33.孤児院で話し合いをします
主人公の自国語は「」、は外国語は<>で表記しています。
はい、昨日はカルロと海でたくさん遊んだ後、お風呂に入って、その後の記憶が無いマリーナでございます。
いや~、あまりにも楽しすぎてお昼寝もしないで遊んでたらそうなるよね。
お腹が空きすぎて目が覚めたら、メアリー達から「おはようございます。」って言われたときの衝撃たるや・・・。
『お風呂に入ったよね。え?いつ上がった?着替えたのも記憶に無い。そもそも何時に寝た?』とか色々と寝起きの頭で考えたけど、最終的には「え?夜ご飯食べてない!」って叫んでメアリー達に苦笑されましたよ。でも、仕方ないじゃ無い。お腹空いてたんだもの!!
そんな訳で、メアリーに身支度を整えて貰って、朝食を食べに食堂に向かいます♪
◇◇◇
今日も料理長の素晴らしい朝食を頂き、気合いも十分に馬車に乗り込んでおります。
いや~危なく、今日の外出が禁止になるところでしたが、何とか死守できて良かった!
昨日の裸足で砂浜遊びの件が当然お母様達にも報告されていて、淑女らしからぬ行動をしたことや、それに他家の令息を巻き込んだこと、さらに成長に必要なお昼寝や夕食が疎かになったことを、朝食の前にお母様からお叱りを受けてしまったのです・・・。
確かに、自分だけならまだしもカルロを巻き込んだのは不味かったか・・・と、お父様とお母様、さらに同席されていたフェレーリ侯爵夫妻とカルロに謝って、お昼寝や食事が疎かになるような行動はしないと約束したことで、本日の予定も許可が貰えました。
カルロは、<楽しかったから気にしないで。マリーナがやることは、必ず一緒にやりたいから、また何かやるときは絶対に僕を誘ってね!>って、ニッコリして言ってくれたの。
何か妙に力が入ってる気がするけど、多分私に気を遣わせないようにそう言ってくれたんだよね。
カルロってば優しいよね~♪
(大人達はカルロが滲ませる独占欲と、それに気付いていないマリーナの様子に、これはマズイのでは?とお互いに目で話し合っていましたが、余計な事をすると更に拗れそうなので、『とりあえずは様子見で』という見守りの方向で意見が一致したようです。)
夕食も食べずに寝てしまったことで、家族にもかなり心配を掛けてしまったようなので、その点は大いに反省しております。
メアリーやカルロの侍従、護衛騎士達に無茶を言った事もちゃんと謝りました。
みんなも令息令嬢の無茶を止められなかった事を、それぞれが上役に叱られたのだと、ギル兄様から教えて貰ったので、前世の意識のままに行動するのは、周りへの迷惑になると学びました。
それでも私は、まだちゃんとした貴族教育が始まっていないので今回は多めにみて貰えましたが、貴族令嬢として生まれたからには、家の恥にならないようちゃんと勉強しなければならないと痛感したのです。
そんなこんなで、自分のやらかしで少し凹みつつも、孤児院での話し合いに向かいますよー。
◇◇◇
やってきました、孤児院♪
前回のプロジェクトへの参加要請の際は、私のお昼寝中にお話が終わってしまっていたので、孤児院への訪問は初めてです。
昨日カルロには迷惑を掛けてしまったので、今日のメーア王国語での会話は私が通訳することにしました。
カルロも喜んでくれたんだけど、前回通訳をしてくれたフラン従姉様が
<何だか私が通訳した時より嬉しそうですこと~。>と、カルロにからかい混じりに言った。
<そ、そんな、フラン様の通訳も嬉しかったです!(でも、今日はマリーナとずっと隣に居られるのは嬉しいな///)>
カルロが照れながらフラン従姉様に慌てて返答しているのを、やっぱり大人の綺麗なお姉さんに憧れる年だよね~♪と微笑ましく見ていましたが、からかった本人であるフランも、それ以外のメンバーも全員が『いまカルロが照れている理由は、絶対にマリーナが考えている様なことじゃない!!』といい加減カルロの危うさに、気付いて欲しいような気付いて欲しくないような・・・割り切れない思いを抱えつつ、微妙な表情で見つめていた。
