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女優と漫画家

 私の目の前には大女優の藍沢 朱歌がいた。


「まさかアクタが漫画家の芥屋先生だったとは」

「私もあのピエロが女優の藍沢さんとは思ってませんでしたけど」

「リアルでは美少女って言ったじゃあん」

「…‥私と同い年ですよね? 少女っていう年齢ですか?」

「うぐっ」


 私の今現在の年齢は26歳だ。ついこの前誕生日を迎えたばかりである。

 運ばれてきたコーヒーにミルクと砂糖を入れてかき混ぜる。シュカさんはケーキにフォークを突き刺していた。


「テレビとゲームでキャラ違いませんか?」

「そりゃテレビではお淑やかにするっしょ! こっちが素だよ」


 だよね。テレビが素だったら少し怖い。

 テレビではお淑やかだし……。


「なんで可愛いのにピエロメイクしてるんです?」

「女優だとバレないためにピエロみたいなメイクしてんの!」

「……リアルと同じ顔にしなきゃよかったのでは?」


 ゲームではまず先にアバターを設定する。

 色々顔とか弄れるのでまずアバターを使った方がいいのだが……。


「いや、私演技力はあっても美術力ないのよね。アバターを変に作るとぜっったいブッサイクになるから。なら元から良い顔を使った方がいいじゃん」

「ピエロメイクで隠れると思いますけど……」

「でも素顔が可愛いって方がいいじゃん?」

「まぁ」


 分からないでもない。

 漫画とかでも素顔を明かされてカッコよくなかったりしたらなんというか肩透かし感が否めない。


「アクタもなんで素顔でやってんのさ。気づく人は気づくよ〜?」

「私はメディアに顔出ししてませんから。巷では男か女か議論されてるみたいです」

「あー、なんかリプで聞いてる人もいたね」

「私の投稿見てるんですか?」

「そりゃ目に入るっしょ! 私フォローしてる人少ないし」


 たしかに何万とフォロワーがいてフォローしてる人数は2ケタくらいだったな。


「アクタもアクタでだいぶフォロワー増えたよね」

「都市おいパワーですね」

「だいぶ人気だったもんねー……。さっすが3000万部売り上げた漫画だよね」

「アニメで跳ねた結果です。すごいのはアニメですよ」

「謙遜しちゃって〜。原作ありきでしょー?」


 そう言ってくれるのは嬉しい。

 私はコーヒーカップに口をつける。その時、電話がかかってきた。

 電話先は喜谷さんからである。今日は何もないはずだが……。


「はい」

『もしもし! 今大丈夫かい?』

「息切らしてるみたいですけど何かあったんですか? 原稿に不備でも……」

『いや、原稿は素晴らしかった。暇ならば少し手伝ってもらいたいのだが』

「えぇっとぉ……」


 暇ではない。暇ではないんだけども、喜谷さんが慌てているように思える。

 何か良からぬ事態が起きたのだろうか。


「暇です」

『なら少し手伝ってもらいたいのだが……』

「わかりました。今少し外出しているので家にすぐ戻ります」

『あぁ、いや、出来ればこちらに来て欲しい。すまない……。場所は……』


 場所をメモして電話を切った。


「お仕事?」

「みたいです。すいません」

「いいよいいよぉ。漫画家も大変だね。ま、お仕事終わったらゲームしよ! いつもの待ち合わせ場所ね!」

「はい」


 私は荷物を抱え、代金を支払って駅の方へ向かっていったのだった。









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