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言の葉の家へようこそ ~異世界の言葉がわかる転生令嬢、各国を巡る~  作者: 菖蒲月
第二章 邂逅編 ーひらかれる世界 ー

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4.驚きのメンバー紹介と、旅立ちのとき

メンバー紹介の回になるので、役職名や人名が多めですがご容赦ください(o_ _)o

 お父様の深い愛を感じる船内ツアーを終えて、甲板にやってきたマリーナです。


 甲板では、お祖父様とヴォルフ兄様の他、今回乗船するメンバーが勢揃いしていました。



「マリーナ。『モントリヒト』の要となるメンバーを紹介しよう。」


 お父様の言葉に合わせるように、甲板に並んでいた人々が一斉に姿勢を正した。


 船員達、魔石技師、料理人、船医、商会の職員、そして海兵隊。

 

 総勢52名。この人数は、決して多くはない。

 むしろ、この船の規模としてみれば少ないくらいじゃないかと思う。


 ただ、搭載された新技術や、この船の持つ役割と機能によって、必要な人員がかなり縮小されたのだとか。


 そのお陰で、生活空間となる部分も余裕をもって使えるようになり、長距離を移動するための拠点として、これ以上無いほどの安全・快適な船となったのだ。



「『モントリヒト』船長を務めます、ノーランです。」


 一歩前に出た男性が、深く礼を取る。


「航海中の船のことは、私にお任せください。また、私に何かあった時は副船長のデニスが指揮を執ります。甲板作業は甲板長のオレグが、魔石機構は技師長のジルが、船内の食と衛生は料理長のカールと船医のフランクが管理いたします。」


 船長の紹介に合わせて、紹介された人間が礼を取る。

 私はそれを頷きと共に受け、彼らの役割と名前を頭に入れていった。


 彼らの下にはそれぞれ補助をする人員が付いているが、今は主となるメンバーのみの紹介となるようだ。



「マリーナ・フォン・バイエルンです。」


 姿勢を正し、彼らに向かって敬意をもって礼をする。


「これから長い旅になります。至らないところも多いと思いますが、どうぞよろしくお願いします。」


 私が挨拶した瞬間、それまで少し硬かった甲板の空気が柔らかくなったように感じた。


 これは…とんでもない我が儘娘がくると思ってた感じかな?


 まあ、この船を見ればそうなっても可笑しくないか、と苦笑が漏れた。

 娘のために最新技術盛り盛りの新しい船を造っちゃってる訳だし、我が儘言って旅に出る身だから否定もし辛いわね。



「こちらこそ。必ず、良い旅にいたしましょう。」


 そう言って、右手を差し出した船長としっかり握手をした。

 なんだか、船の一員として認められた気がして、とても嬉しくなった。


 それから、船員達は出港の準備のために、各自持ち場に戻って行った。



 彼らの背中を見送りながら、先ほど紹介されたメンバーの中に意外な人がいてビックリしたことを思い返していた。


 カールったら何してるんだか…。


 料理長として紹介されたカールは、保存食の加工場が出来た当初から手伝ってくれていた孤児院の子で、言の葉の家(リングア・ハウス)で基本的な言語は学んだものの、そちらより料理に興味が強い子だった。


 加工場を仕切ってくれていた元商船の料理長だったお爺さん(みんなからオジイと呼ばれている)から、一番熱心に指導を受けていて、加工場の若手の中では一番知識と技術を持っているので、次の加工場の責任者にと思っていた人材でもあった。


 そんな彼が何故この船の料理長としてここに居るのか…。


 そんな気持ちでカールを見ていたらと、彼もこちらを見ていて、目が合うとニヤリと笑った。

 その表情からは『保存食の事なら俺以上に詳しいヤツなんか居やしませんからね。』という、カールの気持ちが伝わってきた。


 まあ、確かにカール以上に詳しいのはオジイくらいだものねと、苦笑が溢れた。


 それでも、今まで内緒にしていたことや、加工場の事も気になるので、後で詳しい話を聞きますからね!とカールに目で合図をする。


 カールも覚悟はしているのか、やっぱりかぁ~っという感じではあるものの、了解と頷きを返してきたので、後で問い詰めなきゃね!!


