勇者集結!
小山を更生させ、残りは唯だ。
「貴方達、無駄な正義をふりかざすのはやめなさい、私みたいになるのがオチよ!」
イモムシ唯の否定的な口調。
しかしアリス達は気丈に説得を続けた
「放っておくと勇者がまた現れ、ハートの女王に立ち向かわなければならなくなり、犠牲者がどんどん増えます、それでもいいんですか?」
アリスは強く言い放つ。
「…負けたわ、貴女達の言う通りね、放ってもハートの女王の悪政で苦しむ民は増え、彼女を更生させる為に勇者が現れては私や義人のような犠牲者は増える、こうなっては負のスパイラルだわ…」
すると唯の体に鍵穴が現れた。
「アリスちゃん!今や!」
アリスは鍵穴 を唯の体に現れた鍵穴に差し込み、それを回す。
そして唯の体が光り出し、イモムシの体が人間の体に戻っていった。
唯は人となった。
しかし人間の体に更にあるものが付属していた。
「おお…」
それを見たアリス達も驚く。
その姿はいい例えれば妖精、いや女神と見紛うほどに神々しい姿だった。
唯の頭には触覚がつき、背には綺麗な模様の大きな蝶の羽がつき、大事なところは白い毛で覆われた蝶の成虫を擬人化したような姿になった。
「イモムシになってたからこのような姿になったのね、おかげで空も飛べるし異能も使えるわ」
唯は冷静に言葉を放つ。
「凄いです…唯さん…」
義人はゴクリとして唯に見とれる。
「あまり見とれると百歌に怒られるわよ!」
唯は義人にゲンコツをかます。
「さああとはあのハートの女王をぶちのめすだけね、アリスちゃんみたいな可愛い子に戦場行かせるのも気の毒だけど勇者の宿命を持った以上仕方がないか…」
唯はアリスに同情の目を向ける。
「ちょっとミーは!??」
一方とことん無視されるパーフェクトガール鳴海結愛。
「ちょっと小山!アンタ男なんだしアリスちゃんみたいなか弱い女の子もいるんだからしっかり守ってあげなきゃ駄目よ!」
義人に怒鳴る唯。
「わ、わかってますよぅ」
困ったように返事を漏らす小山義人。
「だからなんでミー名指ししてくれないのー!?」
結愛はハリセンをバタバタさせながら抗議する。
アリスは自分の課せられた重い使命に不安がよぎっ
た。
「大丈夫やでアリスちゃん」
千恵猫が鍵を握って思わず震えるアリスの手に自身の手を重ねる。
「私達もついとるさかい、大船に乗ったつもりで気張ってきいや!」
「…はい!」
千恵猫の励ましでアリスの不安は吹き飛んだ。
そしてハートの女王を更生させてWNI世界に平和を取り戻せるのは私達しかいない、いや、やってみせると元気が出た。
ーーー
アリス達勇者一行はハートの巨城に辿りつく。
住人達は作業を続けているがそこである噂を聞く。
「女の子が囚人を逃したらしいぞ」
「その囚人はまた捕まって今日処刑されるらしい」
「その女の子も終わりだな…」
そんな会話を聞きアリスは早く囚人達を助けなければと焦る。
「私が逃した人達が危ない!助けに行かないと!!」
アリスは焦るが
「とんだお人好しね、その人達なんて放っておけばいいのに、誰でもかれでも助けたら自分の身が持たないわよ」
と唯、いかにも唯らしい台詞だ、WNIの唯はわからないが。
「でも、アリスちゃんのやった事は正しいよ、大した罪も無いのに処刑される人達は助けてあげないと」
と義人。
「今すぐヘルプよ!アリスちゃんにはサッドな思いさせたくない!!」
結愛はハリセンを前に突き出す。
てハリセンは何のための武器やねん。
処刑場ではアリスの逃した囚人達が目隠しをされ、立てられた丸太にひもで縛られている。
その目前にトランプの兵士達が槍を構え、処す準備をしている。
観客席にはトランプの住人がひしめき、その中央にハートの女王が険しい面持ちで立っていた。
「我が女王に反逆する賊人共よ、女王の権威の目前から消えてあの世で更生するが良い!!」
トランプの兵の軍隊口調の大声。
そして女王は手を上げた。
それは処刑を実行せよと言う合図だ。
「ここは私に任せなさい!!」
唯が背の羽根を羽ばたかせ、宙に浮く。
唯の体が淡い光に包まれ、羽ばたく羽根で仰ぐように黄色い光を薄く放つ鱗粉のようなものを周囲にばら撒く。
それは対象を眠気に誘う鱗粉だ。
鱗粉にて、トランプの兵士達が眠りこける。
「今だ!」
そして皆が寝ているのを見計らうとアリス達が前に出て縛られた囚人達を解放していく。
しかし…。
「この女王の前で何しようとしているのかしら?」
ハートの女王だ、煌びやかなドレスを纏い、赤い髪に王冠を被っている。
美形だが冷酷さを感じさせる目だ。
「兵士達!やっておしまい!!」
女王が大声を上げると無数の兵士達が飛んできた。
「サイコバースト!!」
義人が右手を前に突き出す、すると手の平から閃光が放たれ、それは兵士達に飛ばされて行く。
ドゴオオオォン!!
