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言の葉の家へようこそ ~異世界の言葉がわかる転生令嬢、各国を巡る~  作者: 菖蒲月
第二章 邂逅編 ーひらかれる世界 ー

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12.言の葉に潜む棘

主人公の自国語は「」、は外国語は<>で表記しています。

さらに別の言語が出てくるときは{}で表記しています。

 やってきました言の葉の家(ハウス)の視察日!


 予定外の事態で延び延びになってしまっていた予定でしたが、待ちに待った視察なので朝からワクワクが止まらないマリーナです。


 王家の末姫様は、昨日で視察の日程を終えて、王都に戻られたらしいので、ばったり遭遇の危険性は無いみたい。


 ゆっくり視察が出来そうで良かった〜!!


 わざわざ来られていた末姫様には申し訳なかったけど、カルロが会いたがっていない以上、私から強制することでは無いしね。




 こちらの言の葉の家(ハウス)は、バイエルン領やアイヒベルク領とは違って、文字を学ぶ基礎が全く無い状態からのスタートだった。


 それを、バイエルン領やアイヒベルク領でのやり方を元に、カルロやステフ小母様が工夫をして推めた結果、目覚ましい成果を挙げているとの報告を聞いていて、視察するのをとても楽しみにしていたのです。


 

◇◇◇


 

<マリーナ、楽しみにしていたのに、視察が遅くなってしまってごめんね…。(我儘姫もわざわざこの時期に来るなんて最悪だよ。マリーナにみてもらいたくて頑張ったんだから…。)>


 遅くなったことを申し訳なく思っているのか、ションボリした様子でカルロが謝ってくる。


<カルロのせいじゃないわ!それにカルロにあちこち連れていって貰えたから、とっても楽しかったし、嬉しかったわ!この二年は、鍛錬や勉強が忙しくて、遊んでいる暇はほとんどなかったんだもの。>


<そう言って貰えると嬉しいよ!僕もマリーナと一緒に出かけるのは楽しかったから、旅の間にも色々な所に一緒に行こうね!(ハグや手をつなぐことは当たり前だって信じてくれたから、あちこちで恋人達のデートのように見られただろうし、王家の我儘姫もこれで諦めるだろう)>


 お互いに内心で思っていることは違っているが…結果的に一緒にあちこちに出掛けられたことで、婚約者としての絆も深まったと思っており、上機嫌な二人だった。


 しかし、このあと我が儘姫の残した悪影響から、思いも寄らない展開に見舞われるとは、誰も想像だにしてしなかったのだった。



◇◇◇



 リモーネの『言の葉の家(ハウス)』は、アンカーと同じように港の船着場にほど近い倉庫を改装して作られていた。


 二階建の清潔感のある建物で、二階はスタッフの待機スペース 兼 勉強スペースとなっており、依頼者が居ない時は、ここで新たな言語の勉強や、より専門的な用語の勉強などをする事が出来るようになっているみたい。


 ちょうど、大型の外国船は今朝方にほとんど出港しており、次の船が来るまではあまり忙しくないそうで、いまはみんな意欲的に勉強をしているタイミングなのだとか。


 今日はカルロと二人での視察なので、カルロの案内でハウスの中を見せてもらっていた。


<みんな、いつもお疲れ様。勉強中に申し訳ないが、少しだけ耳を傾けてほしい。こちらの方は私の婚約者で、メーア王国バイエルン伯爵家のマリーナ嬢だ。この『言の葉の家(リングア・ハウス)』プロジェクトの発案者で、メーア王国のハウスの陣頭指揮を執っている素晴らしい方だ。>


<ちょっと…カルロ!そんなことまで言わなくても良いのに…。>


 思わぬカルロの褒め殺しに赤面し慌てるマリーナだったが、カルロはこのくらいは当然!とばかりの態度でいるので、余計に羞恥心が湧いてくる。


<えー、ご紹介にあずかりました、カルロの婚約者のマリーナ・フォン・バイエルンと申します。メーア王国のハウスの子達もとっても頑張ってくれて、素晴らしいハウスになっていると思っています。こちらのハウスも負けないくらい素晴らしいと聞いていますので、ぜひ皆さんの勉強の様子を少しだけ見させてください。分からないことがあれば、どんどん聞いて下さいね!>


 私の自己紹介が終わると、パラパラとあまり気のない拍手が送られた。


 領主家の直系の婚約者にするにはおざなりな反応に、カルロやメイ達がムッとした気配を感じた。


 でも、私自身は勉強を邪魔されて気が乗らなかったのかもしれないな、と思っただけだったので、特に咎めたりするようなことは考えていなかった。


 ほんとうにカルロもメイ達も私に甘いんだから、と小さく息をついた。

 それでも、彼らの目が少し冷たいような気がするのは…気のせいかしら?

