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EP 15

魔人ギアンの野望を打ち砕き、暴走していた魔道具たちが静まり返った帝都アルクス。

俺たち問題児パーティーは、破壊された『死蟲機』の残骸と、ギアンが落としていった『割れた仮面の欠片』を持ち、ルナミス大教会の最奥にある特別室へと足を運んでいた。

「――そう。あなたたち、そんな恐ろしい相手と戦っていたのね……」

俺の報告を聞き終えた母さん(聖女セーラ)は、俺の頬の擦り傷を優しい治癒魔法で撫でながら、酷く険しい顔をした。

その横では、大教会の最高責任者である大司教様が、机に置かれた機械の蟲の残骸を見て、カタカタと震えている。

「間違いない……。これは教会の最深部にのみ伝わる禁忌の伝承、神話の時代に滅びたはずの『死蟲軍』の兵器です……ッ」

「神話の時代?」

俺が首を傾げると、大司教様は重い口を開き、俺たちに『世界の裏側の真実』を語り始めた。

「かつて、女神ルチアナ様がこのアナスタシア世界を創造されるより前。世界には三柱の絶対者が覇権を争う【神蟲魔大戦】という途方もない戦争がありました。その一柱こそが、無機質な機械と蟲の暴力で世界を喰い尽くそうとした絶対悪――【死蟲王サルバロス】です」

「死蟲王、サルバロス……。地下水道で、あのピエロ(ギアン)もその名前を出していたわ」

キャルルが腕を組みながら呟く。

「女神ルチアナ様は、邪神デュアダロスと一時的に手を組み、さらに五体の聖獣が奇跡の合体を果たした【聖獣機神ガオガオン】の神話級の力をもって、ようやくサルバロスを打ち倒しました。……しかし、奴は完全に消滅してはいなかったのです」

大司教様は、青ざめた顔で窓の外――帝都の遥か彼方の空を指差した。

「肉体を滅ぼされたサルバロスは魂だけの存在となり、世界のどこかにある生きたダンジョン【天魔窟てんまくつ】に潜伏したと伝えられています。奴は完全復活を果たすため、配下を使って人間たちの『絶望に染まった魂』を贄として集めているのでしょう」

「絶望の魂……だからあいつは、みんなが笑顔で暮らすこの帝都の『平和な日常』をわざと壊そうとしたんだな」

イグニスがギリッと牙を鳴らす。

「ええ。今回、アレンたちの活躍で帝都は救われました。しかし、死蟲軍がこの豊かなルナミス帝国に目をつけた以上、第二、第三のギアンのような刺客が送られてくるのは時間の問題でしょう」

母さんの言葉に、俺はハッとした。

このまま俺たちが帝都に留まり、ここで防衛戦を続ければ……いずれまた、罪のない街の人々や、父さんや母さんまでもが、奴らの『絶望のターゲット』に巻き込まれてしまう。

(……僕の育った、大好きなこの街を、あんな機械の蟲たちの餌場になんてさせるもんか!)

俺は、両親から受け継いだ『黒鋼の剣』の柄を強く握り締め、母さんと大司教様を真っ直ぐに見つめた。

「母さん、大司教様。……僕たち、帝都ここを出るよ」

「アレン……?」

「奴らがここを狙ってくるなら、僕たちが奴らの懐に飛び込んで、元凶を叩く。魔人ギアンを追いかけて、【天魔窟】を見つけ出すんだ。それが、この帝都を守る一番の近道だ!」

13歳の少年の、無謀とも言える決意。

だが、その後ろには、帝都が誇る『最強の三大問題児』たちが、頼もしい笑みを浮かべて並び立っていた。

「ガハハハ! いいぜリーダー! 俺様も、あのピエロ野郎にはまだ一発殴り足りねぇと思ってたところだ!」

イグニスが両手斧を肩に担ぎ直す。

「ルナキンでパフェが食べられなくなるのは寂しいけど、私の日常を脅かす害虫は、巣ごと潰しておかないとね」

キャルルがトンファーをくるりと回して、好戦的に微笑む。

「世界樹様も『ルナ、あの機械の虫さんたちは森に悪影響だからお掃除してきなさい』って言ってるわ。任せてちょうだい!」

ルナが白銀の杖を掲げ、ふんわりと笑う。

俺の仲間たちは、誰一人として恐れていなかった。

母さんは、そんな俺たちを見て、かつて父さんと共に世界を救う旅に出た日を思い出したかのように、優しく、そして誇らしげに微笑んだ。

「……大きくなったわね、アレン。あなたの背中が、リュウの背中と同じくらい、頼もしく見えるわ」

母さんは俺を強く抱きしめ、そして冒険の無事を祈る『女神の加護』を授けてくれた。

「行きなさい、アレン。あなたと、あなたの素晴らしい仲間たちなら、きっとどんな暗闇でも打ち払えるわ」

「うん! 行ってきます、母さん!」

   ◆

数日後。

帝都アルクスの巨大な正門の前。

俺はバックパックを背負い、どこまでも続く青空と、その先にある未知の荒野を見つめていた。

ポケットの中には、相変わらず【ランダムボックス】で出した『黄色いアヒルの玩具』が入っている。

そして俺の隣には、最強で、最狂で、最高に手のかかる3人の大人たち。

「よし! それじゃあみんな、天魔窟を探す果てしない旅の始まりだ! 足を引っ張らないでよ!」

俺が振り返って笑うと、3人は呆れたように肩をすくめた。

「誰に向かって口を利いてるんだ! 俺様が大英雄イグニス様だってことを……あべっ!?」

「うるさいわねトカゲ、アレンの言う通りよ! さ、置いていくわよリーダー!」

「あらあら、今日はお天気が良くてお散歩日和ねぇ」

騒がしい仲間たちの声が、青空に吸い込まれていく。

英雄の息子、アレン・鍵田。

俺たちの本当の冒険は、この広大な世界の裏側に潜む『死蟲王』との戦いという、新たなページをめくったばかりだ。

力と知恵、そして地球の『ガラクタ』が奇跡を起こす。

帝都最強の問題児パーティーの旅は、ここからが本番だ――!

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