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言の葉の家へようこそ ~異世界の言葉がわかる転生令嬢、各国を巡る~  作者: 菖蒲月
第二章 邂逅編 ーひらかれる世界 ー

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11.手つなぎとハグは当たり前なのです

主人公の自国語は「」、は外国語は<>で表記しています。

 フェレーリ侯爵家に到着してから数日が経過。

 毎日、楽しく色々な場所を視察してるマリーナです。



 到着した日には、フェレーリ侯爵家で『歓迎会 兼 親睦会』をしてくれた。

 リモーネでの事業に関わっている人物もたくさん紹介してもらったので、あちこち視察をさせてもらう約束をした。


 みなさん優秀な方で、カルロやパオロ様と事業を行っている方々なので、私を子供だと侮る人はおらず、とても有意義な親睦会となった。


 これも、カルロやパオロ様が真摯に事業に向き合った成果なんだと思うと、なんだか私まで誇らしく思えて嬉しくなっちゃった!



◇◇◇



 まずは、レモンの加工場やその他の保存食の加工場などを視察したが、アンカーの加工場と引けを取らない管理体制があって、さすがフェレーリ家だと安心した。


 保存食に関しては、アンカーで考案して、そのレシピと経過観察記録をフェレーリ家とアイヒベルグ家に共有しているので、基本的には同じものが出来るはずだが、どうしてもその土地の気候などで管理の難易度などが変わってくる。


 そのため、その場所にあった保存食の開発ができればと常々思っていたのだ。


 これは、今回料理長として同行してくれているカールも同じ考えだったので、カルロやパオロ様には事前に相談して、カールと助手二名を加工場の視察に同行させてもらった。


 視察の際に加工場の責任者に話を聞くと、こちらから提示したレシピ通りに作っても、経過観察の段階で違った反応を見せるものも一部あったらしい。


 それらに関しては何が原因なのかを洗い出して、外的(室温や湿度)・内的(同じ野菜だと思っていても育った環境で成分や性質が変化している)に様々な検証のうえ、少し違ったレシピになっているものもあるらしい。


 同行していたカールは、その独自性や検証の結果に大興奮で、責任者を質問攻めにしていたが、責任者の方も似たような感覚の持ち主だったみたい…。

 

 お互いに持っている知識や経験をフル活用して、リモーネ独自の保存食の開発をすることに意欲を燃やしている。


 今も責任者の案内で市場に出向き、地元民が好む食材や、民間療法などで取り入れられている食材を中心に集めてきて、あれこれとレシピの模索に忙しくしているらしい。


 うん、カールのことは放っておいて大丈夫ね。



 レモンの加工場については、もともとの産地でもあるこちらの方がレシピが豊富で、他の保存食とは違って、リモーネからアンカーにレシピと経過観察記録を流してもらっている。


 民間療法を参考にしたレシピも多い。

 科学的な根拠なんて何もないはずなのに、調べてみると薬とはいかないまでも、それなりに効果実感が見込めそうなものもあるのだから、昔の人の知恵ってすごいな〜と只々感心するばかりだわ。



◇◇◇



 一週間ほど掛けて、加工場の視察が一通り終わったところで、残りの視察予定先は『言の葉の家(ハウス)』のみとなった。


 本当は、真っ先に視察に向かいたかったんだけど、ちょっと予定外の事態が起こったのよね…。


 いま、リモーネにムリーノ王国王家の末姫様(御年13歳)がいらしていて、ハウスの視察をしているらしいの。


 それというのも、ムリーノ王国の王家は末姫様とカルロを婚約させて、『食事療法』に関する権利に食い込みたいみたい。


(そりゃあ、まだまだ情報は小出しにしてるみたいだし、保存食の輸出などでの利権も絡んでくるから、王家にしたら金のなる木に見えるわよね…)


 私との婚約前にもカルロに婚約の申込みがあったそうだけど、当時は『食事療法』が発表されたばかりで、権利保全のために権利を保有している三家で婚約を結ぶ方向でまとまっている、というていで断ったらしい。


 確かに、ヴォルフ兄様とフラン従姉様、私とカルロが婚約したので、実質権利を持っている三家がお互いを守る(見張る)意味での婚約と見えないこともないのよね。


 実際は、ヴォルフ兄様とフラン従姉様はラブラブだし、私とカルロも仲良しだから、政略的な意味は全くない。

 

 だけど、外から見たら意味のある婚約だと理解してもらえる形にはなってるから、()()()()()()()()()手を引いてくれるらしい。


 王家としてもそれで一旦は引いたものの、その後の動向もチェックしていたのか、婚約者同士での交流がない(手紙のやり取りもなく、会ってもいない)様子から、直接アプローチをすればこちらに引き込める可能性があると判断したのだとか…。


