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言の葉の家へようこそ ~異世界の言葉がわかる転生令嬢、各国を巡る~  作者: 菖蒲月
第二章 邂逅編 ーひらかれる世界 ー

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26.お披露目会③

主人公の自国語は「」、は外国語は<>で表記しています。

 リモーネの郷土料理を心ゆくまで堪能して、満足げに食後のお茶を飲んでいた私たち。


 これなら、この後に押し寄せるであろう人々とも、しっかり戦えそうだと安堵していた矢先。


 本来なら掛かるはずのない声が間近から、とんでもない声量で掛かった。


<カルロ殿!!立派になられましたな!ダミアーノ・ド・ベルトリーニ、本日は自慢の娘タチアナと共に馳せ参じましたぞ!お小さい頃からタチアナと仲睦まじく遊んでおられた姿は、今でも鮮明に焼き付いております。いやあ、懐かしい!!>


 あまりの大声に耳がキーンとしてしまった。

 いやいやいや…どこから突っ込めば良いのやら…。


 座して飲食中の者に招かれてもいないものが声を掛けることもマナー違反だけど、それ以前のマナーとして、飲食中はあまり大きな声で話さないことは、子供でも知っている当たり前すぎるマナーだ。


(子供のうちは話が楽しくなってしまうと、ついつい声が大きくなってしまうこともある。だから、適度な声量で相手を不快にさせないように会話と交流が出来るように、家族とのお茶や食事の場、親が見守る子供同士のお茶会などで、そういった場面での過ごし方を学ぶのが普通なのよね…)


 突然の大声と、信じられないレベルのマナー違反に、私もカルロも一瞬呆然としてしまった。

 まさにその一瞬で、今度は甲高い女性の声が響き渡った。


<まあ、お父様!仲睦まじいだなんて恥ずかしいわ!だけどそれを、自分が婚約者だと信じている方の前で仰るのは意地悪というものでしてよ!>


<おお、そうか!それは可哀想なことをしてしまったな!!失敬、失敬!!!>


 なるほど。

 大きな声でカルロとの関係をアピールして、婚約者(マリーナ)とは一時的な関係で自分(タチアナ)が本命なのだと言いたい訳ね。


 さて、こちらからテーブルに招いていない以上、無視しても構わないんだけど、カルロはどう判断するかな?


 そう思って、カルロに視線を向けると、とんでもなく冷めた目(うん、あの目で見られたら凍りそうね)で、大声親子を見ていた。


 私の視線に気付いてこちらを見たときには、さっき見たものは幻だったのかと思うほど、熱のある蕩けそうな目で私を見て、親子に分からないようにだろうメーア王国語で話しかけてきた。


「マリーナ、ごめんね。いきなりとんでもない非常識な虫が出てきてしまった。あまりの自体に反応が遅れてしまったよ…。」


(一瞬でも呆気に取られてしまったのが悔やまれるな…。それにしても最初からとんでもないのが来たものだ。兄上と父上がこちらを見ているな。この程度なら僕とマリーナで問題ないだろうし、大丈夫と合図をしておこう)


「いや~これは予想出来ないわよ。私も驚いて一瞬思考が止まっちゃったもの。貴族なら子供でもしないレベルのマナー違反を堂々とする人がいるなんてね…。それよりどうする?マナー的には無視しても問題ないと思うけど。」


「そうだね。明らかなマナー違反だし、僕らが無視しても咎められることはないね。とはいえ、このまま彼らを放置すると似たような虫が湧くだろうから、僕らの意思は示しておこうか。」


