憧れの女性
その時遠くから最高の関西弁が甲高く轟く。
「あんたら何弱いものいじめしよるねん!ええ加減に更生せんかいっ!!」
「げっ千恵猫…逃げろー!!」
現れたのは千恵猫、ミサりん達は千恵猫が現れるとようやくアリスを蹴り続けるのをやめてその場から逃げ出した。
「アリスちゃん!いけるかっ!?」
抱き抱える千恵猫。
「千恵猫さん…私…私…」
アリスは涙をただボロボロと流し言いたい事は最後まで言えないでいた。
「皆まで言わんでいい!辛かったなあ、よう頑張った!」
千恵猫もアリスに涙をもらい、泣きながらアリスを介抱した。
「千恵猫さん…結愛さんが…結愛さんが…」
アリスは結愛がミサりん達に食べられたのを千恵猫に告げようとする。
「結愛ちゃんな、わかった!」
千恵猫は力強く答える。
「生き返らせられるの…?」
アリスは千恵猫の答え方に目をきょとんとさせる。
「ぶっちゃけて言うたら『時間を巻き戻せる』やけどな、アリスちゃん結愛ちゃんが料理されたんいつかわかる?」
アリスにはわからない、何故ならミサりん達が結愛を料理している間アリスは精神の部屋で耐え続けていたからだ。
「わからない…私、ミサりん達に精神の部屋に行かされてたから…」
「そうか、心配せんとき、絶対結愛ちゃんは生き返らせるけん!」
千恵猫はその公園であった出来事を巻き戻そうとサイコパワーを使う。
アリスがいない間その公園であった一部始終が千恵猫の中で見えてきた。
ーーー6時間前
「本当に行きやがった、馬鹿なガキだぜ!」
アリスがいなくなるやミサりん達は笑いだす。
豚となった結愛はブヒーブヒー!と悲鳴を上げ、縛られた体でジタバタと暴れるがきつく縛られて縄は解けるはずもなくただ結愛は「やめて!ミー達フレンズでしょ!!」と訴えるように悲しげに暴れていた。
「さあこいつは一流のコックに調理して貰おうぜ!」
ミサりん達は携帯電話を取り出し結愛を調理する出前を取った。
それから一時間後コックがやって来て豚となった結愛は連れていかれた。
(豚の気持ちがごっついわかるわ…人間って残酷やなあ…)
千恵猫は過去を覗いて辛い思いが暫く抜けそうになかった。
しかしこれで時間を戻して結愛をこの世に呼び戻す目処は立った。
千恵猫はサイコパワーで結愛を調理される前の状態に戻した。
パッ!
結愛は時間を巻き戻され、再びこの世に呼び戻された。
しかし姿は豚の状態だ。
千恵猫のサイコパワーは有能だが限界もある。
「ハァハァ、残念ながら人間に戻すまでは出来へなんだけどこの世に戻すことは出来たで!」
千恵猫はサイコパワーを使い精神力を使ったのかハァハァと息は荒げうっすらと汗が日に照らされていた。
「結愛さん!良かった!!」
感極まったのかガバッとアリスは結愛に抱きつく。
ブビーブヒー!
豚状態の結愛は豚の鳴き声しか出せず自分に何があったのかわからない状態だった。
しかしアリスは結愛がまた戻ってきてくれて奇跡を起こした千恵猫にはいくら感謝してもしきれなかった。
「千恵猫さん…!本当にありがとう…私…どうお礼を返したらいいか…!」
アリスは嬉し泣きしながら千恵猫に礼を述べる。
「いや、そんなん良えよ、それより結愛ちゃん人間に戻さなあかんけん早よイモムシ唯さんに見せて行き!」
千恵猫は手を左右に振りながら照れるように言葉を濁す。
「はい…本当に、ありがとうございました!」
アリスは涙を拭いてもう一礼、そして豚となっている結愛と共に森の奥へと入っていった。
「はぁーアリスちゃんホンマに可愛いなあ♪レキも漢みたいにならんと女の子のままでいてくれたらアリスちゃんみたいに最高に可愛くなれた筈やのに、勿体ないなー」
千恵猫はアリスをレキの小さな頃の姿のようだと顔を綻ばせながらも現代のレキを皮肉った。
レキは今頃盛大にクシャミをしている事だろう。
アリス達は再びイモムシ唯さんに会いに行く。
やはりイモムシ唯さんはタバコをふかしながら巨大なキノコの上に乗っかっていた。
「あら、美味しそうな豚連れてるわね、私に頂戴♪」
豚となった結愛を見据えると半ばからかうようにアリスに手を伸ばす。
結愛は震えながら警戒し、アリスは結愛を庇う。
「ダメです!この子は私の友達です!食べるなんて絶対ダメ!!」
アリスの猛反対。
「あら残念♪で、なんの用なの?」
唯はアリス達に流し目を送り、目的を聞き出した。
