敵の目論みー2ー
ーーー
春兎とリナがヒロの部屋に辿り着く。
「ブツブツ」
(ひゃ!ひょっとしてアタイらの事バレた!?)
思わず飛び上がってしまうリナ。
コトッ!
物音が当たる音。
「ん?」とヒロが後ろを見る。
しばらくして、「気のせいか」とパソコンに向き直る。
(今のは独り言だよ!)
(ご、ごめん!)
リナはまたも失態を犯す、しかしヒロが気付かないで良かった。
よく聞くとヒロは意味深な事を言っているようだった。
「ふふふ明日はいよいよジャバウォック復活の念願が果たされ、私は晴れて闇世界のキングとなる事が出来る!」
(ジャバウォックって何なんだ?)
リナはピンと来なかったが春兎は深刻そうな表情を見せる。見せるといっても透明なので見えはしないがジャバウォックが復活する事に危機感を覚える。
(まずい…早くしないと大変な事になる!)
(え?)
(ジャバウォックの吐いた炎は街一個分を焼き尽くし、通った後は草木が枯れて暴れた日には大地震で広範囲が滅ぶという…それ故、太古の昔はジャバウォックがいたらしいが、機嫌を取るために毎年処女や美しい少年を差し出さなければならなかった)
(そんなっ!)
春兎の話でリナは表情を青ざめ、鬼気迫った感覚を覚える。
そんな大変な存在をヒロは復活させようとしているのか!
しかし机の上には幸いにもアリスを救う為ののクオーツが載ってある。
「でも心配いらない!このクオーツでアリスちゃんにかかった霊障を解けばアリスちゃんは勇者の力を取り戻し、世界を救ってくれる!」
リナを労いながらそれを取る春兎だが…。
ゴトンっ!手と机の当たる音と僅かにオフィスチェアーが動き出した。
そしてヒロの目線には明らかにクオーツを盗む人の手が。
「誰かいるな!!」
ヒロが拳銃を取り出し、弾を撃ち込んできた。
バアンバァン!
激しい銃声、春兎達のすぐそばに弾が入り、その家具が破壊される。
「まずい!気付かれた!リナちゃん!急げ!!」
「あ、ああ!」
春兎とリナはクオーツを持って一目散に逃げ出した。
ヒロはブザーを鳴らす。
ブォーンブォーン!!
その音と共に見張りロボの動きが活発になる。
『シンニュウシャ!ハイジョ!シンニュウシャ!ハイジョ!』
そんな中春兎とリナはクオーツを握りしめ必至に逃げる。
一方小夜子…。
(敵に見つかってしまったようだわ!行かなきゃ!)
小夜子は立ち上がり、駆け出した。
「うわっ!」
リナが足を取られてしまう。
「リナ!!」
春兎はリナを背負う。
「出口はあとちょっとだ!」
春兎はリナ背負って全速力で駆け抜ける。
『シンニュウシャ、ハイジョ!シンニュウシャ、ハイジョ!』
警備ロボは春兎を追い、備え付けの銃を撃ち放つ。
ダダダダ!バチュンバチュン!
春兎が後を通ると街の一部が風穴を開ける。
「もうすぐ小夜子ちゃんと合流出来る!」
そんな時油断していたのか警備ロボの散乱銃によって春兎の足が撃たれてしまう。
「ぐあっ!」
「春兎!」
地に滑り込んだ春兎にリナが駆け寄る。
「僕の事は気にせず逃げろ…!」
春兎は足を撃たれリナ一人になってでも逃げろと叫んだ。
「放っておけるわけないだろ!」
「馬鹿野郎!お前まで撃たれてしまったらこれまでお前を守ってたのは何の意味があると言うんだ!!」
滅多に怒らない春兎もここで感情を爆発させる。
「世話が焼けるわね!!」
そこで巫女姿の少女が春兎達の前に出る。
「小夜子!」
小夜子の魔力は回復し、薙刀を持った凛々しい巫女戦士となって目の前の警備ロボの群れに睨みを利かせた。
「ヒロの具現よ!名槍軻遇突智の餌食となりなさい!火炎乱舞!!」
小夜子の薙刀の先端から炎がほとばしりそれを横に振るうと先端の炎が警備ロボ達に襲いかかり警備ロボの群れは二、三体大破する。
しかし二、三体大破したところであらたな警備ロボ、もしくはヒロ本人が来たらどうしようもなくなる。
「しっかりしなさい!治癒!」
小夜子は手の平から温かい光を発して春兎の撃たれた足を癒す。
春兎のドバドバ流れていた血が塞がっていき、春兎は痛みが引いていくのをその場で感じとる。
「ありがとう!」
春兎はすくっと立ち上がる。
「出口はもうそこよ!」
小夜子、春兎、リナはようやく追っ手から逃れることが出来た。
「はーっ、とりあえずは助かった!」
小夜子の結界を貼った空間でテントを広げる春兎達。
「ところで例のものはちゃんとあるの?」
小夜子が聞き出す。
クオーツの事だ、そもそもクオーツは今は霊障によって散々な出来事に見舞われているアリスに渡すためにヒロから取り返したものだ。
これを何処かで落としたというのなら、また一から出直しとなる。
春兎は服の周りをくまなく調べる。
「あ、あれ??」
「ま、まさか…!」
「持っていないとか言わないでしょうね!?」
春兎の慌てように他少女二人の表情は不安色に染まる。
「ジャジャーン!」
春兎が取り出したのは繋げて輪っか状にしたクオーツ、春兎は小夜子達を焦らす為にわざと動揺するフリをしてみせた。
「はははごめんね君達のそんな表情を見たくてわざと慌てるフリをして見せたんだ…てみんな?」
ゴゴゴゴと音を立てて殺気が全身をまとい、二人の少女はおどけた春兎を一点に睨みつける。
「ぎゃあああー!!」
この瞬間、森からはカラスの阿鼻叫喚のような悲鳴が響いて来た。
「全くふざけないでよね!」
「女の子の不安になる表情が見たいだなんて救いよう無さ過ぎるぜ!」
「ご…ごめんよ…」
頼もしい一面もあるが女性の扱いが下手な春兎は小夜子とリナから散々非難を浴びせられ徹底的に落ち込んだ。
男はいつの世も、女の尻に敷かれてなくてはならない。