 

 そんなことを考えていると、お父様から声が掛かった。

 お父様の側には3人の男性が立っており、姿勢を正してこちらを見ている。


「今回の旅に同行するバイエルン商会の職員達紹介しておこう。彼らは、各国での入出港手続きや交渉、現地商会とのやり取りを担う者たちだ。代表は、オットー。」


 名前を呼ばれた青年が、一歩前に出る。


 明るい栗色の髪に、人好きのする笑顔。

 けれど礼を取る所作には、商会員らしいきちんとした落ち着きがあった。


「バイエルン商会、航海渉外担当のオットーと申します。各国での手続きや取引先との調整は、私どもにお任せください。」


「オットー…」


 その名に、私は思わず瞬きをした。

 …アルノの息子さんだ!!


 かつて、父親の『手帳』を大切に受け継ぎたいと語っていた少年は、もう立派な商会員の顔をしていた。


 あの時は15歳で見習い商会員になったばかりだったのに、あれから7年か…。

 私が驚いているのが伝わったのかオットーは、少し照れたように笑う。



「父の辞書には、今でも毎日助けられています。今度はその知識で、マリーナ様の旅をお支えできればと思っております。」


 その言葉に、胸の奥がじんわりと温かくなった。


 私が関わった誰かの人生が、巡り巡って、今度は私の旅を支えてくれる…。


 それが、なんだかとても不思議で、嬉しかった。



「頼りにしていますね、オットー。」


「はい。父からもしっかり務めるよう厳しく言いつかってますので、必ずお役に立ってみせます!」


 そう答えた彼の笑顔は、まるで太陽のように明るい笑顔だった。



 オットー達が出港の手続きがあると離れていったタイミングで、お祖父様とヴォルフ兄様が身体の大きな男性を伴って近づいてきた。


「マリーナ。今回、同行する海兵隊の隊長を紹介しておくぞ。こいつが隊長でヤンじゃ。」


 お祖父様の紹介に、同行者の男性が一歩前に出て海兵式の礼をする。


「バイエルン海兵隊、第7隊隊長のヤンと申します!船上での襲撃時や、上陸時の護衛も担当いたしますので、よろしくお願いいたします!」


 ビシッと海兵らしいキレのある挨拶に圧倒されつつも、


「マリーナ・フォン・バイエルンです。長い旅になります。その中でもし、私が守られていることを忘れそうになったら、遠慮無く指摘してください。まだまだ経験が足りず、考えが甘い所があると思います。それでも、貴方たちを危険に晒したい訳ではありませんので、ちゃんと教えて下さい。」


 私がそう言うと、ヤンは驚いた顔をしつつも、少し緊張を緩めた様子で頷いてくれた。



「マリーナ。第七隊は、今回の外遊用に創ったマリーナ専属の部隊だ。立候補を募って、その中から俺と祖父様が厳しく選抜した精鋭のみ10名で構成されている。他のメンバーも交代で側に就くことになるから、追々顔を覚えてくれ。選んだメンバーは海兵隊の中でも優秀な奴らばかりだ。遠慮無く盾にしろ!」


 ヴォルフ兄様…。

 盾にしろって…あまりに無茶苦茶な良いように、笑うしかなかった。

 

「素晴らしいメンバーを選んで下さってありがとうございます!いざという時はしっかり頼りにさせて貰いますね。」


 まだ心配そうな2人の様子に、私とヤンは顔を見合わせて苦笑いするしか無かった。


 まあ、10歳の貴族令嬢が単独で外遊に出る事なんて無いでしょうし、心配なのは理解出来るんだけどね。


 その後、出航後に順次護衛メンバーの紹介をすることを約束して、ヤンが戻って行った。



 ヤンが戻った後、ヴォルフ兄様とお話をしていた。

 そういえば、お祖父様が静かだわ…。


 いつもは大きなお声で「わはは!」と話して居て、エネルギーの塊の様なお祖父様なのにどうしたのかしら?


