31.狐と狸の楽しいお茶会
主人公の自国語は「」、は外国語は<>で表記しています。
さらに別の言語が出てくるときは{}で表記しています。
モントリヒト内の来客用応接室。
ワン氏の護衛二名の内、一名は扉の外で待機、もう一名はワン氏と共に入室し、ソファに座ったワン氏の後方に控えている。
こちら側は、所謂お誕生席にあたる一人掛けのソファにお義父様、ワン氏の対面に位置するソファに私とカルロが並んで座り、その後方にフリオとメイが控えている。
レイは、扉の外にワン氏の護衛と共に控えている。
メイには、室内でのやり取りを全て感応でレイに共有するように指示してあるので、何かあった際にも迅速な対応が可能な布陣となっている。
何も無いに越したことは無いけれど、『常に最悪を想定して動かないと大事な者は守れない』とお祖父様に叩き込まれているからね。
カルロもメーア王国に来る度に、お祖父様とヴォルフ兄様に『マリーナの婚約者ならあらゆる事態に対応出来ねばならん!』って海に連れて行かれてたし、小さい頃から商船に乗っているから、そのあたりは二年間の付け焼き刃の私よりもよっぽど徹底していると思うわ。
さて、それでは色々と気になっていることをお聞きせねば!
◇◇◇
メイが厨房から送られてきティーセットをセッティングし終わって、私の後方に下がったタイミングで、ワン氏がこれ以上好奇心を抑えきれないというように興奮した様子で話し始めた。
<この部屋に着くまでも興味深いものがたくさんありましたが…それは、後ほどじっくり教えていただくとして。このティーセットは、どうやってここに運ばれたのですか!?壁から出てきたように見えましたが、隣に厨房があるのでしょうか!?>
お、おぅ。めっちゃ前のめりで聞いてくるね…。
まあ、実家のみんなや、フェレーリ家のみんながこの仕組みを初めて見た時の反応も、似たような感じだったからこのあたりでは珍しいのかな~とは思ってたんだけど、世界中を回っているワン氏も知らないっぽいね。
<ふふふ。隣には厨房はありませんよ。厨房はここの真下にあります。そしてあの壁の中には、真下の厨房と繋がる煙突のような空間があって、そこを通して厨房とこの応接室で物の行き来が出来るようになっています。先ほどの様に厨房からティーセットや料理を送って貰ったり、使用済みの食器やカトラリーをこちらから厨房に送ったり出来ます。『配膳用昇降機』と我々は呼んでいます。>
<何と!?物を行き来させる事が出来るとは…なんと画期的な!?『配膳用昇降機』とは、どのような仕組みなのでしょうか!?>
前世日本人の私からすると、配膳用エレベーターの発想は特に珍しいものでは無かった。
小学校の給食室とかにもあったしね。
まあ、でもこれは最初から設計してたわけじゃなくて、魔石を使用した浄化温水システムを構築した際に、出来そうだよね~って説明したら、本当に出来ちゃった副産物的なものだったんだけどね…。
仕組みは単純で、魔石による加熱器でお湯を作る際に発生する蒸気を利用してプロペラのような羽を高速で回し、その回転エネルギーから得られる動力によって、配膳用エレベーターを上下させている。
仕組みを簡単に図を書いて説明すると、私が書いた図を手に持って熱心に見つめるワン氏の目がキラッキラになった。
分かる、分かるわ~!
新しい技術とか知識と出会うとワクワクしちゃうよね~。
<この技術に関しては、メーア王国と技術協力をしてくれたアズリア王国、資金提供をしてくれたムリーノ王国で特許登録していますので、もしご自身の船やお屋敷への導入をお考えでしたら、確認してみてください。でも、まだ新しい技術で魔石のエネルギー効率があまり良くないので、かなり大きな魔石が必要となりますし、大型貨物や人を乗せられるほどの動力までは得られていないので、その点はご承知おきください。>
一応、この世界にも特許の概念はあるのよね。
でも、割と技術は見て盗むものだ!って考えが古い職人にはあるから、よほど貴重な技術や権利しか登録していないし、国ごとに登録が必要なので、あまり普及していないみたい。
それでも、何もしないよりはトラブルを避けられるので、造船に関わった三国で魔石機関(船の動力と温水浄化システム)に関する技術は登録済だ。
登録された技術の詳細を得るには、登録されている国の商人組合に登録して、情報料を払うことで情報を買うことが出来る。
そして、実際にその技術を使用する場合は、さらに技術使用料を登録者に払う必要がある。
なぜ、情報料と技術使用料が分かれているのかというと…。
情報を買ってみたものの、資金力や人材不足などで技術の再現がすぐに出来ないこともある。
そのため使用料を別に設けて、実際に使用する時に支払う形式になっているのだ。
それらの金額の設定も、情報の登録時に行われているので、購入者はそれぞれの金額を事前に確認して、納得の上で購入しているため、あとから金額でトラブルになることはほとんどない。
ちなみに、情報を買った人が内容を転売してしまうと、発覚した時点で全大陸の商人組合から登録解除されてしまう。
それは、商人としての信用を失うという事なので、全ての国で商人として活動することが出来なくなる。
信用第一の商人にとって致命的となるため、そんなリスクを冒すものはほぼいない。
まあ、この船に使用している魔石機関は見ただけで真似出来るものではないんだけど。
どこの世界にも、『その技術を先に作ったのは自分だ!』とか後から言うヤツっているからね…。
<特許登録してくださっているのですな!もしかして、さきほどこの船の技術は秘匿していないと仰っていましたが、他の新しい技術も登録済ですかな?>
<ふふふ。さすがワン氏。仰る通り、この船に関する新しい技術は全て三国にて登録済ですので、気になるものはぜひ情報をお買い求めくださいませ。>
<なるほど、そうすると情報料と技術使用料がそちらに入る仕組みですな。しかし、分かっていてもこの技術を直に見てしまえば、手に入れずにはいられません!これは商人として一本取られてしまいましたな。>
<< ははははは(ふふふふふ)。 >>
狐と狸の化かし合いのような二人の会話に、お義父様は呆れた様に、カルロはマリーナが楽しそうで良かったと微笑んで、一見和やかなティータイムは過ぎてゆくのだった。
最後まで読んでいただきありがとうございます(ღ˘⌣˘ღ)




