43.バランスの良い食事がカギなのです
特定の病気についての記載があります。
色々と調べた上で、少しアレンジを加えて記載しているので、『同名だが別物』とお考え下さい。
あくまでも、創作上の設定となりますのでご理解の上でお読み下さい。
恐れていた事態が現実になりそうで、心が重たいマリーナです。
邸に戻ってすぐに、お父様とお祖父様にお話を聞きたいので、お時間が取れるか確認して欲しいと執事を通じて伝えて貰ったので、着替えている間に確認して返事が来ると思います。
外出着から室内用のドレスに着替えて一息ついていると、お父様達に確認にいった執事が返事を持って戻ってきた。
すぐに済む話なら今からでも大丈夫だが、込み入った話になるのであれば、夕食後にちゃんと時間を取ろうとの返事でしたので、『夕食後にお願いします。』ともう一度執事に伝えにいって貰った。
その後、了承の返事と共に『夕食後に執務室に来なさい。』との言葉が伝えられた。
さて、いまはこれ以上出来る事はないわね・・・。
『壊血病』がこの世界にも存在するかもしれないっていう想定はしていたけど、実際にそれに近いものが出てくると動揺を隠せなかった。
まだ同じ病気だと確定した訳じゃ無いから、お父様とお祖父様に詳しく聞いてみないと動けないけれど、私が知っている対処方法で対応出来る物であることを祈るしか無いわね。
思ったより心にダメージがあったのか、昼食を軽く食べた後は、気絶に近い感じでお昼寝に入ってしまった。
しかも、夕食の一時間前にメアリーに起こされるまで寝続けてしまったのには、自分でもビックリしたのだった。
ありゃりゃ、思ったより疲れちゃってたのかな。でも、この後も少し重たい話になりそうだから、ちゃんと寝れて良かったと思っておこうか。
さて、寝て気力も回復したし、この後もことも考えるとしっかり夕食を食べて備えないとね!
お昼は軽めだったし、午後のおやつも寝ていて食べ損ねてしまったので、お腹が空いていた私は、いつもよりしっかり目に夕食を食べ、たっぷりと英気を養ったのだった。
さ~、お父様の執務室に行きましょうか。
◇◇◇
お父様の執務室に入ると、中ではすでにお父様とお祖父様がソファに座ってお茶を飲んでいた。
「お父様、お祖父様、時間を取っていただきありがとうございます。」
「大丈夫だよ。天使の話は何時だって聞く準備が出来ているからね。それにしても、何やら外出先から難しい表情をして戻るなり、時間を取って欲しいと言っていると執事から聞いたけど、どうしたんだい?」
お父様が優しく聞いてくれるのに合わせて、お祖父様もウンウンと頷いたり「今日もマリーナは可愛いのう♪マリーナが呼ぶなら、いつでも駆けつけるぞ!」と同意してくれている。
相変わらずの溺愛具合に苦笑が溢れるが、いまはそこに反応している暇は無いと思い直し、本題に入ることにした。
今日、集会所で『航海病』と呼ばれている病気についての話を聞いたこと、私が知っている病気の特徴と似ており、もしかしたら解決出来るかもしれないので、確証を得るためにもう少し詳しい話が聞けないかとお父様とお祖父様を頼ったことを、順に説明した。
まず、反応を示したのはお祖父様だった。
「なんと!『航海病』は治せない病として長く船乗りを苦しめておるのじゃ。航海が長期に亘る場合は、どうしても『航海病』のリスクは高くなる。それが解決出来るかもしれないと!信じられん・・・。」
「そうだね。私も船には乗るから『航海病』については知っているし、実際に発症したものを見たこともある。これまでにも原因や対処法を研究した者達はいて、傷みやすい水が原因ではと考えた医者が『酒を多量に飲む』『酢を飲む』など色々と考えたが、効果は得られていないんだ。そんな病についてマリーナが似たようなものを知っていて、解決法まで分かるかもしれないというのは信じがたいものがあるよ。」
まあ、確かにそうだよね。私だって、子供がそんなことを知ってるって言ったって、すんなり信じられないと思うもの。
でも今回に関しては、『壊血病』や対処法に関しての知識は前世の物だけど、参考になりそうな事が書かれた本を、先日の定例会の時にカルロから貰ったのよね。
私が他国語で書かれた本からも貪欲に知識を得ていることを知ったカルロが、フェレーリ家と取引のある西大陸の国『ホンスー』から仕入れた本を、何冊かお土産に持ってきてくれたのよ♪
さっすがカルロは紳士だし、優しくてとっても気が利く、素晴らしいお友達だわ~。
(カルロは・・・『マリーナのことを一番分かってるのは僕だもの。一番で居続ける努力は欠かせない!』とかなり下心満載のお土産だったのだが、マリーナが喜ぶ事をしたくて堪らない気持ちが強いのも間違い無いので、周囲は『マリーナだけに向いている、その努力の方向性がヤバイ』とドン引きしつつも何も言えないだった。)
ウキウキしながら、その本をスキルを使って読んでみてビックリしたんだけど、前世の漢字っぽい文字が書かれていたの。
(一度読んでから、スキルをオンオフ切り替えながら、文字を習得していったので、読み書きはバッチリ出来るようになったもんね~。発音までは本だけじゃ分からなかったから、それは追々ね♪)
