51.涙と忘れない決意
お待たせしました。明日は予定通り20時の更新です!
あの号泣事件という名の黒歴史から、早いもので1年が経過していて5歳になっていることに、驚きを隠せないマリーナです。
うん、あんまり思い出したくないんけど・・・。
あの後は号泣の影響で帰りの馬車に乗った途端に寝てしまい、気付いたら自分の部屋のベッドで、しかも翌朝だったという落ちがあるのよ・・・。
あれほど感情がグチャグチャになるほどの衝撃を受けたのが初めてだったことや、それに伴う号泣などで身体と心が限界に達していたのだと思うわ。
お父様とギル兄様も分かっていらしたのでしょうね。
私が自然と目覚めるまでは起こさないよう指示を出してくれていたのだそうよ。
そのお陰もあって、自然と目覚めた私の頭はスッキリとしており、ちゃんとみんなが相応の覚悟と責任の下で臨んだのだと、自分の中でも落ち着かせることが出来ていた。
結果的に素晴らしい検証と実証になったけど、一歩間違えれば取り返しの付かない結果を招く恐れがあったことは、決して忘れてはいけないことなんだと思うわ。
誰かの犠牲の下に結果が出る事もある。それを私は絶対に忘れないわ。
実際、今回は『航海病』という人命が脅かされる不治の病への対処方法になるのだ。
その検証と実証に犠牲者が伴う可能性があることは考えなくても分かることだったのに、私の想像力が足りていなかったのか、潜在的な恐怖からそのことを意識的に切り離して考えていたのか・・・。
私はまだ子どもだから責任なんて考えなくても良いって言われるだろうけど、この方法を提案したのは私なのだ。
効果があるか明確ではないのに、お父様達がこんなにも積極的に援助してくれて、且つスピーディーに検証と実証にまで遷ったのは、それだけ事態が深刻だったからなのだと思う。
誰が気にしなくても良いと言っても、私は今回の検証と実証で得た「恐怖」を決して忘れない!
◇◇◇
検証と実証の結果については、アイヒベルク家とフェレーリ家にも速やかに共有された。
そして、フェレーリ家の方でも同様の検証を行い、ほぼ同じ実証結果が得られたという報告も来ている。
(検証のよる死者は出ておらず、一部で歯茎の炎症や出血が酷くて歯が抜けてしまったり、と完全には戻らない者はいたが、ほぼ全員が健康を取り戻しているみたい)
3家で相談して、3家合同での発表とすることにしたみたい。
バイエルン伯爵家だけで発表することは、自国や他国の王族や高位貴族からの圧力などへの対抗が難しいけど、中央への発言力も強いアイヒベルク侯爵家や、他国の高位貴族であるフェレーリ侯爵家が共同名義での発表ならば、情報の搾取や権利の侵害が起きるリスクが大きく減るのだそうだ。
半年前に3家によって『食事療法』と名付けられた共同発表が、まずはメーア王国の王家に対して行われた。
メーア王国はほとんどが内陸の国で、唯一海と接する領地を持つのがバイエルン伯爵領であり、その縁戚となるアイヒベルク侯爵領は内陸で王都に近い領地ではあるが、大陸再東端の海洋国家アズリア王国との一番大きな玄関口となっているので、アズリア王国への影響力が非常に大きい。
この2家が合同で発表した『航海病』についての予防と治療についての実証結果は、海とほとんど接していないメーア王国では反応が弱く、王家からも「ふーん、不治の病が治るようになるなら良かったね。」くらいの軽い反応で、少し拍子抜けしてしまった程らしい。
まあ、海に面してるのがうちの領だけだし、自分たちにあまり関係ないと思ってるんだろうね。
王家が他国に移動するときも、移動系のスキル持ちが王城には居るからそれで済んじゃうし、この国の王族が長期間船に乗る機会はほぼ無いから仕方ないのかな。
ただ、お父様達は他の海に面している近隣国からの反応は、非常に大きいと予想しているので、うちの王家があまり関心を示していないうちに、『食事療法』という新たな考え方についての取扱や情報に対する権利については、『3家に帰属し王家は干渉しない』という誓約を取り付けることが出来た。
正式な王家からの誓約書なので、他国に関しても効果を発揮するのだ。
このメーア王国からの誓約が出てから、ムリーノ王国でフェレーリ侯爵家から『食事療法』についての報告を行って貰った。
他国を跨ぐ3家での共同発表であり、メーア王国では情報の取扱や権利について『3家に帰属し王家は干渉しない』という誓約が正式に出てしまっている以上、ムリーノ王国も渋々同じ条件を受け入れるしか無かった。
(うん、なんかすっっっっごく渋々だったみたい。王家との謁見が終わった後のアレッシ小父様の様子を、カルロがラオ便使ってお手紙で知らせてくれたんだけど、相当草臥れていたみたいだもの[笑])
ムリーノ王国は、メーア王国とは違って同じ大陸ではあるものの、最西端に位置する縦長の国で、国の西側全てが海に面している海洋国家なの。
だから、『食事療法』による『航海病』の予防と治療に関しての反応が大きいことは、当然予想出来ていたので、比較的反応が薄いであろうメーア王国での発表を先に行ったのですって。
お父様達ったら賢いよね~。
ある程度は上手くいくだろうって思ってたみたいだけど、うちの王家の反応があまりにも軽すぎて、予想通りの筈なのに逆にちょっと心配になったらしい(笑)
ムリーノ王国の王家としては取引先の国との関係が有利になるに違いないこの情報は、喉から手が出るほど欲しかっただろうしね。
まあ、これで情報の公開について国からの干渉は無いから、安心して情報を広めることが出来る。
お父様達は、まず自分たちの取引先の国に対して、「こんな情報持ってるけど、うちとの取引少し優遇してくれるなら教えるよ」と持ちかけることにしたみたい。
もちろんタダで広めることも出来るけど、それだと信じて貰うのは難しいでしょう?
