独りじゃないから
深層心理までやってくるとミサや取り巻きがアリスを囲んで罵倒を繰り広げ、その他大勢の人間がアリスを遠巻きに見ている様子が映し出される。
「いい加減に更生して、女王様に従ったらどうなんだよグズ!!」
「悲劇のヒロインヅラしやがって、ムカつく!!」
ミサりんや遠巻きは殺気立った目でアリスを矢継ぎ早に蹴り続ける。
「あの子は悪い子だから当然の報いだ」
「女王様を更生させようとか馬鹿なの?死ぬの?」
「身の程知らずが、親の顔が見て見たいわ」
周りの人間もアリスを助けようとも同情するでもなくただ当然の報いと言う風にアリスを軽くあしらう。
(アリスちゃん、貴女は何も間違っていないよ、今貴女を救い出してあげるから)
桜はある映像を思い浮かべるとそこにバレーボールが現れた。
桜はそのバレーボールを手にとってアリスを囲んでいるミサりん達めがけて力いっぱいスパイクした。
「痛っなんだ!?」
ミサりん達は振り向く。
「更生しなければならないのは貴女達の方よ、弱い子をよってたかっていじめて恥ずかしいと思わないの?」
桜はバレーボールを複数出現させて片手にバレーボールを抱え、もう片手でミサりん達にビシリと指を指し、言い放った。
「てめえも悪者にされたいのか!!?」
ミサりん達が襲いかかる。
「悪い者にされてもアリスちゃんが受けてきた傷と比べたらなんて事ないわ!!」
桜は片手に持ったバレーボールを力一杯スパイクしてまたミサりん達に当てる。
桜は高校時代、何らかの手違いでバレーボール部に入部する事になってしまった。
桜は「バリア」の異能を使う事が出来る。
バリアは本来防御系の異能で攻撃面ではあまり力を発揮しない。
しかし攻撃を跳ね返したりすると威力が何倍かに膨れ上がることから、バレーでも活かされるのではと桜の編み出したオリジナルウェポンである。
「「このアマー!!」」
ミサりん達も、大勢のモブまで、桜に攻撃の標的を向ける。
「私はあなた達の思い通りにはならない!!」
桜は巨大化する。
「な、巨大化した!?」
巨大化した桜を見上げ、驚愕するミサりん達。
そして桜は手の平で思いっきりミサりん達を叩き潰した。
「桜…さん…」
アリスが涙ぐんだ目で桜を見つめる。
桜は元の大きさに戻り、アリスを優しく抱きしめた。
「怖かったね、悔しかったよね、あんな状況でよく頑張ったね、私なら耐えられない…」
桜は折れてしまうのではないかと思うほどアリスの華奢な体を力一杯抱きしめた。
しかしアリスはそれによって人は冷たい人ばかりではない事を知り、目尻が熱くなる。
「ほらまた我慢して…千恵猫さんも言ってたよ、アリスちゃんは溜め込むタイプだから心配だって…泣いたってすぐには嫌いにはならないから…我慢出来なくなったら泣いて良いんだよ」
「うわあん桜さん!!」
アリスは桜の温かい胸の中で力一杯泣いた。
アリスが力一杯泣いた周辺には池が出来ていた。
「すっかり水溜りが出来ちゃったね♪」
桜は自分の腰くらいまで水が溜まってしまったのを見てくすりと笑う。
「ははっ、出会ったばかりの頃の結愛ちゃんみたいだ…」
アリスも笑う。
「結愛ちゃん?」
桜がアリスを見下ろし聞く。
「うん、いつも一生懸命なんだけど、ドジだし、ヘタレだし、とにかく駄目な子♪」
とにかく酷い言い様だがあくまで正直な感想であり一種の愛情表現でもある。
「でも…」
アリスは目を細める。
「すっかり見違えちゃった…今は私を守ってくれる素敵な王子様だよ♪」
「そう、ベストフレンズだね♪」
「フレンズ?そう言う事言うのは結愛ちゃんだけだと思ってた…」
確かにフレンズと言う表現は結愛くらいしか言わない。
「…うん、実は私もその鳴海結愛って子に会った事があるの、コラボの中だけだけどね、確かにアリスちゃんの言う通りなとこあったけど相手を更生させたいと言う熱意はあってある意味凄い子だと思った」
桜も懐かしむように話す。
「ふふっ、ホントだね!でもそう言うとことても素敵で、尊敬しちゃうなって♪」
アリスはさっきの凄くネガティブな感情はどこへやら、桜と話しているうちにそういったものは吹き飛んで、心の傷も完全に癒えてしまった。
「さあ行こうかアリスちゃん♪」
「うん♪」
桜とアリスはアリスが沢山泣いて出来てしまったプールを泳いで元の世界に帰って来た。
ーーー
結愛は接待室で待たされている。
やがて扉が開く。
そこには見違えた姿のアリスが。
「結愛ちゃん!」
「アリス!元気になったのか!?」
二人は抱きしめ合った。
「ベリーソーリー…ミーがユーを見放さなければあんな事にはならなかったのに!」
結愛は泣きじゃくる。
「良いよ結愛ちゃん、結愛ちゃんは私達には想像も出来ない程頑張ってるのはちゃんと知ってるから!」
アリスはそんな結愛を慰めながら貰い泣きする。
「良かったわね結愛ちゃん♪」
桜がこう囁く。
「桜さん…ミーの正体を…」
姿と性格は変わったが紛れもなくユイ・ルミナーレの本性は鳴海結愛、しかしユイ・ルミナーレになったばかりの彼女の正体を知る者はアリス以外にはいないものと思われた。
「なんで最初から言わなかったの?水臭いなー」
桜は結愛に顔を近づける。
「あ、あれは恥ずかしかったから…」
結愛は赤面して視線を反らす。
「チエチエ♪」
千恵猫が現れる。
「千恵猫さんっ?最近出てこないからどうしたのかと思ってた!」
アリスが千恵猫が突然姿を現したものだと驚く。
「私はずっとおったよ?ほなけどアリスちゃん心が壊れてもとって全然見えれへんし話も出来んしで困っとったんよ」
千恵猫は困ったやらホッとしたやらと言った表情で漏らす。
「そっか、ごめんね…」
謝るアリス。
「良えよ良えよ、とりあえずアリスちゃんが元に戻って良かった!」
言いながら千恵猫はまたチエチエ笑う。
「…で結愛!成長したと思ったらそう言う抜けたとこは変わっとらんな!目放して調子乗っとったらあかんで!」
アリスの側にいる結愛を見据え、千恵猫はあの時の失態を責める。
「そ…ソーリー…」
申し訳ないと深く謝る結愛。
「もういいよ!私はこうして元気になったんだから!」
アリスは両手に力こぶを見せる動作をする。
「次こそは絶対ユーから目を離したりしない!必ずユーを守る、だから…」
結愛は力強く叱る。
「ありがとう、でも私も、もっと強くならないといけない、強かったらもっと以前に勇者の力は手に入れてたに違いないから…。
だから、ね!一緒に強くなろうよ!」
アリスは結愛を励ます。
「友情って素晴らしいわね…ぐすん」
「ぐすん…せやな…」
励まし抱き合う少女達を見て大人達は感傷に浸る。
あとは勇者の力を手に入れ、女王を更生させるだけ。
徳島とWNIの命運はアリス達にかかっていた。




