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BOOKー神のゲーム  作者: 栞


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15/16

第十四話 北海道襲撃



⸻


午前七時。


北海道上空。


青森県第三班を乗せた、簡易飛行機が札幌へ向かっていた。


札幌まで、残り約一時間。


窓の外には、広大な北海道の街並みが広がっている。


その景色を眺めながら、一人の少年が笑っていた。


青森県第三班リーダー。


げん。


十八歳。


BランクBOOK《BLAST》。


能力――小型爆弾生成。


手のひらに収まる程度の爆弾を生成する能力。


ただし。


その小さな爆弾が持つ威力は、見た目からは想像できない。


げんは窓の外を眺めながら、楽しそうに口元を歪めていた。


「なぁ」


誰も返事をしない。


隊員たちは、げんの顔を見ることすら避けている。


嫌な予感しかしないからだ。


「俺さ」


げんが笑う。


「試したいんだよね」


「……やめろ」


隊員の一人が低い声で言った。


「賢二さんの命令、忘れたのか?」


「余計な戦闘は禁止だ」


「分かってるって」


げんは笑いながら答える。


「でもさ」


右手をゆっくり持ち上げる。


「ちょっとくらい、いいだろ?」


「よくない!」


隊員が声を荒げる。


げんの笑顔が消えた。


「……指図するな」


空気が凍る。


「お前から爆破してやろうか?」


「っ……」


隊員が言葉を失う。


他の隊員たちも黙り込んだ。


げんは再び窓の外を見る。


そして。


「実験だよ」


楽しそうに呟いた。


「どうせ守護水晶を壊したら終わりなんだろ?」


「なら」


右手の上に黒い球体が現れる。


ピンポン玉ほどの大きさ。


「多少の誤差じゃん」


げんが笑った。


《BLAST》


その能力によって生み出された爆弾。


最小出力。


《爆1》。


げんは窓を開けた。


「ほら」


黒い球体を外へ放る。


「どっかーん」


ポイッ。


爆弾が落下していく。


数秒後。


――ドォォォォン!!


地上で巨大な爆発が起きた。


炎が吹き上がる。


建物が崩れ。


瓦礫が周囲へ飛び散った。


一軒の住宅が半壊する。


げんは窓から身を乗り出した。


「……うわ」


目が輝く。


「やっば」


そして。


「すげぇ!」


まるで初めて花火を見た子供のようだった。


だが。


地上では。


人々が逃げ惑っていた。


悲鳴が上がる。


黒煙が空へと昇っていく。


隊員たちの顔から血の気が引いていた。


「おい……」


「何やってんだよ……!」


げんは聞いていない。


「次、これ」


両手を広げる。


その手の中に。


黒い球体が次々と生まれていく。


一つ。


二つ。


五つ。


十個。


「《爆2》」


げんが笑った。


「いくぞー」


十個の爆弾が、一斉に投下される。


落下。


そして。


――ドゴォォォォォォン!!