馬車から降りた私たちが、そんな微妙な雰囲気になっているところへ、孤児院の院長が声を掛けてきた。
「みなさま、お待ちしておりました。・・・ん?何かございましたか?」
「いや・・・問題無い。院長、本日も宜しく頼む。」
「こちらこそ、ご足労頂きありがとうございます。では、みなさま中へどうぞ。」
院長の案内で、前回と同じ応接室へと通された。
前回と同様に、職員の女性が紅茶を運んできて、人数分のセッティングをして退出していった。
私がどこに居るかというと、1人で座るには大人用のソファが大きすぎたので、安定のギル兄様の膝の上に座っております・・・。
通訳の関係で、隣にはカルロがニコニコと座っていますが、大事な話し合いなのに何とも締まらない構図です。うん・・・諦めて無心でいようと思います。
「さて、本日はプロジェクトの具体的な話をするために来たのだが、その前に前回来ていなかった我が家の末子の姫を紹介しよう。この子が我が家の天使マリーナだ。」
いやいや、姫やら天使やらキャラが渋滞してますって。挨拶し辛い前振りをありがとう[泣]
「はじめまして、バイエルンはくしゃくけのマリーナよ。こじいんにくるのを、たのしみにしていたから、とってもうれしいわ♪」
ギル兄様の膝の上からニッコリご挨拶です。うん、バッチリ噛まずに言えたね♪うふふん♪
(噛まずに言えたことで、無意識にどや顔が出ていたが、みんな可愛いな~とスルーしました。)
「おお!次期様が仰っていた通り、とても聡明で利発そうなお嬢様ですな。私はこの孤児院を任されております院長でございます。よろしくお願い致します。」
わぁ、とっても優しそうな院長さんだな~。子供が好きな感じが伝わってくるよ。
うん、この人が院長なら子供達もしっかり面倒みて貰えてそうだし良かった。
「挨拶も済んだところで、まずはこの数日での調査と検討の結果を報告したいと思う。」
■港の管理事務所の協力を得て、現在起こっている・または過去に起こった言語関係のトラブルについてまとめて貰っていること。それを踏まえてどういった内容に対応していくのかを検討する予定。
■フェレーリ侯爵家の商船の下級船員達からも話を聞いていて、そちらも可能な限り実際の依頼内容に反映予定。
■子供達への言語教育については、これまで通り基本的な所までは孤児院で教育を進めてもらい、その後は段階的に進めたい。
①孤児院でのメーア王国語と計算などの基本教育
②お使いの練習と、どの店に何がいくらくらいで売っているのかを把握
③ムリーノ王国語での基本教育
④最終テスト(お使いをムリーノ王国語で依頼。依頼通りに達成できれば合格)
※④までは1年以内での達成を目指したいが、子供達や寡婦(寡夫)の習得度にもよるので、あくまでも大まかな目安となる。
ここまでを説明した上で、マリーナとカルロが用意した紙の絵本以外の知育教材を提示した上で、どのように使う物なのか、どういった効果が見込めるのかを説明していった。
「これは、素晴らしい!!布の絵本は子供達の中にも裁縫や刺繍が得意な子がおりますので、解れや破損は修理が出来ますし、小さい子にも安心して使わせてあげられます。指でなぞるだけでも練習になるのであれば、広い場所も必要ありません。初めて文字を習う子供達にはとても良い教材だと思います!!」
うんうん、自分たちで修理出来るって大事だよね。
修理出来ない物は壊しそうな子には扱わせてあげられないし、それじゃあ本末転倒だもの。
「布の小物と木の硬貨での、簡単な計算が出来るようになった子達には、次のステップとして、2つを組み合わせてお使いの練習もさせて欲しい。物を買った際の支払金額とおつりの計算が素早く出来るようにしたい。現段階ですでに基本教育を終えている者も居ると思うので、その場合はお使いの練習と、市場の店舗調査に進んで貰って構わない。判断は、院長に任せるよ。」
店舗の調査に関しては可能であれば最初にリスト化して、その後同じステップに進んだ子達は、リストを参考に店舗を把握すると共に、値段や取扱品目が変わっていないかの確認と、変わっていた場合はリストの修正をしていくと、常に新しい情報のリストが維持出来るとアドバイスしてみたが、
