第2話『ショタになるとか聞いてないんだけど!?』
「……で?」
桃華は机を叩いた。
「説明して」
向かい側では、
昨日まで二メートル近かった犬飼冬真が、
小さな身体で団子を食べている。
今の見た目は完全に美少年。
黒髪。
眠たそうな切れ長の目。
不機嫌そうな顔。
なのにサイズ感だけが小さい。
意味が分からない。
「なんで縮んでるの」
「燃費」
「雑!!」
冬真は面倒そうにスマホを操作した。
画面には昨日の通知。
《適合者:桃華》
《鬼ヶ島鎮圧権限を付与》
《桃印解放済》
「……桃印?」
「お前、まだ理解してないのか」
「何も説明されてないからね!?」
冬真はため息をつく。
「昔、人間と鬼が戦争してた」
「急に世界観デカくなったな」
「その時、鬼を従えたのが“桃太郎”」
「……え?」
「お前、その系譜」
桃華は固まる。
「待って。
じゃあ私、桃太郎の子孫ってこと?」
「多分」
「“多分”で済ませるな」
桃華は昨日のことを思い出す。
祖母に連れられて、
台所で団子を作っていた。
『桃華は手先が器用だねぇ』
『そう?』
『昔から“桃の子”は、手作りすると力が宿るんだよ』
『何そのファンタジー設定』
笑いながら、
一緒に丸めた団子。
妙に綺麗な薄桃色だった。
その時は、
ただの田舎の思い出だと思っていた。
「……まさか、あれ?」
冬真は頷く。
「お前が作ったから意味がある」
「え?」
「桃印持ちの手作りは特別」
「急に設定が重い」
冬真は団子を持ち上げる。
「鬼とか半妖にとっては、
魔力の塊みたいなもん」
「怖」
「普通の団子じゃ契約にならない」
桃華は昨日を思い出す。
鬼に襲われ、
パニックで団子を押し付けた。
そのあとから、
冬真は勝手に護衛面している。
「……じゃあ、
私が手作り団子食べさせたから?」
「契約成立」
「重っ!!!」
その時。
「へぇ〜」
軽い声。
振り返る。
そこにいたのは、
金髪の少年だった。
年齢は高校生くらい。
金茶の髪。
ピアス。
人懐っこい笑顔。
しかし妙に胡散臭い。
「珍しい匂いすると思ったら、
“桃印”じゃん」
「また匂い判定!?」
少年は自然な動きで桃華の肩へ腕を回す。
距離が近い。
「はじめまして、お姉さん」
「近い近い近い」
「雉野藍。
情報屋やってまーす」
冬真が無言で藍の腕を掴んだ。
「触るな」
「あ、嫉妬?」
「殺すぞ」
「ショタが物騒」
藍は桃華のリュックを見る。
「わ、桃華の手作り?」
「え?」
「その団子」
藍の目が細くなる。
「めちゃくちゃ“効く”匂いする」
「言い方!!」
藍は笑った。
「ね、俺にも一個ちょうだい」
「いや軽く言うけど、
契約になるんでしょ!?」
「うん」
「うんじゃない!!」
藍は桃華をじっと見る。
「でもさ」
「?」
「“手作り”って特別じゃん?」
「…………」
不意に真顔で言われ、
桃華の心臓が少し跳ねた。
「だから欲しい」
「その言い方ズルくない!?」
藍はニコッと笑う。
「顔がいい男の特権」
「自覚あるんだ……」
結局。
押し切られる形で、
桃華は団子を渡してしまう。
ぱくっ。
次の瞬間。
ブワッ。
風が吹き荒れる。
藍の身体が一気に成長する。
小柄な少年だった姿は消え、
長身の美青年へ。
金髪が揺れる。
背中には巨大な青い翼。
「……は?」
「契約完了」
「軽く人生巻き込まれてるんだけど!?」
冬真は不機嫌そうに言った。
「だから言っただろ」
「説明が遅いんだよ!!!」
最後。
藍は桃華へ笑いかける。
「これで俺、
正式に桃華のものね?」
冬真「殺すぞ」
桃華「待って契約の意味怖いんだけど!?」




