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人工的な星を眺めて

夜が来て、僕は机に向かって頬杖をついていた。明日で隔離生活が終わるのだと思うと何だか不思議な気持ちになった。このまま永遠にこの生活が続いて行くんじゃないかという気さえした。何だか落ち着かずに本棚から小説を出してパラパラとめくってみたのだけれど、もう一度じっくり読みたいという気にはなれなかった。小説を本棚に戻した時に、上に置いてある箱が目に入った。一昨年の冬に買って、数回使っただけでしまい込んでいた家庭用のプラネタリウムだった。手に取って下ろしてみると箱にはうっすらと埃が積もっていた。


部屋の電気を消してスイッチを入れると、アパートの天井に人工的な星空が映し出された。天の川を中心として無数の星が浮かび、時計回りにゆっくりと回転し始めた。僕はそのクオリティの高さに改めて驚きながら、ソファーに深く座り込んだ。子供の頃は、一人で満天の星空を眺めるのが怖かった。きっと無数の光に見下ろされて、自分がこの世界にたった一人でいるような気がしたからだと思う。そしてそれから数十年が過ぎて、僕はまた一人で星空を眺めていた。あくまでも人工的な星たちではあったけれど。


高校生の頃に、こんな風に満天の星を眺めたことがあった。高三の冬の夜に、綾香と二人で山を歩いて星を見に行ったのだった。山奥にある高校だったから、辺りには明かりなんてほとんど無かった。凍てつくような寒さの夜で、雪が一面に辺りを覆いつくしていたのを覚えている。暗い森の中を抜けると開けた場所に出て、圧倒的な数の星たちに出迎えられて僕らは文字通り声を失った。それから二人で雪原に大の字になって横たわり、凍えながら冬の夜空をずっと眺めていた。その時のことを思い出してみたら、今ここにある孤独は大分薄れて行ったような気がした。


自分て本当にどうしようもなくちっぽけで無力な存在なのだと、改めて感じずには居られなかった。どんなに無駄にあがいてみてもその事実は変えようがないのだ。古代の人々は毎日こんな風に無数の星たちを眺めていたから、きっとその事実を忘れるなんてあり得ないことだったのだ。人工的な星たちの輝きを眺めているうちに僕は段々と眠気に襲われて、ソファーに横になって眠り込んでしまった。

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