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第二章 ハンバーガー革命

ポポロ村を襲ったレッドオークの討伐から数日後。

俺は帝都アルクスにあるルナミス教会の孤児院、その一室で深々とため息をついていた。

「……マジかよ。維持費バグってだろ、この武器」

机の上に置かれているのは、あの傲慢なボボッツ男爵が失禁と共にポロリと落としていった15万円の特級兵器、『魔導銃口剣マギ・ガンブレード』だ。

その無骨な鋼鉄の銃身に、俺はこっそりとスマートフォンのカメラレンズを向けていた。

『ピピッ。スキャン完了。……マスター、残念ナオ知ラセデス。先日ノ戦闘デ発動シタ【ファイナルモード(焦熱灼刃)】ノ負荷ニヨリ、内部ノ魔力伝導回路ガ完全ニ焼キ切レテオリマス。現在ハタダノ重タクテ切レナイ鉄ノ棒デス』

「やっぱりか……。直せるか? 賢者君」

『修理手順ハ構築可能デスガ、専用ノ魔導部品ト、一発5000円ノ特級カートリッジ6発ノ再装填ヲ含メルト……最低デモ【200万円】ノ費用ガ掛カルト推測サレマス』

「200万!? 本体が15万なのに!?」

思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。

いくらゴブリン討伐で8万円稼いだとはいえ、200万円は今の俺にはポンと出せる金額ではない。やはり貴族の道楽武器、ランニングコストがエグすぎる。

部品を買う金が貯まるまで、こいつはしばらく押し入れで封印だな。

諦めて銃口剣を布で包み、俺は部屋を出て一階の食堂へと向かった。

そろそろお昼ご飯の時間だ。今日も俺が腕を振るって、子供たちを喜ばせてやろう。

そう思って厨房の扉を開けたのだが――。

「……えっ?」

食堂の空気は、お通夜のように重く沈み込んでいた。

長い木テーブルに座る孤児の子供たちの前には、具がほとんど入っていない薄い塩水のようなスープと、石のように硬そうなコギムギパンの欠片がポツンと置かれているだけ。

その配膳をしていたセーラさんは、ひどく思い詰めたような顔をして、今にも泣き出しそうに唇を噛み締めていた。

「セーラさん、これ……どうしたんですか? 今週の食材は、一昨日ギルドの帰りに俺が市場でたくさん買ってきたはずじゃ……」

俺が尋ねると、セーラさんはビクッと肩を震わせ、申し訳なさそうにうつむいた。

「りゅ、リュウさん……ごめんなさい。実は今朝、教会の司祭様がいらっしゃって……孤児院の食料庫にあった備蓄を、すべて『没収』されてしまったんです」

「没収!? なんで教会が、自分んとこの孤児院の飯を取り上げるんだよ!」

「孤児院への支援予算を、今月から『ゼロ』にするという決定が下されたそうです。没収された食材は、これまでの未払い分の利子として持っていくと……」

無茶苦茶な理屈だ。孤児院の運営資金をいきなり打ち切るなんて、子供たちに飢え死にしろと言っているのと同じではないか。

「司祭様が言うには……ボボッツ男爵様から、教会の上層部に強い圧力がかかったらしくて……っ」

セーラさんの言葉に、俺は眉間を寄せた。

ボボッツ男爵。あのポポロ村でレッドオークから逃げ出し、お漏らしまでした無能貴族か。

「あの男爵、ポポロ村から逃げ帰った後、騎士団に『平民の冒険者と教会のシスターに嵌められ、我が家宝の銃口剣を盗まれた』と嘘の被害届を出したそうなんです……。教会は貴族とのトラブルを避けるために、私を孤児院の責任者から外そうとしていて……」

ギリッ、とセーラさんが修道服のスカートを強く握りしめる。

その白い手には、ポタポタと悔し涙がこぼれ落ちていた。

「全部、私のせいです……っ。私が男爵様の誘いをキッパリ断ったりしたから、子供たちにまでこんな嫌がらせを……っ!」

『ぐきゅるるるるる……』

静まり返った食堂に、お腹を空かせた子供たちの悲しい虫の音が響いた。

誰も文句を言わず、ただ我慢して薄いスープをすすろうとしている。

(……ふざけんなよ。あのクソ男爵)

自分の失態を隠すために嘘をつき、その腹いせで孤児の飯を奪う。

底の底まで腐りきった貴族のやり口に、俺の中の『お人好し』の導火線にボワッと火がついたのがわかった。

「……セーラさん、顔を上げてください」

俺はセーラさんの肩に手を置き、力強く言った。

「泣く必要なんてないですよ。教会上層部が予算を打ち切った? 男爵が圧力をかけた? 結構なことじゃないですか」

「え……?」

涙目で俺を見上げるセーラさんに、俺は不敵に笑いかけた。

「あんな腐った連中からの小銭(支援金)なんて、こっちから願い下げです。金がないなら、俺たちが稼げばいい。それも、教会の連中が束になっても敵わないくらい、莫大な『日本円』をね」

経済学部で学んだ知識と、現代日本のジャンクフードの暴力的なまでの美味さ。

そして俺には、最高の調理器具(武器)と、万能のAI(賢者君)がついている。

「リュウさん……でも、どうやって……?」

「孤児院の厨房、俺に預けてくれませんか? 絶対に、子供たちを毎日腹いっぱい食えるようにしてやります。帝都中の金貨(一万円札)を、ここに集めてみせましょう」

男爵の姑息な逆恨みに対する、俺の反撃。

それは武力ではなく、圧倒的な『経済力』と『美味い飯』による帝都支配の始まりだった。

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