アリ結愛と4匹のウサギ達
アリス達が河川敷から上に上がっていったばかりのところに、またうさ耳をつけてボロ服をまとった青年がうつ伏せに倒れている現場に出くわす。
「「これは…事件!?」」
何かイザコザが無ければこの状況に出くわすことはまず無い、その青年は不良っぽいが服はボロボロで道端で倒れている。
辺りもそろそろ薄暗くなってきたのでこのような事も無いとは言えないが普通にここで見てしまうという事はここ辺りはそれだけ治安が悪いのか?
「春兎さん、なんかここヤバイとこじゃないでしょうか?」
アリスは春兎に尋ねる。
アリスや結愛と違って春兎はいたって冷静だ。
「全く、夏兎こんなとこで寝てたら車に轢かれるぞ!」
そのときか細い男性の声が夏兎らしい人体から発せられた。
「め、メシ…」
震えた手が春兎の足元を掴もうと伸ばされる。
空腹のあまり動けないでいるようだ。
「俺はここだ」
春兎は夏兎らしい手を手でガッシリと掴んだ。
「あの、これって…どう言う?」
「ああ、そこの金髪の男は俺の弟なんだ」
春兎はすんなりと答えた。
「「えーーーっ!!」」
一斉に驚くアリスと結愛。
「それより夏兎を食べさせてやらないとな、君達も色々お世話になったし、どうだい?」
アリスは「そんな、悪いです」と手を振りながら断るが「行きます行きます!!」と結愛は犬が餌を前に尻尾を振るように春兎の目前にやってきていた。
「ちょっと結愛ちゃん!」
「いいじゃん、ミー達今日も何食べられるかわかんない状況だし」
それはそうなんだけど…とアリスは自分の財布を覗く。
春兎さんには悪いけど…ここは春兎さんの世話になるしかないかな?
とアリスも判断した。
とりあえず近くの頃合いな食堂に連れて夏兎に適当なものを食べさせる春兎。
夏兎は目前に出された料理をガツガツと食べている。
どれくらい食べてなかったんだろう?
一方の結愛もそれほど食べてなかったというわけでは無いのに夏兎に負けず劣らずの食いっぷり。
「夏兎ほんとによく食うな…」
「結愛ちゃんほんとによく食べるね…」
片方の保護者的立場の人は片方のお子様を目を点にして様子を見守っていた。
「「ぷはーっ食った食ったー!!」」
食器を置いてキラキラした満面の笑みを顔に出して満足する結愛と夏兎。
「あの…春兎さん、ホントにごめんなさい…」
申し訳無さげにアリスは謝るが「良いよ良いよ♪」と春兎は爽やかに答えた。
その時夏兎がマジマジとアリスと結愛を見た。
「どうした?」と春兎。
「兄貴、社会人がこんな子供連れて歩くのって世間の目とかヤバイんじゃないの?」
確かにそうかも…というかこの人、こんな身なりだけど一応常識はあるんだ。
アリスは思った。
一方子供扱いされたのが結愛には癪に障ったようでハリセンを取り出し啖呵を切った。
「シャラップ!アリスはともかくなんでミーが子供なわけ!?ミーはこう見えても女子高生だよ!もうすぐオ・ト・ナ!!」
そう、結愛ちゃんはこれでもアリスより歳上の15歳、アリスが13歳で2歳歳上という事になる、ただ、結愛の子供っぽい言動や行動とアリスの同年代としては凛として落ち着いたアリスと比較して、
アリスの方がお姉さんしなきゃいけない状況になっているが…。
「え!?俺と同じ歳??信じられない…」
夏兎さん、結愛ちゃんと同じ歳だったんだ…夏兎さんの反応もわかる気がするけど…。
「うん、まあそれだけどこの子達は僕の命の恩人なんだ、色々あって落ち込んでいたのを助けてもらった」
