↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
BOOKー神のゲーム  作者: 栞


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
14/16

第十三話 お互いの侵攻



⸻


午前六時。


北海道、登別。


海岸の岩場に、淡い銀色の光が浮かんでいた。


直径二メートルほどの輪。


《GATE》。


八時間前に設置された出口だった。


そして今。


その向こう側に、別の景色が映し出される。


青森県、青森市。


海岸に設置された入口と、ついに接続したのだ。


「……繋がった」


GATE能力者の男が呟く。


その声を聞いた賢二が、前へ出た。


「全員、通れ」


五十人のBOOK所有者が、一斉に動き始める。


一人。


また一人。


次々と銀色の光を潜っていく。


数分後。


最後の一人がゲートを抜けた。


賢二も青森の海岸へ足を踏み入れる。


目の前に広がるのは、見慣れない景色。


ここから先は敵地だ。


賢二は全員を見渡した。


「確認する」


その一言で、周囲が静まり返る。


「俺たちの目的は一つだ」


賢二が指を立てる。


「守護水晶の破壊」


誰も口を挟まない。


「余計な戦闘はするな」


「無駄な消耗も避けろ」


「目的以外の人間は、可能な限り無視する」


全員が静かに頷いた。


その時だった。


「賢二さん!」


一人の少年が駆けてくる。


まだ高校一年生。


数日前まで、ただの学生だった。


だが今は違う。


CランクBOOK《CRAFT》。


能力:物質を組み合わせ、武器や資材、簡易的な構造物を生成できる。


少年の後ろには、六機の簡易飛行機が並んでいた。


金属製の骨組み。


最低限の座席。


粗末な翼。


到底、普通の飛行機には見えない。


それでも。


「これで移動できます!」


少年が胸を張る。


賢二は機体を見つめた。


「……本当に飛ぶのか?」


「はい!」


即答だった。


賢二は少しだけ機体を見たあと、地図を広げる。


目的地は札幌。


そして、その中心にある守護水晶。


「六機に分かれる」


賢二が地図を指差す。


「札幌上空から、それぞれ別の場所へ降りろ」


「水晶を囲むように展開する」


六つの地点が示される。


「着陸後は、各隊で守護水晶へ向かえ」


「敵を見つけても、必要以上に戦うな」


「水晶を壊すことだけを考えろ」


誰も反論しない。


全員の目的は同じだった。


青森を生き残らせる。


そのために。


北海道を滅ぼす。


賢二は地図を畳んだ。


「各隊リーダーは小型BOOKで連絡を取れ」


「到着したら、必ず状況を共有する」


そして。


空を見上げる。


朝日が海面を照らしていた。


「……行くぞ」


その声を合図に。


全員が動き始めた。


六機の簡易飛行機へ乗り込む。


プロペラが回り始める。


徐々に回転が速くなり。


轟音が海岸に響き渡る。


そして。


六機の飛行機が、次々と地面を離れた。


向かう先は。


北海道、札幌。


青森軍は、すでに動き始めていた。


⸻


同じ頃。


青森県、龍飛崎。


午前六時。


海から吹きつける風が、強く吹き抜けていた。


その中に。


百人近い人間が立っている。


能力者。


一般人。


学生。


会社員。


漁師。


工場勤務。


ほんの数日前まで。


戦いとは無縁だった人間たちだ。


だが。


今は違う。


全員が、これから向かう場所を知っている。


北海道。


敵の領地だ。


その中心で、ガイが静かに口を開いた。


「全員来たか?」


その問いに。


GATEから出てきたるうが答える。


「俺が最後だ。問題ない」


続いて、小型BOOKから声が返ってくる。


『先発隊も待機中です』


ガイは頷いた。


「よし」


そして。


集まった仲間たちを見渡す。


誰もが不安を抱えている。


それでも。


ここまで来た。


ガイは前を向いた。


「行くぞ」


その瞬間。


前方に青い光が走った。


一本の光が、空中へ向かって伸びていく。


《PATH》。


CランクBOOK。


能力:空中に道を作り、離れた場所まで移動することができる。


本来なら、移動を補助する程度の能力。


だが。


今日は違った。


もう一本。


別の青い光が、その道に重なる。


二人目のPATH能力者。


同じ能力を重ねた瞬間。


青い光が一段階強く輝いた。


「維持開始」


「出力、安定しています」


二人の能力者が声を上げる。


すると。


光の道が動き始めた。


まるで空中に作られた動く歩道。


足を乗せるだけで、身体が前へ運ばれていく。


しかも。


その速度は、人間が走る速度を遥かに超えていた。


「速っ……!」


誰かが思わず声を漏らす。


次々と人が乗っていく。


百人近い人間が、青い光の道を進んでいく。


空中を進む行軍。


その先にあるのは。


北海道。


そして。


敵の守護水晶。


ガイは先頭に立ったまま、前を見ていた。


その時。


後ろから声がした。


「ガイさん」


振り返る。


一人の男が、不安そうな顔をしていた。


「オレ……生きて帰れますか?」


ガイはすぐには答えなかった。


少しだけ考えて。


静かに口を開く。


「想いを強く持て」


男が顔を上げる。


「BOOKは、想いに応える」


ガイは自分のBOOKへ目を向けた。


「守りたいものがある奴ほど、強くなれる」


そして。


仲間たちを見る。


「俺にはある」


「守りたい仲間がいる」


ガイの声に、力がこもる。


「だから負けねぇ」


誰も口を挟まない。


「お前らにもあるだろ」


「家族」


「恋人」


「友達」


「帰る場所」


一人一人の顔を見る。


「それを守るために戦え」


「勝つことだけを考えろ」


「そして――」


ガイは前を向いた。


「生きて帰るぞ」


少しだけ間を置く。


「全員で」


その言葉に。


誰もが前を向いた。


ガイもまた、青い光の先を見つめる。


北海道。


そこには。


自分たちの敵がいる。


「俺たちは生き残る」


静かな声。


だが。


その言葉には、一切の迷いがなかった。


「そのためなら――」


ガイは拳を握る。


「俺は誰とでも戦う」


誰も笑わなかった。


誰も否定しなかった。


ここにいる全員が。


守りたいもののために来たのだから。


⸻


その頃。


青森軍は北海道へ向かっていた。


そして。


ARKもまた、青森へ向かっている。


互いに。


相手の守護水晶を破壊するために。


守る者と。


奪う者。


二つの軍勢が。


それぞれの敵地へ侵入していく。


神によって始められたゲーム。


そのルールに従う限り。


もう誰にも、止めることはできない。


県と県。


守るための戦いと。


奪うための戦い。


そして今。


その最初の衝突が――


静かに始まろうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。