アリスと結愛と徳島の海
ーーー
「義人、本当に大丈夫?」
「はい、唯さんもいるし、僕は必ず女王を更生させに行きます、そして、あの…」
見送る少女に戦地に向かおうとする少年、少年はほおを赤くしながら少女に言おうとする。
「なあに?男だったらはっきり言って!」
少女は言おうとしても中々言おうとしない義人に業を煮やし、怒気を含んだ声を放つ。
そして義人と呼ばれた少年は勇気を振り絞って少女に告白した。
「百歌ちゃん、僕が女王を更生させてこのWNI世界に平和が戻ったらきっとーーー!!」
ーーー
小山義人は唯と共にハートの女王と戦ったが敵わず呪いをかけられた。
結果、唯はイモムシに、義人は海亀に変えられて人里を離れて暮らす事を余儀なくされ、森、海とそれぞれの場所へと移って鬱屈した毎日を過ごす事になった。
「Wow!久しぶりの海だー!!」
結愛は海に来てはしゃぎ回る。
「こらこら、遊びに来とんとちゃうで!」
と千恵猫。
「色々な所行ってたけど海は異世界では初めてだもんね、城に幽閉された日が長く感じたから尚更…」
アリスも微笑みをもらす。
その時、青年がアリス達の元にやって来た。
「ワオ!ハンサム♪ナンパされたらどうしよ♪」
結愛は目前に現れた美青年に思いっきり恋のドキドキを覚える。
「はじめまして、僕は小山セナ、小山義人の兄でございます」
セナと名乗った青年は深々とお辞儀をし、透き通った声でアリス達に自己紹介をする。
「私はアリ…」
アリスが言いかけた途端結愛が突然アリスの前に出て名乗りを上げた。
「ハイハーイ!ミーは鳴海結愛!ユーは一人?歳は?兄弟誰がいるの?学歴は?年収いくら?運転免許持ってるー??」
矢継ぎ早に質問を繰り広げる結愛にセナは結愛に一言。
「レディなら先に言いかけた人からさせるのが礼儀です」
ガーン!
いきなりフラれたパーフェクトガール鳴海結愛。
「わ、私はアリスです、よろしくお願いします…」
アリスは遠慮がちにセナに自己紹介を交わす。
「アリスさんですね、貴女の澄んだ瞳には強い光を感じます、貴女なら落ち込んだ小山義人の心の甲羅を解かす事も出来るでしょう!」
セナはアリスに秘められた強い力を感じ取った。
「ぐすんなんでアリスばっかり…」
「現実を受け入れるんや、そしたらちっとはまともな女になれる」
結愛は落ち込み千恵猫が結愛をたしなめる。
そしてセナはアリス達を義人に会わせに大巫女の洞穴に向かう。
洞穴にはうっすらと明かりが点いていた。
アリス達は洞穴から流れる雰囲気に戸惑いを覚え、中の唾を飲み込む。
セナは扉を開けた。
「義人、客人を連れてきたぞ」
義人の名を呼びかけるセナ。
そこには重そうな亀の甲羅を背負い、うずくまっている少年の姿があった。
甲羅を背負った少年。
顔はしばらく外にも出なかったのか青白く、目には隈を作り、少年が向けた先はパソコンだった。
「Oh…」
結愛は引いて後ずさる。
流石の更生ガールも引くほどの暗いオーラを義人は放っていた。
「あんな調子なんですよ、ずっと外にも出ず家族とも会話しようとしない」
セナはお手上げ状態といった感じで俯く。
一方アリスはこんなんじゃ駄目だと思った。
何とかして外に連れ出さなくては…!