 


◇◇◇



 その後、カルロと施設内を見たり、これまでにこなした依頼の内容を確認したり、充実した視察になっている。


 リモーネでは西大陸のホンスーとの距離が近いため取引も格段に多い。


 そのため、ホンスーの言語を学ぶものが多いが、学んでいるのはほとんどが男の子だった。

 どうやら、ホンスーでは男性優位の考え方が根強く、女の子や女性が表だって行動することに対しては、あまり良く思われないのだそうだ。


 私が最初に読んだのは従軍医師が記した『薬食同源』という本だったし、文化的な背景や思想なんかは後から学んだのだけど、他の国とは男女の役割がかなり明確に別れている国みたい。 

 

 次に向かう国としてホンスーを考えているけど、もしかしたら私が「女」であることが原因でトラブルになるかもしれないわね…。


 船長(ノーラン)やメイ達、護衛達にもしっかり共有しておかなくちゃ。

 

 余計な揉め事は起こしたくないから、他国ではその国の決まり事は基本的に守りたいけど、あまりにも私の権利や身体に害となるようなら、抗う覚悟も持たなくてはいけないわね。


 私が侮られるという事は、船全体ひいてはメーア王国が侮られる事にも繋がりかねないもの。


 まあ、まずは長年取引をしている小父様達の意見を聞いて、しっかり準備しましょう!

 


 カルロが施設長と少し打ち合わせをすると離れたので、私は勉強中の人達の元に様子を見に行った。


 午前中は大きな子達が、小さい子達に教えてあげるスタイルになっているんですって。

 午後は、各自依頼をこなしながら、手が空けば自分の学習を進める。


 実際に依頼をこなすことで、新たな課題が見つかったりもするので、とても合理的なスケジュールになっていると思う。


 このあたりは、メーア王国でも変わらないわね。

 でも、勉強している手元を少しのぞかせて貰っているけど、メーア王国とは取引の多い国が違うから、扱っている言語の種類が違っていて、とても面白い。


 ニコニコしながら、みんなの勉強の様子を見守っていると、14歳くらいの青年が声を掛けてきた。


<さきほど、分からない事は聞いてと言っていましたが、本当に聞いて良いんですか?>


 なぜか挑発的な表情と口調。

 メイ達が少し反応したけれど手で押さえて、青年から目を離さずに<何でもどうぞ。>と答える。


{じゃあ、遠慮無く。ホンスー語を勉強していますが、男性優位社会について答えてください。}


 なるほど、彼はホンスー語を学んでいるのね。

 男性優位社会についてとはどのような意味合いなのかしら…。

 一般的な男性優位社会の考えではなくて、私の意見が知りたいってことなのかしらね?

 それにしても、『答えください』とは随分乱暴な聞き方ね。


 彼に対してどう答えるかを考えていると、彼は私がホンスー語を理解出来ないと思ったのか、


{やっぱり、分からないんだな。このまえのお姫様と同じで口だけなんだ。これだから女はダメなんだよ…。頼むから勉強の邪魔をしないでくれよな。}


 にこやかな表情のまま、彼はそう言った。

 こちらが言葉を理解していないと思っての暴言。

 

 ホンスー出身のメイ達からいつも以上に表情が消え、瞳の奥に怒りが宿った。


 うーん、私としても彼の発言には、思うところがあるので反論することは吝かではないのだけど、『お姫様と同じ』って発言が少し気になるのよね。


 まあ、このまま黙っている私では無いけれど、その前に少しだけ確認しましょうかね。


 カルロが戻ってくる前に解決しないと、私には甘すぎるくらい甘い婚約者様が何をするか分からないしね…。

 

最後まで読んでいただきありがとうございます(ღ˘⌣˘ღ)

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