徳島の裏側
ーーー病院。
そこにはリナっしーと親しいアテナとニケが子供広場で遊んでいた。
「あっ、リナっしいや!」
「お姉ちゃん会いたかったよ!」
駆け寄るアテナニケ。
「久しぶりだなお前ら元気にやってたか♪」
リナは満面の笑顔でアテナニケの頭を可愛がるように撫でる。
「びっくりした札付きのリナっしーもあんな一面があったんだなぁ」
見守る三人の兎の中で意外な風に夏兎が洩らす。
「でもごめんな、アタイはこれから戦いに行かなきゃならねぇんだ…」
リナは表情を沈める。
その途端アテナニケは泣きそうな表情に変わる。
「え?ウチら会えなくなるん?」
「やだよーずっとそばにいてよー!」
アテナニケは泣きだす。
「心配すんな、ずっと良い子にしてたら絶対帰って来るから!」
リナは泣きだすアテナニケをなだめる。
「本当に?」
「約束やで?」
「ああっ!」
リナとアテナニケは指切りをする。
「もう良いのかい?」
春兎がリナに聞く。
「あぁ、すまないな無理に付き合わせてもらって」
リナは少し切なげな表情になるも笑顔を作ってみせた。
「さあ行こうか」
そして三人の兎とリナは徳島駅に向かう。
ーーー
兎兄弟は徳島駅に着いた。
「徳島は唯一電車が無い県と言うが金が特に無いわけじゃ無いんだよな?」
とリナっしー。
「うん、徳島に電車が無いのは徳島の都市伝説に関係があるらしい」
と春兎。
「都市伝説?そんなの本当にあるの?」
頭に両手を組んであくびしながら聞く気無さげな夏兎が聞く。
「本当にナツ兄は緊張感が無いな」
と秋兎。
「あぁ、徳島に電車が出来ないのは電車による電磁波の発生で徳島に眠る秘宝が暴走を起こすかららしい」
春兎が聞かせる。
「しかしこんな良い街なのに電車が出来ないのは何だか可哀想だよな」
「でも徳島の街はみんな良い人だし不自由しないから良いじゃないか!」
少し徳島に同情する夏兎にリナがフォローを入れる。
「ところが…だ、最近たまに電車がやって来る事があるらしい」
春兎が続ける。
「それは何故?」
「わからない、一度徳島を救ったアリスちゃんが徳島を救いにまたやって来る事になったのと何らかの関係があるらしいが…」
「それよりなんか食おうぜ!腹減ってきた!」
「ナツ兄…空気読めよ…」
マイペースなナツにいつもの如くツッコミを入れる秋だが昼が近いのもあり下の階のレストランで食事をとる事にした。
徳島の電車は地獄への一丁目…。
ーーー場所は変わりメアリアンの住む屋敷。
アリスはメアリアンの屋敷に連れてこられていた。
「私の服を返して!」
アリスが訴える。
メアリアン達の目前できていない状態にされていた。
「とんでもない言い草だねえ、せっかく綺麗に洗わせてあげたのにさ!」
メアリアン、ミサ、そして結愛はアリスを見下ろす。
「ユーはミー達の言う事素直に聞いてりゃ良いんだよ!」
結愛はアリスを足蹴にする。
「今はやめとけ!結愛!」
珍しくミサは止める。
「そ…ソーリー…」
人の心変わりは恐ろしいもので、結愛はすっかりメアリアン側に着いてしまい、もはやアリスの事をいじめの対象にしか映っていなかった。
「あんたにはこれをやるよ!」
メアリアンはアリスに衣類のようなものを投げつける。
メアリアンがアリスに投げつけたものはメイド服だった。
「メイド服じゃん、良いな良いなー」
結愛はうらめしそうに言う。
「あんたは今日からメアリアンよ、しっかりこの屋敷で働きな!もしバラしたらどうなるかわかってんでしょうね?」
ミサが結愛を止めたのは無駄に怪我をさせると屋敷の主などに探りを入れられるからだった。
「そして私は今日からアリスよ!心配するな、へんな事はしないから!」
「寧ろお前の方が心配だがな!」
ミサの一言でどっと笑いが起こる。
アリスにとって人の笑う顔がこんなに醜いものと思ったことは無かった。
ただ、勇者でなくなり、帰る場所も失った今、今の状況に甘んじる方法しか思い浮かばない。
良いわ、こうなったらメイドとしてこき使われてやろうじゃないの。
アリスはヤケだった。
メアリアンなんかより出来るってとこを見せてメアリアンに一泡吹かせてやるのよ!
