更生の手がかり
女王の目の前にはおびただしい血の海。
そこには唯、義人、そして結愛がボロボロの状態で横たわっていた。
「フフフ、このままにしておくとまた私に楯突こうとするからね、もう私には一切逆らえないようにしてやる!」
そして女王の手は結愛に伸ばされる。
結愛の手を鷲掴み、女王は低い声で詠唱をする。
「うっぐああああぁ!!」
結愛が苦しさにもだえ、断末魔を上げる。
結愛からジュウゥッと湯気が沸き立ち脂汗が地を濡らしていく。
「ふふふ、この小娘の悶え苦しむ姿も美しいものだねえ♪」
女王は結愛の苦しげな表情に恍惚として見惚れる。
すると結愛はユイ・ルミナーレではなく元の鳴海結愛の姿となってしまう。
ハートの女王は手をパッと放す。
鳴海結愛となった結愛はそのまま地面に崩れ落ちた。
「お前は猫柳で散々苦しんできたからねぇ、元の鳴海結愛の姿で許してあげるよ♪後はミサりん達にたっぷりと可愛がってもらうんだね!」
そして女王は唯に近寄る。
「ふふふ、この小娘はどう調理しようか?前のようにイモムシか…カエルも良いねえ♪」
ハートの女王は舌を舐めずる。
そしてハートの女王は唯の頭を鷲掴みにしようとしてきた。
唯は体中傷だらけで動けない状態でいるも、そんな女王をただ強気に、唾を吹きかけた。
「くっこの小娘!」
女王は唾をかけられ、更に表情に怒気が増す。
「ウジ虫にでもカタツムリにでもなってやるわ!、さあ好きにしなさい!!」
唯は啖呵を切る。
それが今の唯に出来る唯一の悪あがきだった。
「キイィ!ならばお望み通りにしてやる!!」
女王は唯の体を持ち上げ、呪文を唱える。
「ギギギ…」
唯は体の一部が変わっていくような痛みに襲われる。
唯の羽根、触覚が液化して消えていく。
そんな時の事、光に包まれた矢が飛んできた。
グサリッ!
矢は女王の手首に突き刺さる。
放ったのは義人だった。
「僕を先にやれ!女王!!」
義人は一番向こう側にいて、気を失っていたが唯の啖呵に目を覚まし、女性が先にやられていくのを黙っていられなかった。
「どこまでも生意気な勇者達よ!もろともここで皆殺しにしてやる!」
女王は我を忘れ、この辺り一帯を火の海で沈めようとする。
その時アリスが走ってきて女王に向かっていった。
「そんな事はさせないっ!!」
「「あ…アリスちゃん?」」
現れたのは勇者となり神々しく光る鎧を纏ったアリス。
ヴァルキリーアリスだった。
「この小娘…ついに勇者に…」
女王の最も恐れた事が実現化されたと言っていい。
アリスは剣を構える。
「私の大事な友達をこんなにして…今までの私は弱かったけどもう逃げない!貴女を骨の髄まで更生させてみせる!!」
女王はアリスを睨み暗黒の剣を更に大きくさせる。
「こうなった以上死ぬ気でかかるしか無さそうね!!」
そしてアリスとハートの女王の最後の闘いがはじまった!
互いに互角の闘いを繰り広げるアリスと女王。
彼女らの闘気に唯達は只々圧倒される。
「凄まじい…私達とは格が違う…」
「アリスちゃん…頑張って!」
三人は傷を負っていて彼女らの戦いを見守っている事しか出来ない。
「ブラックホール!!」
接近戦から遠距離戦に移りだす女王。
しかしアリスも遠距離で応戦する。
「ワンダーアロー!!」
アリスの光と女王の闇が互いを飲み込もうと襲う。
しかし両者は一歩も譲らない。
そこで女王は策に出た。
無数に闇の弾を放ち、それに紛れて自分がアリスの目の前に出て、彼女にトドメを刺すと。
そしてそれはついに実行された。
光と闇が激突しあう最中女王は懐にきた。
「アリス!危ない!!」
そこで結愛が言葉を放った。
「!!」
結愛の言葉に反応してアリスは捉えた。、
こちらをニタリと笑い懐を刺そうとしている女王の姿を。
「甘いよアリス!!」
女王の剣がアリスの腹わたをえぐろうとする。
キイン!
しかし辛うじてアリスは女王のトドメの一撃を防ぐ。
「くそうっ!弱いくせに強いものに刃向かうのが許せないんだよ!!」
「弱いからこそ力になる!女王よ、貴女は自分の力に過信し過ぎだ!!」
互いに吼える。
互いの闘気がぶつかり合い、対象を怯ませようとする。
「私が闇の力で嫌でも屈服させてやる!!」
「ならば私は不思議の力で嫌でも抵抗してみせる!!」
アリスの不思議な力は勇者の力をより強大なものにしていった。
「不思議の力だと?そんなもので私を更生なんて不可能だ!どんなに変えられても生まれ持った本性は自分を堕落させ、退廃させる!!」
「不可能を可能に変える、それが不思議パワーよ!!私の持つ不思議パワーは鍵となり剣となり盾となり、そして人を更生させる希望にもなる!!」
戦いながら主張を繰り広げるアリスと女王。
「なんでやねんー!!」
そんな時女王の痛恨の突っ込みがアリスに放たれた。
『アリス!今や!!』
アレンが隙を見たのかアリスに発破をかける。
女王の突っ込みという闇の波動がアリスを焼き尽くそうとする。
しかしアリスはそれにも動じなかった。
アリスの中にはアレンという頼もしい師匠、そして結愛、義人、唯という大事な友達もいるのだから。
「なんでやねんカウンター!!!」
女王の突っ込みはカウンターとなって逆に女王に放たれた。
「ウボァー」
女王の腹中央部に鍵穴が現れる。
アリスはそれを捉えるやすかさず女王の鍵穴に鍵を押し込む。
そしてそれをグッと回すと女王の体に亀裂が入り、そこから光が放たれる。
やがてバリンという音と共に女王を覆っていた[殻]は破られた。
空中から落下して鮮やかに着地するアリス。
そして体を地に預けて崩れさる女王。
いや女王は別の姿となっていた。
ハートの女王は本来の女性の姿を取り戻した。
「お母様!」
その時向こうから少女が現れる。
それはレキ、かつて男装の麗人だった女性だ。
「レキ…すまないね…いままでお前をぞんざいにしてしまって…」
「いいのよお母様…私も力が足りなくて、お母様を更生させられなかった」
「こ、この人はレキの妹さん…?」
初めて見る顔なのか、義人は少女に指差して尋ねる。
義人の声にレキはビクンとなる。
「…!よ、義人さん、ごごごご…」
ご機嫌麗しゅうと言いたいが上手く言葉を出せなくなるレキ。
「こんにちは、レキさんにもお伝えください」
「ひ、ひえぇ!」
レキは赤面してジタバタする。
(成る程…レキだな…)
唯と結愛は思った。




