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言の葉の家へようこそ ~異世界の言葉がわかる転生令嬢、各国を巡る~  作者: 菖蒲月
第一章 幼少期編 ー芽吹くことば ー

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52.旅立つ者へ 【途中からSide ギルベルト】

 カルロと婚約をして早3年、私も8歳になりました。

その間にも色々とありましたが、カルロとの関係は特に変わっていません。


 お互いにプロジェクトに忙しくしつつも、新しい言語や知識について貪欲に吸収していき、主要な言語からマイナーな言語までを多数網羅している多言語マスターとなっている。


 スキル持ちのマリーナならいざ知らず、スキル無しで同レベルをマスターしているカルロの異常性には、さすがにマリーナも気付いてきて、「え?カルロのスペック、やば過ぎん!?絶対王族とかが欲しい人材でしょう。私と婚約してて良いのかな???」と本気で考えている今日この頃。


 カルロが学園に通うようになる前には、必要なら婚約の解消もしてあげなくちゃな~と、のんきなことを考えていた。それがどれほどの威力を持つ地雷かも知らずに・・・。



◇◇◇


 

 とうとう、15歳になったギル兄様が王都にある王立学園に入学することになった。


 学園は寮生活なので、基本的に自分のことは自分ですることになるが、掃除や洗濯は寮の専属使用人がやってくれるし、食事も食堂でしっかりと出るので、自分の事さえちゃんと出来れば問題無いらしい。


 船に乗る機会も多いギル兄様やヴォルフ兄様は、その辺は一切心配ないみたい。


 今年の入学はギル兄様とフラン従姉様で、エル従兄様は2年前にすでに入学済なの。


 フラン従姉様とヴォルフ兄様は婚約してからも仲良くしていて、ヴォルフ兄様は手紙のやり取りだけじゃなく、自分で馬に乗って会いに行っているみたい。


 どうも、ヴォルフ兄様の学園入学まで後2年あるので、その間にフラン従姉様に変な虫が付かないか心配しているみたい。


 ヴォルフ兄様はストレートに話をするタイプなので、そのまま「フランは可愛いから、余計な男が寄らないか心配だ。気をつけろ。何かあったら駆けつけるからラオ便で知らせろよ。」とフラン従姉様に伝えたらしく、これにはあまり素直になれないフラン従姉様も撃沈したらしい。さすがヴォルフ兄様[笑]


 フラン従姉様から、そんな愚痴に見せかけた惚気のラオ便が届くのも、仲が良くて良いな~と微笑ましく見守っているわ。もちろん、私とカルロも仲良しだけどね♪


 ギル兄様は、学園で婚約者も探さなくちゃならないし、勉強だけじゃなく社交でもかなり忙しくなるみたいだから、大きな休みにも帰って来られるか分からないんですって。


 全貴族の子息令嬢が通う学園なので、学生同士での社交に加えて、タウンハウスやサロンで開催されるお茶会やパーティーに参加して、将来のための顔つなぎや婚約者捜しをするらしいわ。


 ギル兄様も普段は寮生活をしながら、大きな休みには王都にある我が家のタウンハウスに滞在しながら、社交活動をするんですって。


 学園に通うようになると、準成人扱い(成人は18歳)になるから、大人と同じ社交場に出入りできるようになるし、王都に近い領地(馬車で1日、騎乗なら半日)に住んでいるクリス伯父様やエル従兄様が助けて下さるから安心ね。


 年に数回ある王家主催の大規模なパーティーは当主であるお父様の参加が必須だけど、それ以外は余程の相手じゃ無い限りは、次期当主としてギル兄様が当主代理として参加していくみたい。


 バイエルン領から王都までって遠いのよ・・・。(馬車で8日ほど、騎乗でも5日は掛かる)


 お父様も領地との行き来がスケジュール的に大変な時は、ヴェルナーお祖父様に領地を任せてしばらくタウンハウスにいることもあったくらいだから、ギル兄様が代理で出てくれるようになれば、かなり助かるとお父様が喜んでいたわ。


 まあ、タウンハウスからもラオ便が出せるようになっているから、何かあればすぐに情報の共有ができるっていう要素も、まだ準成人のギル兄様に任せられる安心材料の1つかもしれないわね。


 それを抜きにしてもギル兄様は優秀過ぎるくらい優秀な跡取りだから、心配はしてないんだろうけど。


 プロジェクトに関しては、各ポジションでの責任者クラスの人材をしっかり育ててきているので、ほとんどのトラブルは現場で対処出来るし、もし難しい問題が起こってもラオ便で迅速に情報を共有して指示が出せるので、大きな問題になることはないだろう。