「はい、実はこの子、豚にされた結愛さんなんです!結愛さんの薦めで婦人の屋敷にお世話なったのがいきさつで…」
アリスはこれまでの経緯を話す。
「あらそうなの、間抜けな話ねえ…」
唯は呆れながらこう漏らす。
結愛は落ち込むようにうなだれ、一方のアリスは「結愛さんを悪く言わないで!」と抗議する。
「はいはいわかったわよ♪アリスちゃんみたいな真面目な子好きよ♪」
唯はアリスをからかい「もう、馬鹿にしないでください!」とむくれる。
そして唯は紫色のキノコを取り出した。
「これは呪いを解くキノコなの、これで結愛ちゃんは人間に戻れるはずよ♪」
唯はアリスにキノコを手渡した。
「ありがとうございます、さあ結愛さん、キノコよ!」
アリスは豚結愛にキノコを食べさせた。
それを食べた結愛は咳き込む。
「結愛さん、大丈夫?」
アリスは苦しそうに咳き込む結愛を心配する。
「まあこれは苦いからね、昔からよく言うでしょ、『良薬口に苦し』って♪」
すると豚の姿の結愛はピカーッと光り出した。
そしてその光は徐々に人の姿を作っていく。
「ブラボーっ!ミー人間に戻れたんだ!!」
現れたのは元の姿となった結愛、彼女は歓喜して甲高い声をあげていた。
「結愛さんっ!良かった!!」
アリスは人間に戻った結愛に勢いよく抱きつく。
「あぁアリスちゃん、ミーがコンソール(慰める)してあげるね、よしよし♪」
そう言って抱きつきながら泣きつくアリスの頭を撫でる。
「慰められなきゃいけないのはそっちでしょw」
と唯は小声で結愛を突っ込む。
「唯さん、本当にありがとうございました!あなた方みたいな大人に助けられて…私もそんな大人になりたいですっ!」
「いやー大人になるってそんな良いもんじゃないわよ、でも私の力でも役に立って嬉しいわ♪」
唯は顔を綻ばせた。
「ちょっと待って、私はそこの子に言っておきたい事がある」
そしてアリスが立ち去ろうとした時唯は結愛を呼び止めた。
アリスと結愛は立ち止まり、結愛はとぼけた顔をして首をかしげる。
「ほらこっち来なさい、こんな所にいちゃきこえないでしょ」
唯は手招きする。
おそるおそる唯に近づく結愛。
結愛が唯のすぐ目前まで来ると唯は結愛の胸ぐらを破らんかの如く掴み、大声で捲し立てた。
「数少ない友達をこれ以上困らせんじゃねーよこのボンクラっ!!」
「ひええっごめんなさいっ!」
唯の脅しに結愛は顔を真っ青にして謝る。
「唯さん私は大丈夫だからっ!」
アリスが慌てて抗議すると唯は結愛を突き放しこう漏らす。
「あらごめんね、でもこの子過去の私を見てるようでつい怒りたくなっちゃうんだよね…」
唯は哀愁を漂わせながら言う。
「唯さん何かあったんですか?」
とアリス。
「人の過去をとやかく聞くもんじゃないわ、貴女達は早く行きなさい!」
唯はシッシと手を上下に振る。
「ごめんなさいっ、結愛さん、行こっ!」
「い…イエス…」
そしてアリス達は唯から姿を消した。
「本当に私みたいな大人になっちゃダメよ、ずっとこんな事しなきゃいけない事になっちゃうから…」
イモムシ唯はタバコをふかし、聞こえないのを良い事に本音を漏らした。
そしてゆっくりと歩くアリスと結愛。
結愛はいつものようにテンションが高くなく、静かである。
アリスは落ち込んでるのかなと思い、結愛を元気づける。
「結愛さん、唯さんは悪気があって言ったんじゃないと思うから…」
アリスはどう上手く言葉に出していいかわからずアリスなりの精一杯の励ましの声を結愛にかける。
「ううん、そうじゃないんだ…」
結愛はテンションの低い声で漏らす。
アリスは言うのを止め、結愛の話をまじめに聞く。
「唯さん大人の女の人でカッコいいなって思ったの、ミーもあんな大人になりたいって…でもミーじゃ無理なのかな…」
読者にも馬鹿にされるし…と付け加え、結愛は落ち込む。
アリスは結愛の言葉に重く心がのしかかった。
千恵猫やさっき出会った高城友美という女性、皆大人として魅力的な人達だった。
アリスも思った、そんな大人になれるといいなって。
「一人じゃあんな魅力的な大人にはなれないと思う、でも、二人で協力したらきっと…」
アリスは言葉を詰まらせるも、結愛に言葉を投げかける。
「だから一緒に強くなろっ!私達一人じゃ無理だけど一人じゃなかったら一人じゃ出来ない事も出来ると思うから!」
「…!うんっ!」
結愛はアリスの必死の言葉に満面の笑顔を浮かべて少し涙をきらつかせながら返事をした。




