晴れやかな日に
夢の中で、僕は結婚式に参列しているようだった。それほど大きな規模のものではない。両家の親族や友人を合わせてもせいぜい50人程度だろう。僕らは並べられた椅子に座って新郎が一人で立っているのを眺めていた。周りの人たちの顔はぼんやりとしていて、話している声は上手く聞き取れなかった。そのうちに式場にはカノンが流れて、脇に立っていたバイオリニストが演奏を始めた。それは卒業式で流れていたら眠ってしまいそうなくらい優しい演奏だった。やがて後ろのドアが開く音がして、父に手を引かれた彼女が入場してきた。結婚式は女性が人生で一番輝く日だとよく言われるけれど、ウエディングドレスに身を包んだ彼女は、確かに今まで見てきた中で一番美しかった。
彼女は中央通路をゆっくりと進んで新郎の隣に立ち、結婚式が始まった。讃美歌が流れ、神父に促されて二人は誓いの言葉を交わした。それは現実世界で何度も見てきたお馴染みの光景のはずだった。けれどその時、僕の心はいつになく震えていた。まるで彼女の心の震えが僕に乗り移ってしまったみたいに。もしかしたらこの10日間の交流を通じて、僕らは本当の意味で一つになっていたのかも知れなかった。同じ卵子から産まれて、違う世界で生きる二人の人間。でもその小さな式場の中では、彼女の心は僕の心でもあった。
司会の女性が式の終わりを告げた時、新郎新婦が参列者に向かって深くお辞儀をした。彼女が顔を上げた時、偶然僕らの目が合った。それは僕たちが夢の中で初めて見つめあった瞬間だった。その時彼女はまるで懐かしい友人に出会ったみたいに、頬を緩めて小さく眉を上げた。そのとたん、僕の体に電流が流れて時が止まったような気がした。でもそれはほんの一瞬の出来事だった。彼女はすぐに新郎の方に向き直ると、彼の手を取って一歩を踏み出した。
彼女が新郎にエスコートされて式場を出る時、僕は自分が拍手をしながら泣いていることに気が付いた。涙はどこからともなく流れてきて、頬を伝ってスーツを濡らした。言葉で表現できる感情を超えた「何か」がそこにはあった。2人が式場を出ると、両側に立っていた係の人がゆっくりとドアを閉めた。参列者たちの拍手は、式場にいつまでも鳴り響いていた。




