第三話
時進んで放課後。
昔懐かしむ気持ちを抑えながらその場の同級生たちに紛れ、私は何とか放課後を迎えた。
何とか何とかと言いつつもなかなか過去に戻るというのは骨が折れることであった。
大学生になるまでに私が経験してきたことといえばスポーツに取り組んだり、空手道場に無理やり通わされるも続かずとにかく生半可な生き方をしてきたものだから、そもそもこのころの自分がどんなものであったかなんて大事なことも忘れているのだ。
ちなみに私が時間の逆行を自覚したのは二限目、こくごの時間であったのだが、気を抜いていたせいで
およそ七才とは思えないような知識や回答を見せてしまってほんとずっと怪しまれてました。
何なら給食の時間も一日前まで好き嫌いが激しくて残してばっかりだった奴が全部食べてしまうんだから、友達や先生からずっと驚かれていたものだ。
全く、時間をさかのぼれたのは何よりもありがたいことだがこれでは先が思いやられる。
と、それよりも今は時間がないんだった。
ステータスにあるように私は体力がほんとにかけらもないのである。
これでは私の趣味のためにも、今回こそやっておきたいことのためにも体を鍛えておかなばならない。
と、言うわけで家に帰る前に校庭を走ろうかと思ったんだが...ダメでしたね。
校則ではちゃんとした理由なしには居残りができない。だから一度家に帰って家族に一言言わなければ。
はぁ...気が重い。
別に忘れていたわけではないんだがこのころの親、特に親父は恐ろしいまでに日常的に暴力を振るうクソ野郎だった。やれ鍋で炊いた白米に芯が残ってるだの、レトルトパウチを湯煎したら環境ホルモンがどうの体に悪いからって一口も食わずに切れ散らかしたり...。
正直トラウマがよみがえる。
あの野郎は母さんを半ば洗脳させ、毎日DVばかり。
私が小学校を卒業するころには等に離婚し、今では新しい旦那さんと幸せに暮らしている。
正直難しい所だ。あいつに復讐するためには最低でも離婚するまで動けない。
だが、見て向ぬふりをする必要はない。
裏でうまく話が進むように話を持っていけばいいだけのことなのだからな。
と、少し重めな話をしていたらもう家についてしまった。
無理もないか。学校から家まで一分もかからないからね。
さ、演じなくては。
私は7才の少年。
一人称は「たっくん」だったか。....恥ずかしいわ。
ま、さっさと入ろう。
玄関の扉を開けて中に入るとそこには確かに懐かしい景色が広がっていた。
逆行前にはゴミや書類が山積みになり、テーブルとしての役目を果たせなくなっていたものだが、そこにはランチョンマットが四人分敷かれていた。
ゴミなど埃程度のものしか目に入らない程度にはきれいで、つい半日前まで狭く感じていたリビングは家族四人集まっていても広く感じられるほどだ。
わからないな、もしやそう感じるのは私の体が小さいからだろうか。
私が中学2年になったころに家出して母さんのもとに行った姉も私を出迎えてくれる。
柄にもないのに、ただ体力を鍛えるための一言を伝えるために立ち寄っただけなのに涙がこみ上げる。
「お帰り」
そう言ってほほ笑む母さんの姿に私はも涙腺というものが崩壊してしまった。
ただ一言、「ただいま」と返すのも困難なほどに涙があふれ泣きじゃくる私を、母さんは心配した。
当然だ。帰るなり息子がいきなり泣き出すのだから混乱まっしぐらだろう。
私も私だ。まいど母さんに会いに行くたびに大嫌いな糞親父に罵倒されながら車で100km近くを移動し、心はつねに削れていたというのに、なのにいま、苦労しなくても会えるのだ。
それからしばし、私は泣き続けた後で心に誓った。
糞親父ただ一人を除く家族三人で、いまこの家で元気に暮らせるこの時間を失くしてしまってはダメだ。
私が常日頃から、時間をさかのぼって小学生のころから人生をやり直したいと願っていたのはなぜかを思い出せ。
それは私が人生を幸せにするためだ。
今回こそ後悔なく、自分の選択が正しかったんだと思えるように生きるんだと。
そう、深く誓った。
つづく




