友情は深くすると強さになる
ーーー
「ハァハァ…」
地下の宝物庫めがけて走るアリスと結愛。
「アウチッ!」
結愛は足元がもつれ、つまずく。
ハァハァと息を整えたままうつぶせになり、動けないでいる。
「結愛ちゃんっ!」
アリスは振り向き結愛にかけよる。
「大丈夫?」
結愛の顔を覗き込みながらそっと手を差し伸べるアリス。
「ミーはもう駄目…先に行って…」
結愛は息を荒げながらアリスに言う。
「貴女を置いていけない!」
アリスは強く放つ。
「ミーは駄目…アリスちゃんみたいに強くないし、ドジだし、不器用だし、ずっとアリスちゃんといても足手まといになるだけだよっ!」
結愛は悔しそうに嗚咽を漏らす。
彼女のグーの手は小刻みに震える。
「そんな事ない!」
アリスはなおも放つ。
「猫柳の時もミサりんに立ち向かうどころかいじめられてばっかだったしここでもアリスちゃん困らせてばっかだったしミーはどこ行っても何やっても駄目だよ!人間のクズだよ!!」
結愛はヒステリックに喚く。
アリスは悔しそうに地面を握る結愛の手をギュッと握り、持ち上げた。
「こっちを見て、結愛!」
アリスは更に強く声を放つ。
静かになり、涙目にしてアリスを見る結愛。
結愛の目の前には澄んでいつつも強い意志の光を放つ瞳の少女の姿があった。
「この前も言ったでしょ?一緒に強くなろうって、みんな一人じゃ弱いままで何も出来ない、でもね、今は結愛はもう一人じゃないんだよ!」
そう言うアリスの瞳は涙が溜まっていた。
「私がついている、私も、結愛ちゃんや千恵猫さん、小山さんや唯さんがいたからここまで来れたんだよ!」
アリスは優しく強く、結愛を見つめながら話す。
「ユー…」
静かにアリスを見つめる結愛。
その時結愛の胸から鍵穴が現れた。
「これは…!?」
驚くアリスと結愛。
「ノーアイデア(わからない)だけどアリスちゃん、その鍵でミーの鍵穴をこじ開けて!」
結愛は頼んだ。
「…うん!」
アリスは鍵を結愛から現れた鍵穴に差し込み、それを回した。
すると結愛の体が白い光に包まれる。
「一体…何が…!?」
眩い光にアリスは目を覆う。
辺り一面は白い光に包まれた。
ーーー
一方、唯と義人が戦った戦場。
多くの兵達の血の海で地面が赤く塗られている。
そして多く転がる兵士たちの姿。
「ハァ…ハァ…手こずらせやがって…」
そんな中、女王は足元に転がる二人の勇者を見下ろす。
唯と義人だ。
「あの小娘の勇者覚醒だけは阻止せねば…あの小娘の力は凄まじい…流石の妾も手を焼く存在になるのは確実じゃ…」
ハートの女王は少女に秘められた力を恐れ、少女が覚醒する前に始末してしまおうと先を急いだ。
ーーー
結愛の体が光だし、その姿は別の姿へと生まれ変わらせた。
「結愛…ちゃん?」
アリスは愕然とした表情で目の前の生まれ変わった姿を眺める。
彼女の150程度の身長は170まで伸び、ボブショートの髪は腰まで届くくらいの長い髪となり、グラマラスな体型の美女となった。
「結愛じゃない、ミーは結愛という少女の夢の中の自分自身、ユイ・ルミナーレ!」
結愛、いやユイ・ルミナーレは右手を置いて左手をブランとさせモデルのような出で立ちで答えた。
「信じられない…夢みたい…」
アリスはこれが夢なのではないかと錯覚する。
「残念だが夢じゃない」
ユイはアリスの小さな肩に手をやる。
「ユーのおかげでミーは更生する事が出来た、今まではヘタレから立ち直る事が出来なかったがもうミーは迷わない!」
そしてハリセンを持ってユイは宣言する。
「それより唯と義人だけじゃあのハートの女王は倒せそうに無いな…ミーも助太刀してやらねば…」
ユイはアリスに背を向き、彼女らに加勢しようとする。
アリスに突然不安がよぎる。
自分はこの先一人になってしまうのではと本能が感じ取ってしまった。
「待って!」
アリスはユイの手を握り止める。
「ごめん…側にいて…やっぱり私…結愛ちゃん…いやユイがいなきゃ何も出来ない…」
「アリス…」
自分でも何故このような気持ちになってしまったのかわからない。
