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第四話

時は少し進み、私は親の許可を得て再び学校の校庭へと戻っていた。

当たりにはまばらに他の児童たちが遊んでおり、そこにポツンと一人でいるのは些か怪しさがあるかもしれないが、それはあくまでも私の妄想。

この場に居るのはみな小学生である。

それも二年生や三年生といった学年ばかりであるから、まぁ何を思われることもあるまい。

私はそんな外聞を気にしている暇はないのだ。


当面の目標として、これから人生を変えていくにあたって越えなければならない壁がいくつかあるのだが、何から始めようか。


その一、勉強が大の苦手であり大学一年生に至るまで一切課題を出さないわ、テストの点数、成績なんてもってのほか。何を上げても問題児の極みみてぇなクソになってしまったので、この難易度が非常に低い今から習慣的に、自ら勉強をするようにせねばならない。

特に、私は今回も六年間を過ごした進学校に進むつもりでいるから、ぼやぼやしている余裕はない。

 「この問題は最優先だな...」


その二、体力だ。これは私が今ここに来た最大の理由である。

スマートフォンが主流になって、だれもかれもがそれに依存し縛られ、果ては日々最高のコンテンツを与えてくれるPCにまで脳を支配されていた私だけれど、今も昔も変わらずとにかく本を読むのが好きである。

故に、前回みたくいつでもどこでも本を読むのは変えないつもりであるが、せめてもの学校が終わってそのあとにできるあまりに時間を体力を鍛え上げてスタミナを強化する時間に当てようと思う。


「これは...最優先だが勉強との両立ができるよな...」


その三、これはここまでの問題の中でも特に難易度が高い問題。


私は小さいころから自分の性別に違和感を持っていた。

名前を確か性同一性障害とでも言っただろうか。

だがそんな思い名前で語るつもりはない。

ただ私は物心がついた時から可愛いものが好きでありとあらゆる可愛いを収集していただけ。

ただ私は可愛い服を着て可愛いバッグをもって街に繰り出したいと思っていただけ。

ただ私は、男であるということに何らかの縛りがあると感じて真の自分になりたいと思っただけ。

ただ、一度しかないと言われ続けたこの人生を最高なものにするために動こうとしただけ。


しかしそれは、ほかでもない自分の父親の力によって阻まれてしまったのである。

その理由は「この家の跡継ぎはお前が~」とか「男と結婚するなんてこの国じゃ無理だ」とか「もう一度本当にそうしたいのかよく考えろ」とか、それは確かに私のことを思っての言葉だったのであろう。

じっさい普通の、幸せな家庭に育った人間にとってはそれがある種のアドバイスか、何かと受け取ることもできたはずだ。


だが私は幼いころからその父親に力によってトラウマを植え付けられ、思考を抑制されてきたかわいそうな人間であった。


まぁ、かわいそうだなんて自分で言うのもどうかしているな。

だが心配はいらない。せっかく12年も時をさかのぼることができたのだ。

怖くないかと言われれば怖いに決まっている。

暴力だって過去のほうが激しかったのだから。


しかし私には家族がいる。味方がいる。頼れる大人が、信頼できる大人が身近にいるのだ。

人を傷つけておきながらそれを愛だと、教育だという人間など早いうちに何とかするだけだ。


こんなところで長話をやめて、そろそろ走ろうではないか。

考えてるうちに準備体操も終わった。


「シリアスな話なんてしないつもりでいたけれど、そうはいかないみたいだね。

でも、これは物語じゃない。人生を変える途中経過を日記にしただけのものだから、なんだってやってしまおう。」


そう無理やり締めて、私は走り始めた。


ーー


15分後。


「きっつ...」


ぶっ通しで校庭をぐるぐると走ってみたのだが、あまりにも体力がない。

大学生のころはランニングが好きで、たまに走っていたこともこの驚きの理由だろうが、これはいけない。


「一旦休むとして...そうだなぁ、五分休んだら筋トレもするか。とはいえそんな激しいのは今ほんとにできないから、腕立てだね」


やりやすさで言えば圧倒的にプランクだけど、正直あれは終わった後倒れ伏せない自信がないからな。

さすがに全身砂まみれで帰ってきては家族が驚くだろう。


ほんのつい昨日まで運動なんて一ミリもやらなかったのだからさすがに限度がある。


「と、もう夕方か...あんまし長居はできないかな...。さ、やろう」


私が始めたのはごく一般的な腕立てだ。深くまで体を沈めて、腰をそらさず上げる。

ただ決めた回数に達するまでぶっ通しでやるのは腰によろしくない


15回ごとの20セットでやるとしよう。

辛いのはわかり切っているが、コツコツやればスラっとした体くらいは手に入れられる。


そうして私は再びトレーニングに没頭した。


ーー

時は進んで10分後、回数が折り返しに差し掛かったころであろうか、背後から声をかけられた。

かなり疲れてきたので予定変更、ちょっと休憩がてら話そうとでも思ったその時だった。


返事を返そうと振り返った直後、顔面にボールが直撃した。


突然の出来事に状況が把握できないまま私は地面に倒れこんでしまった。

しかし先ほどの声、どこかで聞いたことがあるな...

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