日本語というよりは、漢字だけで構成された所謂漢文って感じだったし、内容を読んでみた限りでは中国っぽい文化の国みたい。
(『ホンスー』って前世の中国語で『赤』って意味なのは偶然なのか・・・。西大陸は赤系の髪や瞳の人が多いってカルロからも聞いているから、西大陸でも特に赤に思い入れがある国なのかもね。中国でも赤はおめでたい色だったものね。)
ちょっと話がそれちゃったけど、その時に貰った本の中に『薬食同源』というタイトルの本があったの。(前世でも『医食同源』という言葉があったけど、その語源ともなった中国の思想だね。)
内容は、『薬と食べ物は本質的に同じ源からきている』という考え方で、日々のバランスの良い食事を通じて健康を維持し、自然治癒力を高めることで、薬に頼る前に病気を予防できる状態に身体を整えることが重要というものだ。
さらに、その一部の症例として『長期の軍事行軍遠征』などで起こる栄養不足で発症した病気の治療についても記載があったのだ。
(戦争などの軍事行動では兵糧が限られるため、新鮮な物などは長期間食べられない事もあり、怪我だけではなく、栄養不足による病の発症で死亡するケースが多かったのが後に分かり、『薬食同源』の観点から対処したことで大きな改善があったと記載されていたのだ。)
これをお父様とお祖父様に実際の書籍を提示しつつ、私が翻訳した資料を元に見て貰った。
お祖父様が目を輝かせて資料を読み込みながら、
「なるほど・・・確かに、戦争ともなると人数も多いから、兵糧も限られて栄養不足であることは間違いないだろうな。船での長期の移動と状況は似ているかもしれん。もし、このパターンが『航海病』にも当て嵌まるのであれば、試して見る価値は十分にあるじゃろう!」と興奮したように言った。
「ええ、私も状況的には類似している点が多いと思います。マリーナが見つけてくれたこの資料の通りであれば、対処が可能かもしれないという希望が持てますね!」
自分の前世での知識だけが根拠では信じて貰えないと思っていたので、カルロがくれたこの本の存在は本当にビックリすると共に、『これならいけるかも!』という希望にもなった。
すぐに文字の習得と翻訳を進めておいて良かった・・。
さて、それではどの程度の対処が可能なのか探るためにも、具体的な『航海病』の様子を教えて貰うことにする。
お父様とお祖父様がそれぞれ実際に見て経験したものや、資料として残っている物などを合わせて、『航海病』の詳細を確認していく。
大まかな症状や経過は、集会所でお爺ちゃん達に聞いたものとほとんど同じだったが、お父様とお祖父様が実際に見たことがある『航海病』の発症者の症状からある仮説がたった。
『航海病』と1つに括られているが、実際にはいくつかの病気が混在しているようだ。
症状や経過がまったく違うものでも、船上での原因不明の病気は全て『航海病』として括ってしまっているようなのだ。
例えば、私が『壊血病』だと考えているものだと、長期に亘ってビタミンCが不足することで起こる病気で、疲労感や食欲不振・気持ちの落ち込み (鬱)などから始まり、傷の治りが悪い・発疹・歯茎の出血などへ進行、最終的には全身からの出血や皮膚の黄変、幻覚を見るなどの症状が出るもので、ビタミンCが多量に含まれる食材を摂取することで改善される。
しかし、似たような病として『脚気』や『ペラグラ』があり、それぞれビタミンB1やビタミンB3 (ナイアシン)の不足によって起こる病気で、どちらも疲労感や気持ちの落ち込み (鬱)から始まり、手足のしびれや、足の浮腫・膝に水がたまる、皮膚の剥離や炎症、下痢や嘔吐、などを引き起こすものだ。
それぞれ特定の栄養素が不足することで起こるものだが、船上ではどれか1つが足りないという状況ではなく、併発的に起こってしまうので『航海病』という1つの括りになってしまっているのだと思う。
これらの対策としてこれらが全てバランスの良く含まれているミラクル食材があれば良いが、そんな便利な食材が都合良くあるわけもないのだ。
しかも、食材の栄養素 (ビタミンなど)なんてこの世界では誰も知らないので、食材の鑑定が出来る人が見ても、栄養素までは分からないことを考えると、ここは私の前世の知識を頼りに、似た食材で効果があるかどうか試して見るしかないのだ。
プロジェクトで市場の店舗の取扱品目や価格の調査をした際に、いくつかの食材には目を付けており、バイエルン領で調達可能なものと、フェレーリ領で調達可能なもので何とかなりそうだと思っている。
ただ、本当にそれで対処出来るのかは、やってみないと分からないので、まずは本からの知識で何となく目星をつけているという丁で、食材の調達と加工の試作と、効果の確認、後はどの程度の日持ちがするかなど、実績を積み重ねていくしかないだろう。
しっかりとした効果が確認出来れば、今後の材料調達や加工についてフェレーリ家とも相談しなきゃならないだろうし、お父様やお祖父様が船に乗る機会がある以上、のんびりもしていられないので早速取り掛からなくちゃ!
最後まで読んでいただきありがとうございます(ღ˘⌣˘ღ)




