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EP 11

「ええい、平民の冒険者ども! 慌てるな! この『ボボッツ男爵』が討伐隊の指揮をとってやる!」

ギルドの階段から偉そうに見下ろしてくる小太りの男、ボボッツ男爵。

そのギラギラと脂ぎった顔には、貴族特有の傲慢さが張り付いている。そして何より目を引くのは、彼の腰に吊るされた鈍く光る機械仕掛けの剣だった。

「見ろ、あの剣……。柄のところに回転式の弾倉シリンダーがついてるぞ」

「帝国の最新鋭兵器、『魔導銃口剣マギ・ガンブレード』じゃねぇか! 貴族や高級将校しか持てないって噂の……!」

「本体だけで15万円、弾一発でも数千円は吹っ飛ぶ金持ちの道楽武器だぞ。なんであんなもん、討伐隊の指揮官が持ってんだよ」

周囲の冒険者たちがヒソヒソと囁き合う。

15万円。俺の財布に入っている全財産の数倍の価値がある武器だ。

「フン! この銃口剣の恐ろしさを知っているなら話は早い! 貴様らは私の盾となり、ポポロ村のオークどもを駆逐するのだ! 手柄はすべてこの私のものだがな、ガハハハハ!」

あまりの理不尽な宣言に冒険者たちが顔をしかめる中、ボボッツ男爵の卑しい視線が、俺の隣に立つセーラさんでピタリと止まった。

「おお……! そこにいるのはルナミス教会の美しいシスターではないか! なぜお前のような高嶺の花が、そんなパーカー姿の薄汚い平民……しかも、昨日『魔力ゼロ』と判定されたEランクのゴミなどと一緒にいるのだ!」

ボボッツが鼻で笑いながら、俺を指差して見下してくる。

「私のもとへ来い、シスター! この銃口剣と私の財力があれば、お前など一生養って――」

「お断りします」

セーラさんは、一切の躊躇なく、冷ややかな声でボボッツの言葉を遮った。

いつもは優しくて乙女なセーラさんが、俺を庇うように一歩前に出て、白銀の杖をドンッと床に突き立てる。

「リュウさんは、魔力がなくても誰よりも強くて頼りになる、私の大切なパーティーメンバーです! 貴方のような、お金と身分だけで威張っている方とは格が違いますっ!」

「な、なんだと……!? この私に向かって……!」

顔を真っ赤にして激昂するボボッツ。

俺はセーラさんの肩にポンと手を置き、「大丈夫ですよ」と微笑みかけた。そして、パーカーのポケットの中で、こっそりとスマートフォンのカメラレンズをボボッツの腰の『銃口剣』に向けた。

(頼むぞ、賢者君。あの高そうな武器をスキャンしてくれ)

『ピピッ。対象ヲ捕捉。帝国式・魔導銃口剣マギ・ガンブレードノ外装オヨビ内部構造ヲ透視スキャン中……完了シマシタ。6発装填ノシリンダー機構、魔力伝導回路、オヨビ限界突破モード【焦熱灼刃ヒート・ブレイズ・エッジ】ノ発動シーケンスヲ、マスターノ脳内ニ転送シマス』

その瞬間、俺の脳内に【武器使い】のスキルを通じて、あの銃口剣の『完全な設計図と最適解』がインストールされた。

手にも持っていないのに、重さ、重心、引き金の重さ、反動の殺し方まで、まるで何十年も使い込んだ愛機のように理解できる。

(……なるほど。あれ、すげぇロマン武器だけど、扱うには相当な腕力と技術がいるぞ。あんなブヨブヨの男爵に、反動が抑えきれるのか?)

俺が内心で呆れていると、受付嬢のミリアさんがパンパンと手を叩いて場を制した。

「い、言い争いはそこまでです! ポポロ村への救援部隊、すぐに出発してください! ボボッツ男爵様、指揮をお願いいたします!」

「フン! 覚えておれよ平民! 貴様らなど、最前線でオークの餌食にしてくれるわ!」

ボボッツは捨て台詞を吐き、討伐隊の先頭に立ってギルドを出て行った。

俺とセーラさんも顔を見合わせ、深く頷いてからその後を追う。目指すは東の辺境、ポポロ村だ。

   ◆

帝都から馬車と徒歩で急行すること数時間。

森を抜けた先に広がるのどかな農村『ポポロ村』は、黒い煙と絶望の悲鳴に包まれていた。

「ブヒィィィィッ!!」

「ギャハハ! 村の食い物は全部俺たちのモンだ!」

豚の顔に筋骨隆々の巨体を持った魔獣、オーク。

それが数十匹という異常な規模で群れをなし、村の柵を破壊して家屋を荒らし回っていた。逃げ惑う村人たちに、オークの粗末な棍棒が振り下ろされようとしている。

「ひぃっ……! あ、あんなに数が多いとは聞いておらんぞ!?」

村の惨状を見たボボッツ男爵は、馬車の上で顔を青ざめさせ、ガチガチと歯を鳴らした。完全に腰が引けている。

「おい、平民ども! 早く行け! 私の盾となって戦え! 私はここから全体の指揮をとる!!」

そう言って、ボボッツは後方の安全な場所から一歩も動こうとしない。

他の冒険者たちもオークの数に圧倒され、足が止まっていた。

「……セーラさん」

「はい、リュウさん!」

ボボッツの命令など無視して、俺は腰から自作のスリングを引き抜き、石をセットした。セーラさんも白銀の杖を強く握りしめ、魔力を高めている。

「Eランクの底力、見せてやろうぜ」

俺たちは誰よりも早く、地獄と化したポポロ村の最前線へと飛び込んでいった。

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