旅を共にしている内に切っても切れぬ何かが二人の間に芽生えたと言えよう。
「こんなミーでも、ユーは必要としてくれるのか…」
ユイは熱い何かがこみ上げ、泣きたくなる感情に襲われる。
「当たり前でしょ?私達、フレンズだもん!!」
フレンズ…今までミーはフレンズと言うものといてこのような感情になった事が無かった。
温かくて愛おしい…そうか、これがフレンズと言うものなんだな…。
ユイはこの感情に浸るように上を向きながら涙を流していた。
しかし物思いに浸っている場合ではない。
早く急がないと自分やアリスが勇者として覚醒出来ないまま女王に亡き者にされる。
それだけは何としてでも避けなければならない。
「ユー…」
ユイは自分の首元分の身長のアリスを見下ろし、彼女の肩に手を置く。
「センキュー、しかし時間が無い、女王がここに来る前に先を急ごう!」
「そうだね!」
そしてアリスとユイは先を急ぐ。
しかし急いだ先には多くのトランプ兵が待ち構えていた。
「女王様の命令で見張りを任されていたのだ!ここに来たからにはお前を抹殺する!」
トランプ兵達は槍を構え、アリス達を威嚇する。
ユイ・ルミナーレが鳴海結愛のままなら正直捕まるか、抹殺される未来が見えていた。
しかし彼女はユイ・ルミナーレとして覚醒している。
そして兵士達に臆する事なくユイは堂々として兵士達に歩みよる。
「アリス、下がっていな、奴らはミーが片付ける!」
ユイはハリセンを右手に持つ。
今のユイにアリスの知る鳴海結愛はいなかった。
これまでの鳴海結愛ならこの状況に陥った時、必ずアリスの後ろに隠れる。
しかし今の鳴海結愛、いやユイ・ルミナーレはか弱い姫君を守る騎士のように頼もしく、男前だった。
そんなユイは口元をニヤリと上げてトランプ兵達に問いただす。
「クロッケーはお好きかい?」
いきなり何を聞きだす鳴海結愛。
「ば、馬鹿にしてるのか!?」
トランプ兵達は何かの挑発とも取れるユイの言葉に狼狽えと怒りを覚える。
「クロッケーの面白さを教えてやるよ!」
ユイは不敵な笑みを浮かべて言う。
そしてユイは左手からクロッケー専用のボールを取り出し、それを上に投げた。
何をするかと思えばユイは右手に持つハリセンをテニスのラケットのように振るい、そのボールを打った。
ユイの打ったボールは畝りをあげてトランプ兵の一人に命中。
そのトランプ兵は鼻が折れたようで鼻血を押さえてもがく。
「ほら、もう一発!!」
ユイはもう一発ハリセンでボールを打ち続ける。
「クロッケーとは何か違うけど結愛ちゃん、凄い…!」
アリスは今のユイを憧れの眼差しで見つめる。
「このアマ!!」
からかうようにボールを打ち続けるユイに怒りトランプ兵達はユイを串刺しにしようと槍を構えて突撃する。
「遅いよ!」
ユイはひらりとトランプ兵の攻撃を避ける。
そしてハリセンでトランプ兵の頭をパシンと叩く。
矢継ぎ早にトランプ兵達の突進は続くがその度にユイは踊るように避けてはハリセンで次々とトランプ兵の頭を叩いていく。
パシン!パシン!パシン!パシン!
それはトランプ兵達をからかっているようにも見える、それともそれがユイ・ルミナーレの戦い方なのだろうか?
「人を愚弄しやがってーーー!!!」
トランプ兵達は殺気を沸き立たせて一思いにユイの腹わたを突き刺そうとする。
「フールガイ、そんなものでミーを串刺しに出来るのかい?」
ユイが振り向き、ポーズを取るように兵士達の持っているものに指差し、挑発の言葉を放つ。
「何…うわっ!」
なんと兵士達の持つ槍はフラミンゴとなっていた。
そんなものでは対象を突き刺す事は出来ない。
「メインディッシュはこれだ!!」
更にユイの打ったボールはハリネズミとなって兵士達を襲いかからせた。
アリスは呆気に取られているがユイは逃げ惑う兵士達を楽しむように眺める。
しばらくして見飽きたユイは「チェックメイトだ!」と放ち、ハリセンを持って一回旋する。
ドドーン!!
フラミンゴとハリネズミは爆発を起こし、兵士達は吹き飛んだ。