「そうね。最初にしっかり線引きをして、超えてはいけない線があることを示しておいた方がいいかもしれないわね。」


 カルロと大声親子の対応について話していると、また近くで女性の金切り声が聞こえた。


<ちょっと!!なに、分からない言葉で話してるのよ!ここはムリーノ王国なのよ!こちらの言葉で話しなさいよ!まったく、非常識なんだから!!>


 うん、非常識なのはあなただよ…。

 それにしてもいい加減、普通の声量で話せないのかしら…耳が痛くなるわ。


<ねえ、カルロ。こちらの方達は正式にご招待されている方達なの?>


 とりあえず、彼女の言葉を無視してカルロに問いかける。

 すると、カルロはこちらの調子に合わせるように話し出した。


<そのはずだよ。リストにはさっき叫んでいた名前があったからね。彼らが本人で間違いないのならだけど。>


<そうなの…。可笑しいわね。>


<何が可笑しいんだい?マリーナ。>


<だってパーティーを準備して下さったお義母様が『()()()()()貴族、()()()リモーネの役職者達、()()()商人達を招待した』って仰っていたのよ。それなら、この事態は可笑しいでしょう?>


(ふふふ。こう言っておけば、このあとお話する予定の人達も、良識のある貴族、健全な役職者達、堅実な商人達としての枠を超えた対応は出来なくなるでしょう?ここに居るって言うことは、そういう事よね?って先に突きつけてしまえば、相手のプライドが高ければ高いほど、その枠から外れた行動は出来なくなるものね)


 カルロも私の意図が分かったのか、にっこりと微笑んで


<なるほど。それは確かに可笑しいね。じゃあ、彼らは貴族を騙る偽物かもしれない。良識のある貴族なら、こんな子供でも知ってるレベルのマナー違反をする筈がないからね。>


<<な!?>>


 カルロと私の会話を聞いていた大声親子が、怒りの形相で顔を真っ赤にしている。

 今にも爆発しそうな状態だが、何とか怒りを抑えたのかダミアーノが震える声で言う。


<カルロ殿!未来の義父であるワシに何てことを言うのですか!娘のために我慢していますが、こんな辱めは許されることではありませんぞ!!>


<そうよ、カルロ様。お父様に何てことを言うのよ。ちゃんと未来の義父として敬って貰わなくては困るわ!この屈辱に対する詫びは、そこの偽物が付けているピンクパールのアクセサリーで許してあげるわ!>


 ――ぷちん!


 頭の可笑しい親子が言うことなので、未来の義父やら、偽物呼びも特に気にしていなかった。

 だけど、お義母様に頂いた『ピンクパールのアクセサリー』をよこせと言われた瞬間。


 自分の中で何かが切れた音が聞こえた。

 ゆっくりと立ち上がり、アクセサリーをよこせと言った娘の前に歩み寄る。

 

<正式なご挨拶を受けていないのでどなたか存じませんが、あなた方はお帰り頂いて結構ですわ。本日は私とカルロの婚約者としてのお披露目の場なのです。そんな大事な場に、基本的なマナーも守れないような()()()()()は必要ございません。ステフお義母様が娘になった証にと、プレゼントしてくださったアクセサリーをよこせなどと、恥知らずな発言をするような方とは今後一切の交流は致しませんので、そのおつもりで。では、ごきげんよう。>


 そう言って、私の武器の一つである極上のカーテシーをする。

 私のマナー教師をして下さった高齢の夫人は、いまは引退しているが現役の時には王族の方にもマナー指導をしていたという、マナーには厳しいと定評のある方だった。


 その方に授けて頂いた『極上のカーテシー』

 

 それを受けた親子も、周囲で様子を窺っていた人々も一斉に息をのんだ。

 それはあまりにも美しく全員を魅了し、それでいて他を圧倒するようなカーテシーだった。


(流石は僕のマリーナだ。あっという間に場を掌握してしまった…。さて、マリーナにばかり任せていては、伴侶として情けないから、ここからは僕が頑張らないとね。あの親子の目を見る限り、まだ完全には折れてないみたいだからね…。迷惑な妄想をまき散らして、マリーナを偽物と呼んだこと、母上の(マリーナ)への思いを穢そうとしたこと、絶対に許さないよ…。)

 

最後まで読んでいただきありがとうございます(ღ˘⌣˘ღ)

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