「なんと、無駄が無く、素晴らしいご提案でしょう!!」と、院長がいたく感動してくれた。
さらには、兄様達まで「素晴らしいよ、マリーナ!!その方法なら、最初のリスト化に手間は掛かっても、その後の維持・管理が格段に楽になる。他での応用も利きそうだから、父様に提案して邸や商会でも取り入れよう!」とキラキラした目で力説している。
うん、前世の営業事務時代に教わった在庫管理方法を提案しただけなのですが、ここまで絶賛されると・・・自分で編み出した方法じゃ無いだけに、非常に居たたまれない気持ちになるね。
まあ、いずれは誰かが考えただろうし、少し早まっただけだと思っておこう。うんうん。
そして、一通り院長や兄様達からの絶賛が終わり、落ち着いた雰囲気になってきたところで、布小物や布絵本に関しては裁縫や刺繍が得意な高齢者や、傷病者で家から出るのは難しいけど手作業には問題無い人など、そういった人達に内職的に依頼をして、少しでも収入を得る助けにしたいこと。
木の硬貨に関しては、アンカーの町の大工工房の見習い大工の練習として依頼をしようと思っていること。
それらを院長に説明すると、「孤児や寡婦達だけではなく、弱い立場の者達にまでご配慮下さるとは・・・なんと有り難いことです。」とハンカチで涙を拭っている。
「先日プロジェクトのお話を伺ってから、こちらに子供を預けて仕事をしている寡婦や寡夫に声を掛けてみたのですが、すでに3組ほどの親子が参加してみたいと申しております。ただ、参加してみたいが乳飲み子を抱える者もおり、難しいのではと足踏みをしている者もおります。何か手立てはありませんでしょうか。」
そっか、子供がある程度育っていれば、一緒に勉強したり、お使いを熟したりも出来るけど、赤ちゃんだと定期的にお乳やおむつ替えが必要になるし、思うように動けない場合も多いものね。
ちなみに、現在この孤児院では赤ちゃんが3名おり、赤ちゃん専属の職員が2名いて、交代で昼夜の面倒をみているが負担はかなり大きいため、大きい子の担当職員が日中は手伝って仮眠を取らせたりしているみたい。
うーん、それじゃあ・・・変則的な託児所にするのはどうかな?
赤ちゃんのいる寡婦(寡夫)は勉強や仕事と、子守を交代でするの。
基本は孤児院の子と一緒に預かって貰うんだけど、それだと担当職員の負担が増えるだけだから、預ける側のお母さん達にも順番で職員の補助をお願いする形かな。
それだと、定期的に自分の子供と過ごす時間も取れるし、預けている間は勉強や仕事に専念することも できる。
他の人よりも少し歩みはゆっくりになるだろうけど、大事な時間だと思うから、焦らずに進めて貰えたらいいなと思う。
もし、勉強が苦手っていうなら、その間に布小物や布絵本の作成をして貰っても良いしね。
そう提案すると、自分でも孤児院で奉仕活動をしていて、赤ちゃんのお世話の大変さを知っているフラン従姉様が、
「確かに、それなら新しい職員を増やす必要はないし、元々が赤ちゃんのお世話をしている人達だから、他の赤ちゃんのお世話にも不安はないわね。1人でみている訳じゃ無いから、熱が出たりしても対処しやすいだろうし良いかもしれないわ。うちの孤児院でも是非提案してみたいわ!」
と、珍しく少し興奮気味に話し、それに院長が
「はい、うちもこれ以上の職員を増やすことは難しいですが、一緒に預かることで職員の補助をしてもらえるのであれば、双方の負担の軽減になると思います。」
と、賛成してくれたのでその方向で話を進めることになった。
あとは、教材の準備ができ次第、プロジェクトを進めていくことになる。
次に3家が揃う4ヶ月後の各領地での進行具合によっては、修正が必要となるかもしれないが、それまではひとまず無理の無い範囲で迅速に進めたいという方針を確認し、今回の話し合いは終了となった。
さてさて、あとは下準備が整ったら、いよいよプロジェクトの始動だ~♪
最後まで読んでいただきありがとうございます(ღ˘⌣˘ღ)