「義人さん、私はアリス、昔は唯さんと冒険してたんですよね?それで知人に頼まれて貴方を更生させに来ました」
「ブツブツ…」
義人はパソコンに向かって何か呟いている。
「えっ?」
アリスは小声で独りごちる義人に耳を傾ける。
「勉強いっぱいするから、遊ぶなんてアホな事もうしないから…」
前世に帰ってるらしい。
「義人さん!現実に帰ってください!」
アリスは義人の肩を揺さぶる。
「はっ!?」
義人はハッと我に帰る。
「義人さん、ずっとこんな所で引きこもってはダメです!外に行きましょう!」
アリスは説得を試みる。
「無理だ…僕はこんな姿になってしまって皆んな僕の姿を見ては逃げたり笑ったりするんだ…こんな姿じゃ恋人にも合わせる顔が無い…」
義人は引きこもりならではのゴモゴモした声でもらす。
「でも女王を更生させてWNI世界に平和を取り戻す為に頑張ったんでしょう?海亀の姿になったからってなんだって言うの?」
「ほっといてくれよ!君だって僕のこんな姿はおかしいと思ってるんだろ?」
「思いませんよ」
アリスは駄々をこねる義人に熱い目線を送る。
「こんな姿になってまで世界の平和の為に戦ってきた貴方を尊敬さえしています、だから百歌さんと言う方も貴方を見ても笑いませんよ!」
「…」
義人は考える。
「やっぱり駄目だ、僕は百歌ちゃんに会えない」
「百歌さんを他の男に取られても良いんですか?」
「もうどうでもいいよ」
頑ななままでいる義人。
「なら百歌さんをここに連れて来ますか?」
「そ、それはやめてくれ!」
「それです」
「え?」
何かを確信したアリス、それを見た義人は疑問詞を放つ。
「それだけ貴方は百歌さんへの思いが強い、でも会う自信がない…でもこのままでは駄目と貴方自身がよくわかってるはずです!」
強い眼差しで放つアリス。
「…」
「ならば賭けましょう、百歌さんが貴方を受け入れたら私の勝ち、そうでなかったら負けを認めます、如何ですか?」
「…わかった」
義人はようやく首を縦に振った。
「結局結愛ちゃんは何もせえへなんだな」
結愛をからかう千恵猫。
「み…ミーは夢の中で沢山活躍したからねー、たまにはアリスちゃんにも譲ってあげようかなと…」
結愛は誤魔化す。
そんなこんなで朽木百歌と言う少女に会いに行くアリス達。
アリス達は旅の末百歌の住む街にやってきた。
アリスは百歌の写真をあてに彼女を探す。
特徴としては茶色に近い黒髪をセミロングで揃えている。
クール系の美人。
性格もクールだが男になりきったり、お茶目な所もあるという事だ。
特徴を聞く限りは親しくなれそうだと思ったアリス達だったのだが…。
とあるレストランまでやって来る一行。
建物は木で作られていてどこか牧歌的な、ヨーロッパ風の建物に懐かしさも覚えるアリス。
しかし入口までやって来ると異変が起こった。
「ちょい待ちっ!」
入口に入ろうとすると千恵猫が手を広げて止める。
「どうしたの?」
とアリス。
そこで千恵猫は適当な大きさの石をある場所に投げる。
すると…
バババン!鼓膜が破れんかと思うほどの銃声が響き
、アリス達は思わず地べたをついてしまった。
砂煙が撒き穴が空くアスファルト。
「クレイジー…何でこんな所に仕掛けが…」
「店の意味あるの?」
アリスと結愛は耳がしばらく遠くなるような感覚を覚える。
「百歌ちゃんがガンマンなんは父親の影響があるそうや、因みに仕掛けは父親がかけとるらしい」
知恵を言う千恵猫。
恐ろしい家族だな…とアリス達は思った。
そもそも何のためのレストランなのだろう?
それはWNI2を読むとわかる。
「いらっしゃいませ」
何事もなかったかのように客を迎えるあどけなさの残るウェイトレスが一人。
「貴女がひょっとして朽木百歌さん?」
「そうですが…」
百歌と呼ばれた少女は答えた。
「実は貴女に会わせたい人がおりまして…」
「…!それは誰なの!?」
突然アリスの両肩をガシリと掴み、激しく聞きだす百歌。
「い、今徳島の大巫女海岸にいます」
突然の勢いに戸惑うもアリスは答え、百歌をその海岸にある祠にまで連れて行った。
ーーー大巫女の祠
セナが待っていた。
「お久しぶりです、弟がお待ちしております」
そしてセナに連れられアリス、結愛、百歌はそこにいる義人に会いに行った。
アリスは自信ありげに答えたものの内心は不安があった。
百歌は姿を変えられた小山義人を受け入れてくれるのだろうか。
受け入れられなければアリス達の課題は失敗に終わった事になる。
そうなるとハートの女王に立ち向かう道のりは益々遠くなってしまう。