(手紙は、ラオ便で頻繁にやり取りしてたけど、ラオ便は三家での秘密の通信手段だからね〜。頻繁に連絡取れるから直接会ってなくても、情報のタイムラグは殆ど無いし気にしてなかったけど、外から見たら確かにお互いを尊重していないように見えるのかも…。カルロの虫除けの役割もあったのに、役立ってなかったなんて不覚だったわ…)


 ちなみに末姫様は、王子が三人続いたあとの待望のお姫様だったらしく、たいそう王家の皆様から可愛がられているみたい。


 『うちの末姫に直接合えば好きにならない訳ないし、絶対婚約解消するよね!』っていう王家の考えみたいだけど…。


 この話を聞いたカルロは見たことがないくらいの無表情。


 無理やり姫様に謁見させられたことも会ったらしいけど、面倒だとしか思わなかったらしい。


 <一方的に自分のことを話し始めて、こちらの反応はお構いなしだし、私の話を貴方が聞くのは当然って話し方で、本当にウンザリだったよ…。(あんなのに時間を使うくらいなら、マリーナに手紙を書いていた方が間違いなく幸せだよ)>


 本当にウンザリしているのがよく分かる表情と仕草で、ため息と共にそう教えてくれた。

 


 あまりカルロのそういった様子を見たことが無くて、パオロ様に聞いたら、カルロは身内や親しい人以外には、基本的に無表情か、面倒そうに顔を顰めるかの二択なのだそうだ。


 え!?それは一体誰のこと???


 私の前ではいつもニコニコしていて、機転が利いて、優しい紳士のカルロだよ!?


 私の知るカルロとは別人のような様子にびっくりしていると、パオロ様が苦笑して、


<カルロにはマリーナ嬢だけが特別なんだよ。婚約者という立場もマリーナ嬢に集る虫を排除するだけじゃなく、誰よりも側にいる権利が欲しくて必死にしがみついているんだ。マリーナ嬢にも恐らく、メーア王国や近隣国の王子や高位貴族からの縁談が来ていた筈だからね。兄から見てもカルロは超優良物件だと思うから、婚約者としてのカルロの頑張りも見てやってくれると嬉しいよ。>


 カルロがそんな風に考えていたとは知らなかった…。

 カルロは大事な友達として仲良くしてくれていて、お互いに正式な婚約者が決まるまでの虫除けなんだと思ってたけど…違うのかな?


 でも、カルロ本人から聞いた訳じゃないから、決めつけることはできないわよね。

 パオロ様の勘違いって可能性もあるもの!

 

 でも、この旅の中でカルロと私の関係は新たな局面を迎えることになるかもしれない。

 そんな予感に少しだけ、胸がざわついた…。


 それが期待なのか不安なのかは、私にはまだわからない…。



◇◇◇



 末姫様と私やカルロが遭遇しないように、フェレーリ侯爵家が配慮してくれたおかげで、警戒してどこにも出掛けられない!っていう事態にはならなかった。


 それでも、向こうはこちらのスケジュールを探っていたみたいね。


 フェレーリ家の方が上手で、日程を直前でずらしたり、偽情報を流したりして、巧みに誘導してくれたおかげで、気兼ねなくカルロとあちこちに出かけることができた。



 そういえば、港で最初に馬車に乗り込んだ時に、いつの間にかカルロと手を繋いでいて驚いたんだけど、ムリーノ王国の恋人達や、婚約者間では珍しいことではないんですって。


 むしろ手を繋いでいないと関係性が希薄なのでは…と疑われるらしいの!

 それを聞いて以来、カルロと一緒にいるときは常に手を繋いでいるわ。


 ハグだって、小父様や小母様、カルロともするから慣れてきたしね。

(パオロ様だけは、カルロがダメって言うのよ…。仲間に入れて欲しそうに見ているパオロ様が可哀想だけど、カルロに嫌な思いをさせるなら仕方ないわよね?)



 カルロの気持ちはまだわからないけど、私との関係を大事にしてくれていることは間違いない。


 それなら、私もカルロとの関係を守れるように努力するだけよね。


 カルロと手を繋ぐのは安心できるし、ちゃんと虫除けの役割も出来るから一石二鳥だわ!


 上手く役割を果たせていることに上機嫌なマリーナだったが、カルロの思惑通りにコントロールされていることに気づいていない様子に、パオロが気の毒そうな視線を向けていることには一切気付いていなかった。


([パオロ心の声]あーあ、やっぱりこうなったか。マリーナ嬢ってば、頭は良いのにこういった方面には激弱なんだから…。まあ、カルロがマリーナ嬢の不利益になることをするはずないから、そういう点では心配はしてないけどさ…。)


 さて、明日はやっとハウスに視察に行けるらしいし、どんな感じになっているのか楽しみだわ〜!

 

最後まで読んでいただきありがとうございます(ღ˘⌣˘ღ)

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