アリスと結愛とハートの巨城
yoshino川橋を越えるとそこは美しい庭園が広がっていた。
「凄い…おとぎの国に来たみたい…」
アリスと結愛はハートの国に来て思わずこの声が漏れた。
綺麗に手入れされたその庭園に足を踏み入れたアリス達。
しかしその中にいる人たちは何やら服装が普通のとは一線を画していた。
住人はほぼ同じような服でハート、スペード、ダイヤ、クローバーの紋章がそれぞれ着いており、皆忙しそうに白い薔薇を赤く塗り変えている。
「どいたどいた!」
住人がアリスと結愛を乱暴にどかし、赤いペンキの入ったバケツを揺らしながら走って行った。
「可愛いガール達になんて事するの?この住人達も更生させなきゃだね!」
結愛はハリセンを持ち出す。
「更生更生と言ってたらキリが無いよ、でもみんな忙しそうだよね」
アリスは皆同じ服を着て、白い薔薇を赤く塗り変えている労働に追われている人達を大変そうだなと見守る。
「でもみんなやり方が下手だね、ミーならこんなの一瞬で終わらせるのに!」
ギロッ。
結愛がこう言った途端住人の怒気のこもった目線が結愛に向けられる。
「結愛ちゃん!仕事にケチつけちゃ駄目だよ!謝らないと!」
アリスは慌てて結愛に変わって謝った。
「皆さんごめんなさい、私の友達がとんでもない事を言ったみたいで、ほら結愛ちゃんも謝って!!」
「そ…ソーリー…」
結愛も強制的にだが平謝りをする。
「全く近頃のガキはどう言う教育を受けてやがんだ!!」
住人達は不機嫌そうにするも作業を続ける。
深くため息をつく二人。
「結愛ちゃんいつもトラブルの元なんだから気をつけてね!」
「そ…ソーリー…」
歳下のアリスに説教される結愛。
でも結愛も女子供関係なく同じ服を着せられ白いペンキを赤く塗りかえる作業をやらされているのを見て何とかしてあげたい気持ちになった。
そんな中で作業をしている住人達が何やら深刻な会話をしているのを耳にするアリス達。
「また近所の女の子が処刑されたみたいだよ」
「風邪で休んだくらいで首を刎ね落とすなんて…こないだも作業間違えただけで処刑されたひともいるし…最近の女王様はどうかしてるよ」
「こんな事誰かが聞いてて密告されたら終わりだぞ!」
住人は再び黙って作業し始めた。
「春兎さんの言う通りだね…私とんでもない使命を握らされたのかも…」
アリスは鍵を握っては託された使命の重大さに心に穴が開くような一抹の不安が過る。
アリスの深刻な表情を見た結愛はアリスの力になってあげたいと改めて思った。
「大丈夫だよアリスちゃん!!」
結愛はアリスの小さな肩に手をやる。
「ミーもついている!!」
結愛は自信満々に言ってアリスを励ますがアリス的には頭に花を咲かせてほおにナルトマークを彩り藤子○二雄調の顔をヘタクソにしたような結愛の姿が見えた。
「やっぱり結愛ちゃん…他の人より、先ず自分を更生させようね」
「ホワイ?何で?」
アリスの言葉に我解せず、結愛は目を点にして間抜けな声で疑問する。
「貴女達!今日は女王様が来られる日だと言うのになに派手な服着て駄弁ってるの!この服に着替えて貴女達も手伝いなさい!」
その時向こうからふくよかな体型の婦人が自分と同じ服を持ってアリス達の元に近づいてきた。
服を突き出されるアリス達。
「全くこんな所女王様が見たらタダじゃ済まないわよ!」
婦人はプンプンさせながら仕事に取りかかった。
「ここじゃみんな同じ服で同じ事しなきゃいけないんだね…」
「そうみたいだね…」
そしてアリスと結愛は他の住人と混ざって植えられた白い薔薇を赤く塗る作業を始めた。
ーーー
ペンキで白い薔薇を赤く塗りかえるアリス達。
「見ている側ではわからなかったけど…この作業って結構大変だね…」
「上手くいかない…なんかこの作業イライテッド(イライラする)よ」
この作業をやった事もないので無理は無いが大変な手作業はやった事のない人が見ていてもわからない。
意外に大変で集中力や忍耐力を削られるこの作業にアリス達は苦戦していた。
「ガッデム!なんでミーがこんなチマチマした事しなきゃいけないの!?もうやだ!もう降りるー!!」
「結愛ちゃん落ち着いて!!」
我慢出来なくなった結愛がハリセンを持って暴れだし、アリスがそれを止める。
その時結愛の地団駄がたまたまペンキの入ったバケツに当たり、そのバケツが倒れて白いセメントで固められたアスファルトを赤く濡らしてしまった。
「あ"あ"あ"あ"あ"あ"ーーーー!!!」
ムンクの叫び状態になるアリスと結愛。
そこに煌びやかなドレスを纏った婦人が通りすがってきた。
女王様だ。
見た目の年は20代後半といった感じで赤い髪に顔立ちは整っているが目つきは鋭く魔女といった雰囲気の似合う女性だ。
煌びやかなドレスを羽織っていて光輝く宝石をドレスの一部や肌に飾りつけている。
バケツでひっくり返されたペンキを見てその女王は怒号を上げた。
「なんなのこれは!?犯人出てきなさい!!」
誰も出ないのは当然ともいえよう。
みんな自身の命が惜しいのだ。
どんな生に絶望した者と言えどもこういう状況ではい私です!と前に出るのは難しい。
一人の少女を除いて。
女王は幾分か背の低い結愛を見下ろし、彼女の肩に手をやった。
結愛の肩はビクンと跳ねる。
「やったのはお前かい?」
女王は陰のある表情、低い声で結愛に問い質す。
「みみみミーは……」
結愛は嫌な汗をダラダラと流し、恐怖で土気色の顔、言葉は吃音り、上手く言葉を出すことが出来ない。
「女王様!やったのは私です!!」
その時名乗りを上げたのはアリス。
実際は、結愛が駄々をこねて暴れたのを止めたに過ぎないが結愛に罪が行きそうなのをアリスは黙っていられなかった。
「お前かい!?」
女王はギラッと恐ろしい形相でアリスを睨む。
「アリスちゃん!あれはミーが!!」
結愛がアリスに叫ぶが
「友達は悪くありません!私を捕らえてください!」
とアリスは結愛を庇った。
「ほおっ」
女王は僅かにニヤける。
「兵士達よ!そこの少女二人をひっ捕らえよ!!」
「はっ!!」
するとどこからともなく住人の服装にさらに兜と右手に槍、左手に盾を持った男性達が現れ、アリスと結愛を捕らえて何処かに連れ去った。
「少女二人が捕らえられちゃったよ可哀想に…」
「また若い命が一度に二つ失うとは…」
住人は同情するように囁き合うが結局は赤の他人、住人達はこのまま作業を続けるだけだった。




