第573話 らのくんはお好きですか? 2
「……」
「……」
薄暗い個室で、男女が二人向かい合っていた。
「……なに?」
「……」
らのくんは暮石の首筋を撫でる。
「あっ……」
暮石はらのくんのされるがままに、首筋を預ける。
らのくんは暮石の首にそっと手を添えた。
「……」
「……」
らのくんはゆっくりと手に力を入れ始める。
「なぁに?」
暮石は少しずつ苦しそうな表情になっていく。
「どう?」
「どう、って……」
らのくんは適度な力を入れたまま、暮石の首元を押さえ続ける。
「気持ち良い?」
「気持ち……」
暮石は苦しそうな表情でらのくんを見る。
「気持ち良く……ない」
「本当に?」
「……」
暮石が推しと慕ってやまない男に、薄暗い個室で首元を押さえられている。
その異様な状況に興奮しては、いた。
らのくんの指が暮石の首筋に一本、また一本と吸いつく。
「らのくんって変態?」
「どう見える?」
「どう、って……」
暮石はらのくんから目を逸らした。
「……エッチ」
「何か問題でも?」
らのくんは暮石に近づいた。
「……」
らのくんは暮石の耳元まで顔を近づける。
「やぁだ」
暮石はらのくんから顔を背ける。
「ひゃんっ」
らのくんは暮石の耳を舐めた。
暮石は眉を顰め、らのくんを睨みつける。
「言いたいことでもある?」
「だって、急に舐めるから……」
らのくんに睨みを聞かされ、暮石はトーンダウンする。
「なに? 俺のこと嫌いなの?」
「別にそんなじゃないけど……」
「……」
らのくんは暮石の耳元に近づき、
「俺の言うこと聞けよ」
命令するかの様な口調で、そう囁いた。
「――――」
暮石は恍惚とした表情で、らのくんからの言葉責めを受ける。
「ふたばちゃん?」
「なぁに」
らのくんが暮石の耳にふっ、と息を吹きかける。
「ひゃんっ!」
暮石はその場に崩れ落ちた。
暮石は涙目でらのくんを見上げる。
「エッチ! 変態スケベ!」
ぽかぽかと暮石がらのくんを叩く。
「はは」
らのくんはその場で小さく笑う。
「ね」
らのくんは背後から暮石を抱きしめる。
「力抜いて」
「なぁに」
らのくんの身体が暮石を覆いつくす。
らのくんの指が暮石の首筋を通り、
「やぁだ」
そのまま暮石の身体をまさぐる。
「止~めて」
暮石の服の中に手を入れ、直接素肌を撫で回す。
「大丈夫だって、誰も見てないから」
薄暗く狭い個室に、男と女が一人ずつ。
外から見られないような死角に二人移動して、席に座っている。
「……力抜いて」
「やぁだ」
らのくんが暮石の太ももを触る。
「触って良いなんて言ってない」
「触っちゃ駄目とも言ってないけどね」
薄着のため、防御力が低い。素肌が丸見えになっている。
暮石の太ももが、らのくんの手によって、好き勝手にされる。
「むちむちだね」
「もう~」
暮石がらのくんを叩く。
「むちむちじゃない!」
「良いじゃん、むちむちで」
らのくんは暮石の太ももからふくらはぎにかけて、丹念に、それでいてゆっくりと撫でる。
「マッサージしますよ~」
「マッサージいらない」
らのくんは暮石の脇腹をくすぐる。
「あはは、あはっ」
「くすぐっちゃうぞ~」
暮石はその場で小さく暴れる。
「くすぐったいって~」
「え~?」
らのくんはひとしきり暮石の脇腹をくすぐり、胸に移行する。
「ん……」
らのくんは暮石の胸に手を乗せた。
「発育良くない?」
「皆こんなもんだよ」
「ふたばちゃんの友達も?」
「うん」
「ふ~ん」
らのくんは半眼で暮石を瞥見し、胸を何度も揉み、そのまま暮石の身体を撫で回す。
「ん……」
暮石は時折、声を殺す。
「じゃ」
らのくんは暮石の身体をさんざまさぐった後、暮石のパンツに手をかけた。
「だぁめ! ここは本当に駄目!」
「何が?」
らのくんが暮石のパンツを脱がせる。
「本当にだぁめ!」
暮石はらのくんに抵抗し、パンツを履きなおす。
「俺のこと推してるんでしょ?」
「推してるけど、それとこれとは話が違う!」
「あ~あ、俺ふたばちゃんのこと嫌いになっちゃうよ?」
「~~~~~」
暮石は顔を真っ赤にしたまま手で顔を隠す。
「ふたばちゃんは処女?」
「……」
暮石はこくり、と頷いた。
「まだシたことないんだ」
らのくんは再び暮石のパンツに手をかけた。
「待って、本当にだぁめ」
暮石は何度も抵抗する。
「何がイヤなわけ?」
らのくんは若干の苛立ちを声ににじませ、暮石に問い尋ねる。
「だって……」
怒りで青筋を立てているらのくんの表情に、暮石はシュンとする。
「ここそういう場所じゃないし、見られたくない……」
暮石は自分の手で自分の体を抱いた。
「ふ~ん……」
らのくんは立ち上がり、指をくるくると回しながら、その場を回り始めた。
「……」
そしてらのくんは暮石の前でしゃがみ込み、顔を近づけた。
「ふたばちゃんってそういうこと気にする子? 俺失望しちゃったなぁ」
「……」
暮石はうつむいた。
「別に外から見える場所でもないんだし、良くね?」
「……」
暮石はうつむいたまま、何も言わない。
「そんな細かいこと気にしてちゃだめだよ、ふたばちゃん。ブロックしちゃうよ?」
「……」
らのくんは再び暮石に近寄った。
「やぁだ」
「だ~め」
らのくんは暮石の上着を脱がせる。
「……」
「結構大きいじゃん」
暮石の服が徐々に脱がされていく。
下着一枚まで暮石は服を剥ぎ取られた。
「見られたくない」
「かわいいよ」
らのくんは暮石の頭を撫でる。
「かわいいよ、ふたばちゃんは」
「ん~……」
らのくんは再び暮石のパンツに手をかける。
「やぁだ」
「だ~め」
「やぁだ」
「だ~め」
らのくんと暮石の一進一退の攻防が何度も何度も繰り返され、
「おい!!」
二人の情事の最中、カラオケの扉がバン、と勢いよく開かれた。
「何やってんだ、お前!」
鳥飼あかねその人がカラオケルームに入り込み、らのくんの頬を殴りつけた。