 と、まあここまで色々と言ってはみたけど、これは現実逃避でしかないのよね。


 だって、これまで毎日一緒に居たお兄様が遠い場所に行ってしまうんだもの。


 寂しくてたまらないのだ・・・。


 学園への入学は私自身も楽しみにしているし、ギル兄様にもお友達をたくさん作って楽しんで欲しいと心から思っているんだけど、あと数日で王都に向けて出発してしまうお兄様を見ると、泣きそうになってしまうので近づけなくなってしまったのだ。


 結果として、ここ数日はギル兄様を避けるような感じになってしまい、とても感じの悪い妹になってしまっていることだろう・・・。


 でも、生まれた時から誰よりも可愛がってくれて、甘やかしてくれて、私がすることを全力で応援してくれたギル兄様が側にいなくなってしまう。


 その事実がこんなに寂しくて不安になるなんて思っていなかった。


 でも、このままギル兄様を見送ることが出来ないのは絶対に嫌なので、ギル兄様への贈り物を作ることで気を紛らわせることにした。


 ギル兄様の出発を前に元気のない私を、メアリー達も心配してくれてたんだけど、ギル兄様への贈り物を作るからと材料の準備をお願いしたら、張り切って素晴らしい材料を集めてくれたわ。


 これなら、思っていた以上の物が作れそう!


 さあ、ギル兄様への感謝と応援の気持ちを込めたプレゼントを作りましょうか♪



◇◇◇



【家族とのしばしの別れ Side ギルベルト】



 今日は、学園の入学のために王都に出発する日だ。


 ここ数日は、準備のために忙しかったので疲れてはいるのだが、それ以上にマリーナ避けられている気がして、かなり気持ちが落ち込んでいる。


 出来る事なら可愛いマリーナをポケットに入れて、いつでも連れて歩きたいくらいなんだが、そんな事が出来るはずも無く、泣く泣く、渋々、1人でタウンハウスに向かうことになっている。


 バイエルン伯爵家の嫡男として、ヴォルフやマリーナを守れるように学園や社交界での立場を築かなくてはならないし、適切な婚約者も探さなければならないから、命を削られるくらいの痛みを伴いつつも、マリーナとのお別れをしなくてはならない。


 ラオ便があるから手紙のやり取りが出来るだろう、大げさな。って?


 はぁぁ・・・何を言っているんだか。

 マリーナ本人からしか得られない成分があるのを知らないのか???

 僕の身体を構成する必須の成分なのだから、大げさであるはずがないじゃないか!



 さて、そろそろ馬車を出発させないと、次の町に着くまでに暗くなってしまうな。


「父様、母様、お祖父様。行って参ります。しばらくは社交で忙しくなると思いますが、ラオ便で定期的に様子はお知らせするのでご安心ください。お身体に気をつけてお過ごし下さい。」


「ギルベルト、お前は我が家の嫡男として自慢の息子だ。これから社交界や学園では、貴族の醜い面にも多々直面するだろう。近くにいられないのはもどかしいが、困った事があったら1人で解決しようとしないですぐに知らせなさい。急ぎの時は、アイヒベルク家のクリストフとエルンストも助けてくれるから遠慮無く頼りなさい。」

 

「ギルベルト。本当に素晴らしい息子に育ってくれたわ。あなたは、これまで身に着けた知識や経験で、大抵のことは自分で乗り越えることが出来るでしょう。でも、私たちの子どもであることを決して忘れないで。親として頼って貰えないのは寂しいわ。自分で出来る事でもたまには頼ってね。身体に気をつけて行ってらっしゃい。」


「ギルベルト。お前は儂の自慢の息子とソックリな、自慢の孫じゃ。戦うことしか出来ん儂の息子と孫が、素晴らしい人間であることを誇りに思っとるぞ。バイエルン領の守りは任せて、安心して王都で勉強してこい。成長して戻ってくるお前を楽しみにしとるぞ!気をつけて行ってこい。」


 両親もお祖父様も、私を自慢に思ってくれている、そのことが堪らなく嬉しいと思う。

もちろん嫡男として求められる能力は高く、期待に応えなくてはと必死に勉強してきた日々は、決して楽なものではなかった。


 でも、ちゃんとその努力を見ていてくれて、認めてくれる家族が居るということがこんなにも嬉しいというのは、報われる気持ちと共に自分が少しだけ誇らしく思えるものなのだな。


「ありがとうございます。バイエルン伯爵家の名に恥じぬよう精進して参ります。」

「ヴォルフ、見送りありがとう。最近は勉強も鍛錬も凄く頑張っているな。私はバイエルン領を守っていけるように王都で勉強や社交を頑張ってくる。アンカーの海を頼むな。」


「ああ。フランのためにもバカではいられないからな!ギル兄様が王都で頑張っている間、俺も鍛錬と勉強をもっと頑張って、一緒にバイエルン領を守れる男になるよ。アンカーの海は俺と祖父様に任せろ!」


