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EP 10

Aランク魔獣『アーマー・ビースト』の討伐から一夜明けた、翌日の朝。

俺たち問題児パーティーの新たな拠点となった、帝都アルクスのシェアハウスマンション(4LDK・家賃一人3万円)。その一室で目を覚ました俺は、自分の体に起きている『異常』に戦慄していた。

「……う、動けない……」

ベッドから起き上がろうとした瞬間、全身の筋肉という筋肉から、引きちぎられるような激痛が走ったのだ。

指一本すら、鉛のように重くて動かせない。さらに、体内の魔力も完全にすっからかんで、自分の得意な回復魔法をかけることすらできない状態だった。

(あの『聖闘気斬』の反動か……!)

父さん譲りの闘気と、母さん譲りの聖属性魔法の融合。

13歳のまだ未熟な体で、相反する二つの規格外のエネルギーを同時に練り上げた代償は、想像以上に大きかった。

どうやらあの技は、今の俺には『1日1回が限界』であり、一度放てばこうして数日間は行動不能になるという、極めて重いリスク(弱点)があるらしい。

「痛たたた……だ、誰か……」

俺が掠れた声で助けを呼ぶと、バタンッ!と勢いよく自室のドアが開いた。

「おいアレン! いつまで寝てんだ、今日はギルドに……って、どうしたお前! 顔が真っ青だぞ!?」

最初に入ってきたのは、脳筋竜人のイグニスだった。俺のただならぬ様子を見て、彼は慌ててベッドに駆け寄ってきた。

続いて、兎耳のキャルルと、エルフのルナも部屋に飛び込んでくる。

「アレン、大丈夫!? どこか痛いの!?」

「あらあら、お顔が真っ白ね。昨日無理しすぎたのかしら?」

「み、みんな……ごめん。昨日の技の反動で、全身が筋肉痛で、魔力も枯渇して……動けないんだ……」

俺が息も絶え絶えに説明すると、3人の大人たちは「なるほど」と顔を見合わせ、そして、なぜか全員が『任せておけ』とばかりに自信満々に胸を張った。

「ガハハハ! なーんだ、ただの筋肉痛と魔力切れか! だったら俺様に任せな!」

イグニスがドスドスと台所へ向かい、すぐに何かを持って戻ってきた。

彼の手には、見るからに禍々しい赤黒い色をした、ボーリングの玉ほどもある『超特大の肉の塊』が握られていた。

「筋肉痛にはスタミナだ! これは俺様が朝から仕込んできた『獄炎竜の激辛ハバネロ角煮』だ! ほら、遠慮せず食え! 口を開けろ!」

「い、いや待って! 今そんな油とスパイスの塊を胃に入れたら、確実に吐く――むぐぅっ!?」

イグニスが俺の口に無理やり激辛肉を押し込もうとする。強烈な香辛料の匂いに、俺の胃袋が激しく痙攣した。

「ちょっとトカゲ! 弱ってる病人になんてもの食わせようとしてんのよ! どきなさい!」

キャルルがイグニスに容赦のない回し蹴り(鐘打ち)を叩き込み、俺を救出してくれる。

さすがキャルル。やっぱりこのパーティーで一番の常識人は彼女だ……と安心したのも束の間。

「筋肉痛なら、血流を良くして汗と一緒に疲労物質を流し出すのが一番よ! ほらアレン、あんたの部屋を今から極限まで温めるわ!」

キャルルはどこから持ってきたのか、カンカンに熱された『サウナストーン』が乗った鉄鍋を部屋の中心に置き、そこにバケツ一杯の水を一気にぶちまけた。

ジュワァァァァァァァァッ!!!

「ゲホッ、ゴホッ!? きゃ、キャルル!? 部屋の中でロウリュウしないで! ここ賃貸だよ! 敷金引かれる!!」

俺の悲鳴をよそに、部屋の温度が急上昇し、視界が真っ白な蒸気に包まれる。

動けない体にサウナの熱気は完全に拷問だ。意識が遠のきかけた俺の前に、今度はルナが天使のような笑顔で現れた。

「ふふっ、二人とも乱暴ね。アレン君、私が特製の『お薬』を煎じてあげたわ。これを飲めば、どんな痛みも一瞬で飛んでいくわよ〜」

ルナが差し出した木の器には、ドロドロとした『発光する紫色の液体』がなみなみと注がれていた。

どう見てもポーションではない。むしろ、魔女が作る毒薬のビジュアルだ。

「ル、ルナ……それ、何が入ってるの……?」

「世界樹の根っこをすり潰したものと、マンドラゴラの絞り汁と、あとはその辺に生えてた毒キノコを少々よ!」

「毒入ってんじゃん!! 痛みと一緒に命まで飛んでいくやつだから!!」

「スタミナをつけろ!」「汗をかけ!」「これを飲め!」

俺のベッドの周りで、最強スペックの大人たちが三者三様の「殺意の高い看病」を巡ってギャーギャーと言い争いを始める。

(父さん、母さん……僕、魔獣に殺される前に、仲間の看病で死ぬかもしれない……)

強すぎる仲間を持ったリーダーの悲哀。

俺はサウナ状態の部屋の中で、激辛肉の匂いと発光する謎の薬液のプレッシャーに耐えながら、白目を剥いて完全に気を失ったのだった。

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