春兎は優しい目をアリス達に向けて夏兎に聞かせる。
「え?そそんな、私は何もしてないです、むしろ春兎さんが…!」
アリスが赤面しながら話を覆そうとするが結愛は
「えっへん!もうミーを子供とは言わせないもんね!」
とドヤ顔で胸を張った。
「ふうん…」と夏兎。
「ところで夏兎、ここんとこずっと家帰って来ないそうじゃないか、いつもお腹空かせているなら素直に家に帰ってれば良いのに」
「やだよ、あんな家自由を愛する俺には合わねー!」
「自由ってお前な…」
一方春兎と夏兎のやり取りを聞いた結愛は何か嬉しそうな顔でぶるぶるしている姿が見えた。
「ミーの更生魂の血が騒ぐ!春兎さん!夏兎さんの更生はミー達にお任せください!」
「達って私も?」
「オフコース!アリスだって言ってたでしょ!一人じゃ出来ない事も二人だと出来ると思うって!」
(結愛ちゃん…こういう事だけはちゃんと覚えてるんだ…)
アリスは思った。
「て事で春兎兄さん!夏兎の更生はミー達にお任せして良いんですよね!!」
結愛は春兎に問い質す。
「うーん…」
春兎は考えている。
「更生しなきゃいけないのはアンタだろ」
夏兎が結愛に向けて一言漏らす。
「パードゥン(なにぃ)!?もういっぺん言ってみろ今のは聞き捨てならねぇなあ!!」
テーブルの上に足をドカッと置き喧嘩を売り出す結愛、周りの食器が音を立てて僅かに動く。
周りの客も結愛の甲高い怒鳴り声とテーブルを足で踏みつける音に一線に視線が結愛の方に向く。
「結愛ちゃん!店内で暴れないで!!」
慌てて止めるアリス。
「あっ、にーちゃんだ!!」
「あれ兄貴、二人して何女の子と合コンやってんの?」
その時結愛の挑発に目を向けた少年二人がよく見る顔の二人に気づきやって来た。
「あ、秋兎に雪兎!!」
夏兎が声を上げる。
二人ともうさ耳を付けていて一人は中学生くらいの少年で一人は6歳くらいの少年だ。
「合コンじゃない、二人は僕を助けてくれたからそのお礼と言ったところさ」
春兎が落ち着いた声でアリス達に指差す。
アリスは二人に恥ずかしそうにお辞儀して結愛はドヤ顔して腕を組む。
「ごうこんってなんだ?うまいのか?」
雪兎が秋兎に聞き秋兎はちょっと黙ってようなと手をスッと出す。
「合コンって兄貴達彼女いるだろ、彼女達が知ったら怒るぞ」
秋兎は放つ。
結愛は彼女いるらしい春兎と夏兎の事を聞いて固まる。
「結愛ちゃん?」
アリスは結愛の顔を覗き込む。
その時結愛の目からは大粒の涙が。
「うわーん!!」
結愛は泣き出した。
「あーアニキ女なかしちゃいけないんだー!」
からかう雪兎。
アリスや他の男性陣は何だ突然?という風に結愛に目を向けていた。
(感情の起伏が激しいのは知ってるけど怒ったり泣いたりしてホントに忙しい子だな)
とアリスは結愛をなだめながら思った。
「ぐすんっ、べ、別に泣いたのは春兎さんに彼女いると知ったからと言う訳ではないからね」
「わかったわかった、だから泣き止んで」
(あぁそうなんだ、って訳を話してくれる結愛ちゃんはホントに正直な子だな)
「この際誰でもいいや…Mr.秋兎、ミーと付き合ってください」
「初対面ですけど?てか俺も彼女いるんで」
秋兎は顔をしかめて放った。
(春兎さんといい秋兎さんと良いみんなハンサムだからなあ…彼女いても不思議じゃないかも)
アリスは関心するように四人の兄弟を見た。
「あははっ振られてやんの!」
夏兎は結愛を笑う。
ショックで結愛の体は真っ白になり、目は闇に覆われた。
