だし……」


あんな気持ちになるのは二度とごめんだ。

あの女……浮島凪沙。

ゆーまをあんな目に遭わせて、のうのうと生きている事が許せない。

確かにゆーまを手放してくれたことには感謝してる。

だけど、それはそれ。これはこれだ。


「とにかく、私達はお互いの邪魔をしない。私達が仲違いしたら、悠真くんが悲しむもの」


「雛もそう思う」


私達の話はまとまりかけた。この話はこれで終わりか……。そう思った矢先……。











「ところでさ……」


話が一段落ついたところで、葵の空気が変わったのが分かった。

私は知っている。


いや、私達は知っている。


三姉妹の中で、一番怖いのは誰か。

溜め込んだ感情が爆発する私か。怖い物知らずの雛か……。

どっちも違う。


――「あのド腐れビチグソ女、どうやって潰しましょうか?」


葵の瞳が漆黒の空洞のように光を失い、体に余分な力を込めないようにカクンと首をかしげる。


まるでホラー映画だ。


普段はフワフワしてるくせに、キレると一番手が付けられないのが葵なのだ。


「まず後ろから襲って気絶させて両手の指を結束バンドで縛り付けてチャーターした車で山奥に拉致して大きな穴を掘って大量のカマキリの卵を放り込んで孵化させて口枷を填めて閉じられないように固定して両手足を縛って逃げられないように骨を折ってその後で2万匹のセアカゴケグモを放り込んで……いっそジェット機をチャーターしてポイント・ネモかバミューダトライアングルのど真ん中に――」


煮えたぎる硫酸入りの高熱マグマを腹の底に抱えていると言ってもいい。

静かに、ただ静かに全てを滅ぼす魔王になる。

今の葵なら、きっとあの女の首の骨も笑顔でへし折るだろう。


「葵、闇のオーラがダダ漏れ。雛が怖がってる。あと発想がグロい」


本気で完全犯罪をやりかねないので止めるしかない。


「こ、怖がってないニョ!? ぁ……」


雛がモジモジし始めた。多分、ちょぼっと漏らしたな。

……私も替えのパンツ準備しなくっちゃ。


「葵、落ち着く。殺人は駄目。復讐は、きっとゆーまが望まない」


「うん、分かってる。悠真くんは優しいから、きっとあの女に酷いことはできないと思う。だけど、今度ちょっかいを掛けてきたその時は……」


「分かる。次にゆーまを悲しませたら、私も容赦しない」


「雛もー。物理的地獄に落としちゃうよー」


「それは私がやります……じゃなくて、こっちから手を出すことはしない……。でも、このままじゃ済まさない」


「ん……ビッチの本性は、皆に知ってもらうのがいいかも」


「どうするのー?」


「あの女のSNSを特定してあります」


「仕事が早い」


さすが葵。人を追い詰めることに関しては天才的だ。


「ま、今は何もしません。どうやら悠真くんに貢がせたプレゼントを売りさばいて、相当好き勝手豪遊してたみたい。高校生にあるまじき、飲酒までしてるっぽいわね」


「なるほど。SNSは、人の本性が出る……」


よくは知らないけど、後輩が「映え」だのなんだのと話しているのを耳にするから、自己顕示欲を満たす何かを欲しているのだろう。


「うわー、うわー。雛もSNSたまにやるけどー。これはちょっと痛々しい自己顕示欲だねー。雛もドン引き~」


雛のスマホを覗くと、そこは目がチカチカするほどのブランド品を誇らしげに次々とアップさせていた。


「聞いた話だと、悠真くんに高いブランド品を買わせて、それを転売した利益で更に新しいブランド品を買ったり、他の男に貢いだりしてるみたいね」


「ゆーま、こんな高いのいっぱい買ってあげてたんだ……」


「ざっと200万ほどでしょうか。まだ売却してない分も含めると、300万はありそうです。悠真くんの一途で真っ直ぐな性格が垣間見えるようですね」


それはちょっとゆーまを擁護しすぎではないかと思う。


ゆーまのことを悪く言いたくないけど、これは騙されてることに気がつかないのがおかしいと思ってしまうくらい派手過ぎる。

高校生の女がこんなの欲しがるなんて普通じゃない。


それにしても、たった3ヶ月でここまでお金を使わせるなんて。


夢中になってたから気付けなかったのか、よほどあの女が巧妙に本性を隠していたか。


それとも――


「あははは、悠真って純粋なんだね」


雛は単純でいいな。でも、ゆーまはそういう人。

相手の欲しているものを察して、先回りして用意してしまう気遣いの紳士なのだ。


相手が強欲な女だと、こういう結果になってしまうけど、自分がゆーまの彼女だったら、どんなことをしてくれるんだろう。

どんな風に甘やかしてくれるんだろう。


それを考えると股が濡れる……じゃなかった、胸が熱くなる。


「普通は気がつきそうなものだけど……」

「悠真くんの《《事情が事情》》なだけに、金銭感覚が少し人より高い位置にあるのは仕方ありません。《《高見沢グループが盤石》》なのは、ひとえに《《悠真くんの力あればこそ》》です」


そう、その通りだ……。そして高見沢グループと提携を結んでいる白峰グループが巨大企業でいられるのも、根本を辿っていけば悠真のおかげ。


悠真は自分を凡庸な人間だと思っているけど、周りはまったくそう思っていない。


ゆーまにはもっと自分が凄い人間であることを自覚してもらうべき。



「とにかく、あの女は悠真くんというサイフを失ったことで、今後暴走する可能性が多いにあります。どうしてか分かりますか?」


「はい先生!」


「はい、雛さん」


「1回悠真で贅沢を味わっちゃったから、もっと欲しくなるー!」


「正解です。1度覚えた極上の味は、ダウングレードが困難です。きっと近いうちに悠真くんをもう一度サイフにしようと接触してくるはずです」


「そうなったら、もう容赦しない」


「雛も許さないよー」


「よろしい。ともかく、今はあの女を悠真くんに近づけない事です」


葵が敬語口調になる時は、とことんまで相手を理詰めして打ちのめす時だ。

今は味方サイドだから頼もしいけど、敵に回ったら死ぬほど恐ろしい。


「それから、あの朝倉瑛斗という男。調べによれば相当なボンクラですね。バンド活動をしているようですが、実際は打ち上げで酒を飲んで女をもてあそぶのが目的みたいなところがあります」


この短期間でよくそこまで調べたと思う。

葵の執念深さは相当なものだ。


まあうちにはそういうのに強い人を動かせる力がある。

積極的に活用しているのは葵くらいだけど……。


「どーする? 潰すの?」

「正直業腹な相手ではありますが、まだ時期尚早です。どうせ潰すなら最高の舞台を用意してあげましょう。全てを失って生き地獄を味わうように、じわり、じわりとね……くくっ、ふふふふ」


「葵……また怖くなってる」

「夢に出てきちゃうよ」


葵は額に手の平を当てて、低く唸るように笑い始めた。

まるで映画の悪役みたいだ。ゆーまが見たら怖がるんじゃないだろうか。


言ったらキレるから言わないけど。


「ま、それはともかく、明日は私が悠真くんを甘やかすので、2人にはターゲットの監視をお願いします」


「ん、了解」


「わかったー」


そうして、私達はゆーまを守るための作戦会議を終えるのだった。

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