 頼もしい弟の言葉に互いに固い握手を交わした。


 そうして、家族との挨拶が終わりマリーナは・・・探すが、居ない。

家族もマリーナが見送りに来ていないことに困った顔をしていたが、さすがにそろそろ時間が無くなってきた。


「マリーナに伝えて・・・」とマリーナへの伝言をお願いしようとしたその時。



「ギル兄様ぁ~~~~~~」と邸の玄関の方からマリーナがこちらに向かって来ていた。


 息を切らせてこちらまで来たマリーナが、手に持っていた箱を差し出しながら、


「ギル兄様、気をつけて行ってらっしゃい!いつも一緒に居たお兄様が側に居なくなるって事が信じられなくて、信じたくなくて・・・。お兄様を見たら泣いて困らせちゃいそうだったから、お顔が見られなかったの・・・避けてるみたいになってごめんなさい。でも、学園への入学がお兄様に必要な事なのは分かってるから、ちゃんと応援したくてプレゼントを作ったの。完成がギリギリになっちゃって・・・。応援の気持ちをたっくさん込めたから、辛くなったり寂しくなったりしたら、これを見て元気を出して!」と、半分泣きながら言った。


 泣きそうになりながらも寂しい気持ちを抑えて応援してくれる、その気持ちが嬉しかったが、私の方が離れがたくなってしまいそうで、誤魔化すようにマリーナからのプレゼントを開けてみることにした。


 箱の中からは、美しいガラスの瓶に入った色鮮やかなキャンディと、美しい色合いのサンキャッチャーが出てきた。


「マリーナ、素晴らしいプレゼントをありがとう。どちらもとても綺麗だね。キャンディもサンキャッチャーも寮の部屋を素敵に彩ってくれそうだ。勉強も頑張れそうだよ。」


「うふふ、頑張って用意したの。キャンディは黄色が『レモン』、水色が『ミント』、琥珀色が『ハニー』、オレンジ色が『オレンジ』になっていて、風邪を引きそうな時や気分がスッキリしないときに食べてね。それぞれの味の効果はメモが入っているから後で確認してね。」


「そうか、一つ一つに効果があるんだね。後でちゃんと確認するよ。私の健康のことを考えてくれたんだね。ありがとう。」


「うん、勉強を頑張り過ぎないか心配だったから・・・。後、サンキャッチャーは特別仕様なの。貴族が通う学園の寮に貝殻とかの安っぽいのは合わないかなと思って、金色の細い鎖を作って貰って、それに黄緑色と琥珀色の小さな宝石を、光を良く反射する角度でカットして貰って付けたのよ。金色には『達成』『成功』、琥珀色には『幸運』『知恵』、黄緑色は『希望』『始まり』といった意味があるの。もし良かったらお部屋に飾ってね。」


 サンキャッチャーは息をのむほど美しかった。


 以前、貝殻で作って貰ったものも大事に部屋に飾っていたが、壊れたりしたら嫌だったので寮には持っていかない事にしていたのだ。


 このサンキャッチャーは以前貰ったものとは別物のようなクオリティになっている。

マリーナの説明通り、繊細な細い金の鎖と、キラキラと光を反射する琥珀色と黄緑色の小さな宝石達。


 この色合いはマリーナのハニーゴールドの髪色と、私とマリーナお揃いの黄緑色の瞳、そして私のキャラメルブラウンの髪色を取り入れたものなのだろう。


 意味も素晴らしいものばかりだ。マリーナの私を応援する気持ちが痛いほど伝わってくる。



 まるで小さなシャンデリアのようなお洒落な作りになっていて、私が寮で飾っても恥ずかしくないようにと一生懸命考えてくれたのだろう事が分かって、あまりの嬉しさに泣きそうになってしまった。


 他の家族もサンキャッチャーの美しさにビックリしており、母様なんか目をキラッキラさせて見ているから、後で作ってくれってマリーナに迫っている様子が目に浮かぶな。


「マリーナ、本当にありがとう。大切にするよ。何かあればすぐにラオ便で知らせておくれ。こちらからもこまめに手紙を出すからね。それじゃあ、行ってくるよ。」


 プレゼントを丁寧に箱にしまって、大事に持ったまま馬車に乗り込んだ。


「ギル兄様、行ってらっしゃい!」


 マリーナの声に送られながら、生まれてから15年育った邸を後にした。


最後まで読んでいただきありがとうございます(ღ˘⌣˘ღ)

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