連続する爆発。


建物が吹き飛ぶ。


道路が砕ける。


炎が広がり。


黒煙が街を覆っていく。


「うはははは!」


げんが腹を抱えて笑った。


「最高!」


「BOOK最高すぎるだろ!」


誰も止められない。


止めようとすれば。


次は自分が爆破される。


それを全員が理解していた。


――その直後。


北海道全域。


すべての小型BOOKへ、緊急通信が入った。


【北海道政府・緊急通達】


【飛行物体による襲撃を確認】


【複数地点で爆発および被害が発生】


【目撃者証言】


【小型飛行機を確認】


【搭乗者全員の手首に赤色ブレスレットを確認】


【他県勢力による侵攻の可能性が高い】


【BOOK所有者は直ちに守護水晶周辺へ集合してください】


【感知班による予測】


【敵主力、札幌到達まで約45分】


通信が終了する。


⸻


その頃。


札幌市内。


陽翔は出発の準備をしていた。


本来なら。


この日は警備任務に就く予定だった。


だが。


状況は変わった。


クロが低く呟く。


『……始まったな』


陽翔は窓の外を見る。


遠くの空。


そこから黒煙が立ち上っていた。


「……本当に来たのか」


『ああ』


クロの声が冷たくなる。


『青森だ』


陽翔は黙って煙を見つめる。


そして。


振り返った。


そこには。


結衣と美月がいた。


美月は不安そうに陽翔を見つめている。


陽翔は二人のもとへ歩いていく。


「結衣」


「うん」


「行ってくる」


結衣は一瞬だけ黙った。


唇を噛みしめる。


それでも。


ゆっくり頷いた。


「……うん」


そして美月を見る。


「美月のことは任せて」


「だから」


結衣は笑った。


「ちゃんと帰ってきてね」


陽翔は何も言わず。


結衣を抱きしめた。


「……陽翔?」


一瞬。


結衣の身体が固まる。


陽翔は強く抱きしめるわけでもない。


ただ。


いつも通りの温度で。


大切な人を抱きしめた。


「絶対、帰ってくる」


結衣は陽翔の胸元に顔を埋める。


そして。


涙をこらえるように笑った。


「……約束だからね」


「ああ」


陽翔は頷いた。


「行ってくる」


玄関を開ける。


陽翔は外へ飛び出した。


その瞬間。


クロが叫ぶ。


『おい!』


「ん?」


『能力を使え!』


陽翔は走りながら首を傾げた。


「でも、コアがもったいなくないか?」


クロが鼻で笑う。


『多少減るだけだ』


『それに、お前のコア量なら問題ない』


『今は一刻を争う』


「……分かった」


陽翔は前を見る。


札幌。


守護水晶。


そして。


迫り来る敵。


陽翔の身体を光が包み込む。


「――オーバードライブ」


次の瞬間。


陽翔の姿が消えた。


地面を蹴った衝撃だけが残る。


陽翔は。


弾丸のように札幌市内を駆け抜けていった。


⸻


大通公園。


北海道の守護水晶前。


すでに多くの人間が集まっていた。


BOOK所有者。


警察。


自衛隊。


政府職員。


その数。


百人以上。


誰もが緊張した表情で周囲を見回している。


やがて。


陽翔も到着した。


「……多いな」


周囲を見渡す。


少し遅れて。


健太。


香恋も到着した。


健太が息を整えながら周囲を見る。


「思ったより集まってるな」


香恋は巨大な守護水晶を見上げた。


「……これを守ればいいんだよね」


「ああ」


陽翔が頷く。


その時。


前方へ一人の男が歩み出た。


政府関係者らしき男。


周囲が静まる。


「集まってくれて感謝する」


男は周囲を見渡した。


「私は、北海道政府防衛隊長」


一拍。


「錬磨だ」


ざわめきが止まる。


錬磨の隣には、一人のBOOK所有者が立っていた。


「現在、彼の能力によって敵の位置を把握している」


男が目を閉じる。


そして。


数秒後。


ゆっくりと口を開いた。


「……敵は六部隊」


周囲がざわつく。


「すべて札幌へ向かっています」


「到達予測は――約二十分」


一気に空気が張り詰める。


錬磨はすぐに続けた。


「時間がない」


その瞬間。


空中に北海道の地図が表示された。


赤い点が六つ。


札幌を囲むように。


こちらへ近づいている。


「BOOK所有者を六班に分ける」


「各班、敵一部隊を迎撃してくれ」


「理想は各個撃破」


「だが」


錬磨の表情が険しくなる。


「それが不可能なら足止めでいい」


「敵を一人でも多く減らせ」


「何より」


錬磨が守護水晶を見る。


「守護水晶への到達を遅らせろ」


そして。


「なお」


「十名は守護水晶防衛班として残る」


「迎撃を突破した敵は、ここで止める」


「何があっても」


「この水晶だけは守りきる」


誰も口を開かない。


やがて。


班分けが発表された。


「第三区域迎撃班」


「陽翔」


「健太」


「香恋」


「その他四名」


陽翔たち七人が顔を見合わせる。


錬磨が続ける。


「各班、持ち場へ移動してくれ」


七人は第三区域へ向かって歩き出した。


しばらくして。


大柄な男が口を開く。


「俺から自己紹介する」


男の手に巨大な盾が現れた。


「DランクBOOK《SHIELD》」


「能力は盾の生成」


「物理攻撃なら防げます」


続いて。


短髪の女性。


「DランクBOOK《HEAL》」


「軽傷程度なら治療できます」


眼鏡の男が続く。


「CランクBOOK《SONAR》」


「能力は索敵」


「他県のBOOK所有者だけを感知できます」


「感知した相手は発光して見えます」


最後に。


槍を持った男が前へ出た。


「DランクBOOK《LANCER》」


「槍を生成できます」


「そこそこ戦えます」


健太が剣を抜いた。


「俺は剣士だ」


「前線は任せてくれ」


香恋も続く。


「私は風魔法」


「援護する」


そして。


陽翔。


「俺は加速系です」


「近距離戦ならできます」


《SONAR》の男が頷いた。


「十分だな」


「前衛が三人」


「盾役」


「回復役」


「索敵」


「バランスは悪くない」


健太が笑う。


「よし」


剣を握り直す。


「やるしかないな」


一瞬。


張り詰めていた空気が緩んだ。


だが。


次の瞬間。


《SONAR》の男が顔を上げた。


「……敵反応」


全員の表情が変わる。


「近い」


「こちらへ向かっています」


陽翔が前を見る。


その直後。


――ドォォォン!!


目の前で爆発が起きた。


地面が揺れる。


アスファルトが吹き飛ぶ。


土煙が一気に広がる。


「なっ……!」


盾を持った男が構える。


香恋も身構える。


陽翔は煙の向こうを見つめた。


やがて。


煙の中から。


一人の男が歩いてくる。


そして。


「にしししし……」


楽しそうに笑った。


「オレが一番乗り」


男が両手を広げる。


その手の中に。


黒い球体がいくつも浮かび上がった。


「遊ぼうぜ」


陽翔の表情が変わる。


健太が剣を構える。


香恋が風を纏う。


そして。


煙の中から完全に姿を現した男。


青森県第三班。


そのリーダー。


げん。


十八歳。


BランクBOOK《BLAST》所有者。


最悪の敵が。


最初に現れた。

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