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EP 8

俺の右手に現れた光の箱が弾け、中から『一つのアイテム』が飛び出してきた。

それは聖剣でも、魔法の杖でもなかった。

手のひらに収まるサイズの、黒緑色をした無骨な金属の筒。その上部には、小さな金属のリング(ピン)が付いている。

「なんだ、あれ……? またガラクタか?」

イグニスが絶望したような声を上げる。

だが、俺は違った。幼い頃、父さんの膝の上で何度も聞いた『地球の戦いの歴史』と、ランダムボックスを通じて俺の脳内に直接流れ込んできた【アイテムの使用方法】が、これが何であるかを明確に教えてくれていた。

(これだ……! 父さんが言っていた、光と音で敵の感覚を奪う地球の兵器……!)

「ブモォォォォォォォォォォッ!!」

アーマー・ビーストが巨大なミスリルの球体と化し、岩盤を削りながら俺たちに向かって猛スピードで突進してくる。

激突まで、あとわずか数秒。

俺は金属の筒を強く握り締め、後ろで言い争っている問題児たちに向かって、これまでにないほどの大声で叫んだ。

「みんな!! 今すぐ目を閉じて、耳を塞いで、地面に伏せろッッ!!!」

「えっ!?」

「ア、アレン……?」

普段は温厚で大人しい俺の、腹の底から響くようなただならぬ気迫。

それに押されたキャルル、ルナ、イグニスの3人は、条件反射のように言われた通りに目を強く閉じ、両手で耳を塞いで岩陰にしゃがみ込んだ。

俺は魔獣に向かって一歩踏み出し、筒のピンを思い切り引き抜いた。

そして、猛スピードで迫り来るアーマー・ビーストの顔面のド真ん中へ向かって、それを全力で投擲する!

「食らえっ!! 『フラッシュバン(閃光手榴弾)』ッッ!!!」

金属の筒が魔獣の鼻先に激突した、その瞬間。

――カァァァァァァァァァァァァァンッ!!!!

太陽が爆発したかのような、絶対的な白。

そして、鼓膜が破れるかと思うほどの、規格外の轟音。

薄暗い鉱山の入り口が、超高輝度の閃光によって一瞬で真昼のように照らし出された。

「ブギィィィィィィィィィィッ!!??」

本来、野生の魔獣は人間よりもはるかに視覚と聴覚が鋭敏だ。

暗闇に慣れていたアーマー・ビーストの目に突き刺さった数百万カンデラの閃光と、脳を揺らす170デシベルの爆音は、強固なミスリルの装甲を完全に無視して、その三半規管と神経を直接焼き切った。

「ギュルルルルッ……!」

凄まじい悲鳴を上げ、アーマー・ビーストの回転が乱れる。

奴は平衡感覚を完全に喪失し、俺たちの数メートル横の岩壁に激突して、仰向けにひっくり返った。完全にパニック状態に陥り、四肢をデタラメに振り回している。

光と音が収まり、恐る恐る目を開けた3人は、ひっくり返って無防備にお腹を晒しているAランク魔獣を見て、ぽかんと口を開けた。

「な、なんだ今の凄まじい光と音は……!? 魔法の詠唱も無かったぞ!?」

「私の目をえぐり出そうとしたの!? アレン、あんたなんて危ない魔道具を持ってるのよ!」

驚愕する大人たちに向かって、俺は父さん譲りの『黒鋼の剣』をビシッと突きつけた。

「驚いてる暇はないよ! 奴の装甲はまだ健在だ! みんな、僕の指示に合わせて!!」

13歳の少年の号令。

しかし、その声には、圧倒的な危機をたった一つの機転で覆した『リーダー』としての確かな重みがあった。

キャルルがニヤリと笑い、トンファーを構える。

「いいわよ、リーダー。指示を出しなさい!」

「キャルル! 奴のお腹の装甲の『一点』に、防御を無視する打撃を打ち込んでヒビを作って!」

「了解! 兎の足癖の悪さ、見せてあげるわ!!」

キャルルがマッハの速度で跳躍し、無防備な魔獣の腹部に落下しながらトンファーを突き立てる。

「月影流――『破衝撃』ッ!!」

装甲の表面ではなく、内部に衝撃を通す極秘の打撃術。

硬度を誇るミスリルの装甲の中心に、ピキッ……と、目に見える小さな亀裂ヒビが走った。

「ルナ! 奴が起き上がらないように、四肢を拘束して!」

「任せてちょうだい! 『大地のバインド・ルーツ』!」

ルナの杖から緑色の魔力が放たれ、鉱山の地面から極太の植物のツルが次々と生い茂る。

それはもがくアーマー・ビーストの四本の足を幾重にも縛り上げ、その巨体を地面に完全に縫い付けた。

「最後だ、イグニス! キャルルが開けた亀裂に向かって、全力の『イグニス・ブレイク』を叩き込め!! 火は吹かなくていい、お前の最強のパワーだけを信じるんだ!!」

「ガァーッハッハッハ! 任せとけぇアレン! 俺様の力、特等席で見せてやるぜ!!」

イグニスが背中の翼を羽ばたかせ、鉱山の天井スレスレまで飛び上がる。

全身の筋肉が爆発的に膨張し、両手斧に赤い闘気が限界まで収束していく。

「消し飛びやがれぇぇっ!! 『イグニス・ブレイク(極)』ォォォォッ!!」

イグニスの巨体が、赤い彗星となって落下する。

狙い違わず、キャルルが作った装甲の亀裂のド真ん中へ、規格外の重量と速度が乗った両手斧が直撃した。

ガァァァァァァァァンッ!!!

パリィィィィィィィィィィィンッ!!!!

ミスリル鉱山全体を揺るがすような大音響と共に、Aランク魔獣が誇る絶対防御――ミスリルの装甲が、まるでガラス細工のように木っ端微塵に砕け散った。

「ギ、ギギィィィ……ッ」

装甲を失い、生身の肉体を晒して痙攣するアーマー・ビースト。

俺たち問題児パーティーの、完璧な連携攻撃が突き刺さった瞬間だった。

「よしっ……!!」

俺は『黒鋼の剣』を強く握り直し、大きく息を吸い込んだ。

装甲は剥がしたが、Aランク魔獣の生命力は凄まじい。確実に息の根を止める最後の一撃が必要だ。

(父さんの闘気と、母さんの聖属性魔法……僕の、持てるすべてを!)

俺の体から、金色の『聖なる光』と、赤黒い『闘気』が同時に立ち昇り、黒鋼の剣の刀身へと絡みついていく。

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