「ミーこれでも猫柳じゃ一時期読者人気トップだったんだよ…ホントだよ…」
そして誰かを呪うような口調でブツブツと漏らす。
「そうなんだーすごいね、結愛ちゃん可愛いもんね」
アリスはこのままでは面倒な事になるのを知っていたためすかさず結愛を宥めた。
宥めると結愛の機嫌は治るがほっとくとやはり面倒な対応に追われる。
(色々更生が必要なのは結愛ちゃんだよ)
そうしながら心の中でため息を漏らすアリスだった。
「ところで兄貴、また会社が次々と倒産していっているってニュースでやってたけど兄貴のとこは大丈夫なのか?」
と秋兎。
それを聞いた途端春兎の表情がシリアスになる。
「それなんだ…隠すつもりは無かったんだがみんな、落ち着いて聞いてくれ…」
「どうしたんだあらたまって?」
重い口調で語る春兎に夏兎は戸惑う。
「アリスさん、すまないけど雪兎と遊び広場で相手してやってくれないか?」
春兎はまだ幼い雪兎にはこの話は聞かせたくないと食堂の中にある幼児向けの遊び広場に雪兎を連れて欲しいとアリスに頼んだ。
「なんでミーじゃないの…!?」
「結愛ちゃん、話がややこしくなるから終わるまではおとなしくしてようね」
アリスは二人の子供を連れて遊び広場で待機する事にした。
遊び広場にて雪兎の遊び相手をするアリス。
「なあ、親父がどうかしたのか?」
雪兎は突然アリスに聞きだした。
「親父…父さん?私は父さんの事何も言ってないよ?」
「そうじゃないよ、秋にいちゃんがとうさんがどうとか言ってたからさ」
(あ、倒産のことか…)
とアリス、しかし子供相手にはどう答えたら良いのかアリスにはわからない。
「まあ、あれかな?父さんは今日も一生懸命働いてるぞーって言うことかな?」
アリスは誤魔化した。
「ふーん、そうなのか、それよりなんかお話し聞かせてくれよ」
「あ、うん♪」
アリスは雪兎に話を読んで聞かせた。
アリスは雪兎に話を聞かせながら感慨にふける。
(執事さんもよく私に話を聞かせてくれたな、ワガママいって私をモデルにした話を作ってと頼んだ事もあったっけ…)
アリスは[不思議の国のアリス]を雪兎に読んで聞かせた。
「あー面白かった、次は桃太郎聞かせてくれよ!」
「はいはい、ちょっと待っててね♪」
アリスは本棚の桃太郎を探す。
その途中で雪兎がアリスに声をかけてきた。
「そう言えばアリスお姉ちゃん、もう一人のお姉ちゃんがいないんだけどどうしたんだ?」
「結愛ちゃん!?」
アリスは結愛がさっきからいない事に気づく。
そしてよく見ると春兎が夏兎と秋兎に事情を話しているらしいところに結愛が壁に耳を立てて盗み聞きしていた。
「結愛ちゃん!何してるの?」
アリスと雪兎は結愛の元に駆け寄る。
「待ってよ!良いところなんだからさ!」
気になったアリスは結愛と同じく耳を当ててみる。
すると壁の向こうで春兎達の話し声が聞こえてきた。
その内容はシリアスで、到底子供には理解出来ない。
「俺、バイトして一生懸命稼いでやるよ!学校やめてでも…」
拳を握り熱く語る秋兎。
「馬鹿を言うな、お前達にまで苦労をかけたくない!!」
「しかしこのままだと母さんまで働かなきゃならなくなるし…雪兎にも学校行かせてやる事も出来なくなる!」
一方向こう側で話を聞いているアリス達。
「何言ってるのかよくわからない…アリスちゃん分かる?」
「うん…さっきもリストラされて就活していると言ってたよね…あの時の春兎さんは気丈に接してたけど…大人の世界も色々あるって事だよ」