轟音と共に兵士達は弾き飛ばされる。
全員とは言わないがこの閃光一撃で二、三人の兵士には致命傷を与え、他の兵士達への威嚇にもなった。
「また呪われに来たのかい?懲りないねえ」
女王は鋭い視線を唯と義人に向ける。
義人は目は女王に向けたままアリスにテレパシーを送る。
『アリスさん!僕です、義人です、聞こえますか?』
「は…はい…」
アリスは小さく返事をする。
『僕らは囮になります、貴女は城の地下三階にある宝物庫に急いでください、そこには軍神アレンの封じられたトランプが置いてあります』
「軍神アレン?トランプ?」
『はい、大きな石で出来たトランプは鍵穴で封じられている、それを貴女の持っている鍵で開けるのです!』
「はい、でも貴方達は?」
『僕達は大丈夫です!貴女はまだ勇者の力を身につけていない、ハートの女王に立ち向かう前に軍神アレンの力を借りる必要があります!』
義人はやや口調を強める、優しい口調のままではアリスは動きそうに無い。
「…ごめんなさい…」
怒らせたと思い、やや落ち込みを見せるアリス、それに義人は気持ちばかりのフォローを入れる。
『僕を更生させてくれた事、とても感謝しています、だから、ここで犬死にして欲しくない、アレンの力を借りて女王を更生させられるのはアリスさん、貴女しかいないのです』
「わかりました…結愛ちゃん、行こ!」
「い、イエス!」
アリスと結愛は城へと急いだ。
「逃がさないよ!!」
女王は兵士を放った。
「リーフウォール!!」
その時唯がしゃがみ両手を地面に突き刺す。
すると地面からもの凄い勢いで大きな木が抜き出て来て、逃がさんとばかりに周囲を囲んだ。
実は唯は地面の草木を自在に操る異能を使う事ができる。
アゲハの姿となり新たに特殊能力のある鱗粉を操る異能も使えるようになったのはこの小説の追加設定でメインは草木を操る異能である。
唯達や女王や兵士の周りは木で覆われ、先には行けなくした。
「ここが私達のバトルフィールドよ、これで邪魔者は誰も入らず、貴方達もここから出る事は出来ない」
唯は口元だけあげ、目線は怒気を含み女王一線。
「成る程、死ぬ覚悟は出来てるわけね」
女王は余裕ありげに扇子で顔を扇ぐ。
「さあトランプの兵士達よ!生意気な異能使い二人を血祭りにあげておやりなさい!!」
女王は扇子を前に突き出し、兵士達に命令を下した。
槍を構えて唯達に突進するトランプ兵達。
「雑魚は引っ込んでなさい!リーフウィップ!!」
唯はどこからともなく蔓の鞭を発生させ、トランプ兵達に叩きつける。
蔓の鞭は生きているかのように畝り、風を切り、トランプ兵を弾く。
そして注目すべきは唯の舞、ただでさえ薄着で蝶の羽根と妖精のような姿で鞭をリボンのように操って敵を翻弄しながら咲いていく。
「僕も負けてられません!サイコソード!!」
義人は超能力から発生した剣で次々とトランプ兵を斬り咲いていく。
襲いかかるトランプ兵達をばったばったとやっつけていく唯と義人。
しばらく減った所で唯と義人は背と背を合わせて体勢を整える。
「やるじゃん♪引きこもってた割には腕は衰えてないわね!」
「ハァハァ、ありがとうございます…」
「でもこれくらいで息が上がってるようじゃまだまだね!」
唯は再びバレエダンスのような舞で鞭を操る。
そしてトランプ兵達は唯達によって薙ぎ倒され、残るはハートの女王のみとなった。
しかし女王は余裕の笑みをみせている。
「どうやら腕は衰えていないようね、しかし妾に刃向かったところでこの前のような運命を辿るのみ、この女王の力、思い知るがいい!」
「私達の役目はあくまで時間稼ぎ…生きて帰れない事は覚悟の上!」
「僕達の命の灯火が消えようともアリスは貴女を倒し、僕らの愛するWNIワールドを救ってくれる!」
「ふふふ、このWNIワールドも、勇者共も妾が蹂躙してみせるわ!」
女王は両手から黒い波動を発生させ、波動は大きな電流のようにバチバチと、手と手の間で暴れ回る。