奴がどんなに自由になったとしても、性根の腐ったメアリアンが外の世界で上手くやっていけるとは思えない。
せいぜい自由を楽しんでなさい!
メアリアンとなったアリスは談笑しながら取り巻きと外へでる自分そっくりな少女を心の中で笑ってやった。
ーーー
「メアリアン!何ちんたらしているんだ!」
「いつもテキパキしているのに今日は何てだらしが無いの!」
なんで?私があいつに負けていると言うの?
痛っ!指に血が…バンソウコウ貼らなきゃ…。
メアリアンの代わりとなったアリスは次々と家事に追われる。
「まだ出来てないのか!早く終わらせろ!!」
宿主の怒鳴り声にビクンとしつつアリスは「申し訳ありません!」と謝り注文をこなす。
しかしメアリアン本人の方が上手くやっていたようで、アリスは歯痒い気持ちになるのであった。
「さあこれが終わったら奉仕だ!早くしろ!!」
主が怒鳴る。
「は…はいただ今!」
なんてワード…しかし逃げてはあのメアリアンに負けた事になる。
アリスはメアリアンにだけは一つだけでも勝ちたかった。
今のところ、メアリアンと比較されて何も評価された試しがない。
メアリアンの底意地悪い性格を更正させる口実を作る為にもアリスはメアリアンに勝つ要素を見つけたかった。
「さあ早くやれ!」
「は、はい…!」
(こ、こんな事をメアリアンはやって来たの?しかし私は逃げない!料理も、洗濯も、そして奉仕もメアリアンより上手くなってアイツを見返してやるんだから!)
そしてアリスは心の中でメアリアンと対峙するシミュレーションを作った。
ーーー
とある荒れ地、二人の剣士が睨み合う。
一人はアリス、一人はメアリアン。
「どっからでもかかって来い!」
「…参る!」
両者の戦いの火蓋が切って落とされた。
「何この攻撃は?ハエが止まっているわよ♪」
「くっ、くそ!」
アリスは攻撃を繰り出すが次々と避けられてしまう。
「ゼエハアゼエハア…」
アリスは体力が切れてしまう。
「あらもうお疲れ?休憩する?」
見下したような口調で声をかけるメアリアン。
「な、情けは無用!」
アリスは剣を構え直す。
(なんでこんな女に情けをかけられなくてはならないの?私は勇者だった女よ!どうせ人を蹴落として出世しただろうこんな女に負けてなるものですか!)
アリスは疲れを誤魔化すように目を研ぎ澄まさせる。
全身嫌な汗、薄手の鎧がやけに重い。
「メアリアン先輩、敵に情けをかけるなんてお優しいですなぁ!」
後ろからは取り巻きが。
「このガールはライフする資格のない女です!早くケリつけちゃって下さい!」
そして以前親友だった結愛の言葉。
「ふふふお仲間だった女の子にあんな事言わせてしまうなんて貴女相当あの子に嫌がらせしたんでしょうねえ♪」
くつくつと笑うメアリアン。
結愛ちゃん、私のどこが嫌いなのか言ってよ!悪口ばかりじゃわからないよ!私はずっと友達だと思ってた…それは違うの?全て私の幻想だったの!?
アリスの心の絶叫も結愛には聞こえない。
アリスは心身共に疲弊し構える余裕を無くしてしまう。
「チェックメイトよ♪」
メアリアンは剣を斜めに振り下ろしアリスを斬り咲く。
斬り咲かれたアリスの体からは大量の結愛との思い出が飛び散っていった。
「ゆ…い…」
アリスは朦朧とする意識の中結愛にめがけて手を伸ばした。
しかしその手が握られる事は無かった。