そしてその次に春兎は今回アリス達に取って重大なワードである言葉を放った。
「ハートの女王は税金も上げて自身の為だけに大きなトランプの巨城を作って贅沢三昧、その下で高い税金を払って身を粉にしている俺達の気持ちもわかって欲しいものだよ…!」
その声を聞いた結愛は突然目を光らせ、「ピコーン!!」と言葉を発した。
「ど、どうしたの結愛ちゃん!?」
とアリス。
「ハートの女王を更生させたら徳島も平和になるしミー達も元の世界に帰れる!これはビッグチャンスだよ!!」
春兎達が話を続けている時に「話はすべて聞かせてもらったぁ!!」とピンク色の髪の少女がハリセンを前に突き出しながら正義のヒーローかの如く颯爽と現れた。
「結愛!!?ずっとそこにいたのか!?」
驚く三人のウサギ。
「ど…ども…」
とアリスも遠慮気味に結愛の後ろに立ち、雪兎もピョコっとうさ耳を突き出した後何気もなく現れる。
「そのハートの女王、この鳴海結愛、いやパーフェクト結愛が愛と正義のこもったハリセンで更生させてしんぜよう!!」
結愛はハリセンを右手に正義のヒーローが登場するようなポーズをとって大宣言をした。
「更生ったってお前みたいな小娘に何が出来るんだっ!?」
抗議を上げる夏兎、しかし春兎はこの子なら何とか出来るかも知れないとなんらかのオーラを悟った。
「いや、この子になら何かが出来るかもしれない…」
春兎は希望を見出したような口調で夏兎に放つ。
「な、何言ってんだよ春兄…?」
と秋兎。
「俺はこの子の目を見てわかった…この子にはどんな荒んだ人の心も浄化出来る澄んだ目をしている…にも関わらず強い意志も感じられる…この子ならハートの女王を更生させる事が出来るかも知れない!」
大人ならではの勘で春兎は少女に強い力を秘めているのを感じ、その重大な役目をその少女に託した。
「ハートの女王を更生させるには強い意志と優しさが必要だ…君なら何とか出来るかも知れない、しかし女王は恐ろしく手強い、危なくなったらいつでも逃げるんだよ!」
春兎はその希望を託した少女に手を置いた。
少女の手には金色に光り輝く鍵が。
「この鍵は…?」
「その鍵が君に必要となる鍵だ!大事に持っててくれ!」
と春兎。
秋兎と夏兎もその少女になら何かが出来るかも知れないと思った。
「さっきは疑ってすまなかった、君みたいな可愛い子にこんな事やらせるのは酷だと思うけど、なんか君にしかできないと思っちまうんだよな!」
と夏兎。
「あぁ、大人の薄汚れた心では女王を更生させるのは不可能だ、しかし君の純白な心と勇気があれば女王の黒く淀んだ心を浄化出来るかもしれない」
続いて秋兎。
「お姉ちゃん、とても優しいし、色々話しも聞かせてくれて楽しかった!ずっと俺とあんたはフレンズだぜ!!」
そして雪兎。
「「WNI世界の平和への鍵を君に託す、アレンと徳島とWNI世界の国のアリス!!」」
そして4匹の兎達は希望と勇気の鍵をアリスに託した。
「ちょっとー!なんでミーじゃないのよー!!」
結愛はハリセンを持って地団駄を踏む。
それを無視して自分に出来るのだろうかと託された大きな運命に戸惑うアリスと希望に満ちた目で彼女を見る兎達。
「ちょっと聞いてるのー!!」
そしてyoshino川橋を渡り希望を託された少女はハートの女王を更生させ、WNI世界に平和を取り戻す為、そして自分の世界に戻る為に立ち向かうのであった。
「ちょっとなんでミーじゃ駄目なのよー!!?」