だって、これまで不治の病と言われて、船乗り達を苦しめていた「航海病」が予防出来て、さらには発症者にまで効果がある方法なんて、普通はタダで人に教えるわけ無いって考えるもの。
だから、自分たちと有利に取引してくれるなら教えるよ~という方向で公開することにしたんですって。
うん、それがベストだね。こちらも検証と実証には相応のリスクを伴ったんだし、少しは利益が無いと!
(入ってきた利益で船員達の食のバリエーションをもっと増やしたり、船内環境の改善に回してあげないとね~。この辺はお父様達が当然考えているだろうし、心配はしてないけどね。)
◇◇◇
『食事療法』が3家と取引のある国に周知され始めると、船での交易や外交を行っている国で激震が走った・・・・・・らしい(笑)
うん、私の所まではほとんど影響も無かったし、色々と勉強で忙しかったのもあって、噂で聞いただけなのよね。
まあ、うちは貿易港もバイエルン領だけだし、それほど大きな変化は無かったんだけど、カルロのところは大変みたい。
ムリーノ王国は海に面している部分が多い国だし、それだけ港を有する領地も多いだろうから、情報の取扱や権利についてうちも噛ませろみたいな話がとにかく多かったんだって。
そりゃあ、この情報を先に持ってれば船での貿易をしている国や貴族にマウントが取れるし、いくらでも有利な条件で取引が出来ちゃうものね~。
でもそれらを撥ね付けるために、メーア王国・ムリーノ王国の両国から全ての権利が『3家に帰属』しているとの誓約を貰っているので、ぜ~んぶ豪快に切り捨てていったらしい。
(どこかのご老公様みたいに「この誓約が目に入らぬか~!!」ってやってるアレッシ小父様を想像しちゃって、すごく面白かったわ。)
パオロ様とカルロの婚約話もかなり来ているみたいで、何だか冷気が漂うお手紙がカルロから届いてビックリしたのよ。
(「僕はマリーナの一番の友達だから安心してね。きっっっぱりと全部断るからね!」って内容の手紙が圧強めな感じで届いたんだけど、心配しなくてもカルロが一番なのは変わらないのにね~。でも安心して貰えるように、「一番の友達なのは、お互いが誰かと婚約しても一緒だよ!」って返信してあるから大丈夫だと思うわ。)
親戚になれば、情報も扱えるし旨い汁が吸えるって考えるんだろうけど、そんな醜い考えに子どもを平気で巻き込むことようなことを、アレッシ小父様が許すはずがないもの、その点は全く心配してないわ。
でも、うちのお兄様達にもきっと婚約の話とか出てるんだろうな~。
この国は、早いうちからの婚約はあまりしないんですって。
一般的に貴族は15歳から全員が王立学園に通うことになるから、学園で同年代との交流を深めながら自分でお相手を探すか、家同士の繋がりなんかで決まることもあるみたい。
それも学園入学以降の事が多いみたいだけど、優秀な者には早いうちから婚約の打診が内々に行われるらしいから、うちのお兄様達は間違い無く後者ね。
私の目の黒い(黄緑だけど[笑])うちは、変な子は近づけませんからね!!フンス!!
兄達の婚約者の選定について変な気合いを入れているマリーナであったが、自分にも婚約の打診が降るように来ている事には気付いていないのだった。
自ら地雷を設置して、踏み抜いていくマリーナさん・・・マリーナからの手紙を読んだカルロの反応が怖い(((°Д°; )))ガクガク
最後まで読んでいただきありがとうございます(ღ˘⌣˘ღ)