 心配になってお祖父様の様子を窺うと、


「マリーナ。とうとうこの日が来てしまったか…。お前のためだと思って、この2年はかなり厳しく接してきたが、このじいさまを嫌いになってないか?」


 山賊の様な大きく傷だらけの身体を持つ厳ついお祖父様が、目をウルウルさせてションボリしている。

 悪いことをして怒られている時の『リーゼベーア』のようで、ちょっと可愛く見えますわね、と小さく笑った。



 ちなみに、『リーゼベーア』とは、体長3mほどの大きい熊の魔獣のことだ。

 うちに最初に来てくれたテイマー親子がテイムしていて、一緒に山小屋で暮らしている。


 怒るととっても強いらしいんだけど、普段は温厚で滅多に怒らないらしい。

 でも、身体が大きくて力も強いので、たまに周囲の物を壊してしまうことがある。


 最初にうちの領にテイマー親子と一緒に来たときのこと。

 住居として提供した山小屋に『リーゼベーア』も入ろうとして、玄関を盛大に壊してしまったの。


 その時の、テイマーさんに叱られてションボリしていた『リーゼベーア』の様子と、お祖父様がソックリ!

 って、喜んでる場合じゃ無いわね。

 お祖父様に答えてあげないと、益々落ち込んでしまうわ!

 


「お祖父様、嫌いになんてなるはずがないわ!お祖父様がしっかり鍛えて下さったお陰で、私は憂いなく旅立つことが出来ますもの。厳しくも愛情たっぷりなお祖父様のご指導が、これから私に何が起ころうとも、必ず助けになってくれると確信していますわ。ありがとうございます、お祖父様。」


 そういって、大好きの気持ちを込めて、お祖父様に抱きついた。


「…マリーナ。お前が言うように、これからは何が起きるか分からん。予想もしないこともあるじゃろう。だが、アンカーの海で鍛えたお前なら、きっと乗り越えられるじゃろう。必ず帰ってきなさい、私の天使よ。」


 お祖父様は、その大きな身体からは考えられないほど優しく、宝物に触れるようにソッと抱きしめ返してくれた。



「マリーナ!俺も一緒に行ってやりたかったが、学園に入らなくちゃならん。カルロには手紙でしっかりマリーナを守るように行ってあるからな!何かあったらアイツを盾にしてでも逃げるんだぞ!!そのための婚約者だからな!」


 うん、ヴォルフ兄様…それは、違うと思うの。

 また盾にしようとしてるし…。

 ヴォルフ兄様は、私とフラン従姉様に近づく男に厳しいのよね、と困ったように笑った。

 

 カルロからは一緒に他国に行くために、勉強だけじゃなくて剣術とかも頑張ってるって聞いてるけど。

 

 男の子だから目線が厳しいのかもしれないけど、カルロもまだ12歳だし、もう少し守られる側で居させてあげてよ。



 「ヴォルフ兄様、カルロだってまだ12歳よ。盾になんて出来ないわよ。大丈夫、お祖父様との鍛錬にはお兄様も付き合ってくれたから、私がちゃんと自衛できるって知ってるでしょう?それに、余計な事をして、自分から危険に飛び込むような事は決してしないって誓うから安心してね。」


「大丈夫だ!俺だって、12歳で海賊と戦ってたんだからカルロだって出来る。マリーナのことは、信じてるが何が起こるか分からん。自分の安全を第一に考えて行動するんだぞ!」


 15歳になったヴォルフ兄様は、お祖父様譲りの体格の良さと、鍛え上げられた身体をしている。


 それなりに大きくなった筈の私を軽々と抱き上げて、小さい頃の様にギュッと抱きしめてくれた。


 お祖父様とアンカーの海を守っているヴォルフ兄様だから、海の危険性を誰よりも知っている分、心配で仕方ないんだろうと思う。


 それでも、この旅のために私がどれだけ努力していたか知っているから、こうやって心配しつつも送り出してくれるんだろう。

 

 今日は見送りに来られなかったギル兄様からも、最近は頻繁に旅立ちを心配する手紙が届いていた。


 みんなに心配を掛けているな~と申し訳なく思うけど、信じて貰えていることに深い感謝の気持ちがこみ上げてくる。


 さて、そろそろ出港の時間が近づいて来たみたい。


 最初に向かうは、カルロが待つムリーノ王国。

 記念すべき最初の外遊の地。

 何が待ち受けているのか、凄く楽しみね!

 

料理長カール → 第一章 『43.試す価値はあると思います』の中での孤児院の子で 「食べたものが身体を太らせた?」と言った子です。


バイエルン商会 航海渉外担当オットー → 『35.【太陽のバイブル Side バイエルン商会 元商会員 アルノ】』に出てくるアルノの「長男」くんです。


最後まで読んでいただきありがとうございます(ღ˘⌣˘ღ)

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