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第四章 勇者の息子!その名はアレン!

帝都アルクスの中央にそびえ立つ、ルナミス大教会。

ステンドグラスから差し込む荘厳な光の下で、俺――アレン・鍵田カギタは、緊張で心臓をバクバクさせながら女神像の前に膝をついていた。

今日は俺の13歳の誕生日。

この世界において、13歳は大人の仲間入りを果たし、女神から己の才能を示す『スキル』を授かる【神託の儀】を迎える重要な日だ。

背後からは、見守ってくれている両親の気配を感じる。

かつて絶望の暗黒竜を打ち倒し、世界を救ったS級英雄である父さん(リュウ)と、最強の聖女である母さん(セーラ)。

俺は幼い頃から、二人の冒険譚を聞いて育ってきた。いつか僕も、父さんたちみたいに誰かを助けられる本物の勇者になりたい。そう強く願って、剣の素振りと魔法の修行を欠かしたことはない。

(……大丈夫だ。僕の体には、最強の二人の血が流れてるんだから)

「――女神よ。この若き命に、大いなる祝福と導きを与えたまえ」

年老いた神父様が厳かに祈りを捧げ、俺の頭上に純白の『ステータスプレート』を掲げた。

直後、女神像から溢れ出した眩い光が俺の体を包み込み、プレートに次々と文字を刻み込んでいく。

【剣術・適性S】

【聖光魔法・適性S】

「おおっ……! さすがは英雄リュウ様と聖女セーラ様の御子息! 剣と魔法、双方にS級の適性を持たれるとは!」

神父様が興奮気味に声を上げ、背後で母さんが「よかったわね、アレン!」と嬉しそうに両手を合わせるのが見えた。

僕もホッと胸を撫で下ろした、その時だった。

ピカァァァァァァッ!!

プレートが、先ほどとは比べ物にならないほど強烈な虹色の光を放ち始めたのだ。

「な、なんだ!? まだ何か刻まれるぞ!?」

「こ、これは……何百万人に一人と言われる、規格外の異能……ッ!!」

神父様の手がガクガクと震え、プレートに刻まれた最後の文字を読み上げた。

【ユニークスキル:ランダムボックス】

「ら、らんだむぼっくす……?」

俺は首を傾げた。

剣術や魔法ならわかるが、全く聞いたことのない響きのスキルだ。神父様も、母さんも不思議そうに顔を見合わせている。

「おいおい、なんだか面白そうなスキルが出たじゃないか」

腕を組んで見守っていた父さんが、ニヤリと笑いながら前に出てきた。

「父さん、これって強いスキルなのかな?」

「さぁな。名前からして『箱の中から何かをランダムに取り出す』能力みたいだが。……アレン、試しにここで一回、使ってみろよ」

「う、うん。わかった」

父さんに促され、俺は目を閉じ、自分の中に芽生えた新しいスキルの感覚に意識を集中させた。

箱。箱の中から、何かを掴み出すイメージ。

(こいっ……! 僕の、伝説の勇者の武器……ッ!!)

俺が右手にグッと魔力を込めると、空間が小さく歪み、空中に小さな光の箱が出現した。

神父様が息を呑み、母さんが期待に目を輝かせ、父さんが身構える。

光の箱が弾け、その中から俺の右の掌にポトリと落ちてきたのは――。

ポンッ。

「……え?」

『ぷきゅっ』

俺の手の中に現れたのは、聖剣でも、魔導書でも、伝説の防具でもなかった。

それは、手のひらサイズの、つるんとした黄色い『鳥の形をした何か』だった。

お腹の部分を押すと、気の抜けた音で「ぷきゅっ」と鳴る。

「……黄色い、鳥さんの人形……?」

「あはは、アレンってば可愛いスキルを貰ったのね!」

ポカンとする俺と、クスクスと笑う母さん。神父様も「はて、なんの魔道具でしょうか……?」と首を捻っている。

だが、この教会の中でたった一人だけ。

かつて神をも斬り捨てた最強の英雄(父さん)だけが、俺の掌にある黄色い鳥を見て、顔面を真っ青にしていた。

「……おい、嘘だろ……?」

「父さん? これ、知ってるの?」

俺が黄色い鳥を差し出すと、父さんは額から滝のような冷や汗を流し、ガクガクと震える指でそれを指差した。

「ま、間違いない……俺の故郷の……『地球』の風呂に浮かべるおもちゃ(アヒル)じゃねぇかぁぁぁぁぁっ!?」

「ええっ!? ちきゅう!?」

「な、なんですかその『あひる』というのは!?」

静寂に包まれていた教会に、父さんの絶叫が響き渡る。

僕のユニークスキル【ランダムボックス】。

それは、僕の父さんの故郷である『地球』という異世界の品物を、完全にランダムで呼び出してしまうという、とんでもないハズレ……いや、前代未聞のギャグスキルだったのだ。

ぷきゅっ。

俺が力加減を間違えて握りしめると、アヒルが再び間の抜けた音を立てた。

こうして、俺の13歳の誕生日は、勇者への第一歩というよりは、なんだかとても締まらない形で幕を開けたのだった。

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