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夢見るアリスと白兎アイホート  作者: 潮田しお
第4章『等身大の人形館』
22/35

Dream.22『ローゼンの人形』

アリスとイヴは警戒するようにして開けた扉の隙間から覗き店内を見渡す。店内はアンティークショップのようにビンテージの家具が配置され、そこに可愛らしいフリルに包まれたビスクドールが飾られている。人形だけでは無くその可愛らしさをより引き立たせるように観葉植物やミニチュアのアイテムが添えられとても乙女心をくすぐられる。


「ここで合ってるの?イヴ」

自身の下で部屋を覗くイヴに尋ねる。

「間違いない」


 恐る恐る店内に2人は踏み入る。

「誘拐事件とか関係無かったら普通に癒されてずっと見ていたいくらいなんだけどなぁ」


 アリスはパッと目に付いた人形を手に持って見てみる。それは触ってみないと気づかないほど精巧に作られている。大きさに見合わずズッシリとした重さがあり何となく温かみを感じた。


 イヴの方を見ると、不機嫌そうな顔つきで人形を見ていた。


「どうしたの?」


「ここ、すごく居心地が悪い。淀んだ空気をしてる。邪悪な念が渦巻いてるみたいで」


 アリスがビーズの垂れ幕を潜って部屋を探索していると、壁に飾られてる人形達の背後に隠すようにして扉があるのを見つけた。


「イヴ、ここ。扉がある」

 アリスは小さな声でイヴに話しかけ見つけたものを伝える。イヴが傍に寄る。


 そっと扉を開くと、作業室のようだ。部屋の四方に大きな棚が置いてある。布やレース、ボタンなどの衣装の飾りが仕舞われており、他の引き出しには人形のパーツやそれを繋ぎ合わせるための紐が巻かれたボビンもあった。人形を作るための材料、道具が全て揃っているという感じだ。


 そして、中央の作業台には真新しい人形がポツンと置かれてある。


「…………」

 イヴはその人形を見て何かを察したように沈黙している。


「……イヴ?」アリスが心配してイヴの顔を覗き込む。


「この人形、攫われた子に似ている」


「え……」アリスは思わず息を呑む。ということはつまり、この場にいる人形は……


「全部、元人間……?」

「そういうことになる」


 イヴが恐ろしい事実を肯定する。あの時イヴが感じた気配は人形が助けを求めてのものだったのかもしれない。だったら助けないと!なんとか彼らを人形から元に戻せる方法は無いのだろうか。


 イヴもアリスの意見に同意し部屋を見て回る。アリスが棚の中を隈無く見ていると、ある魔道書を見つけた。


「えっと、妖蛆の秘密?……英語で書かれてある。あ、付箋」

 アリスが付箋のついたページを開く。


「精神転移の呪文……永久に、魂は戻らない……?」

 アリスは驚愕の一文に絶望する。


「いや、もう一度呪文を掛けて遺体が残っていればまだなんとかなるかもしれない」


「そっか、じゃあさっきの子はまだ助かるかも。どこに隠されてるんだろ」

 少しの希望が見えたアリスは再び捜査を開始する。そして、床に何かが擦れたような跡を見つけた。それはある棚に続いている。


「これを動かせれたらヒントが見つかるかも!」

「わかった」


 イヴが棚を動かそうと力を入れるが中身が詰まってることもありなかなか動かない。

「何か仕掛けがあるのかも。じゃないと無理」


「仕掛けか〜、まだ調べたりないところがあるのかも。まだ調べてないとこ……」

 アリスはふと思い当たり、作業台の裏を覗いてみる。そこには1冊の日記がテープで固定されていた。


「これだ!」アリスは日記を取り外し開く。


 その日記には店主であろうローゼンの日々が綴られていた。ローゼンは人形やぬいぐるみを作るのが好きな少女だった。彼女は同性にあまり好かれず、また惚れっぽい性格でダメな男に騙されては絶望する。そんな毎日を送っていた。大好きな祖母が亡くなり、心の支えが無くなってからローゼンはあることを思い出した。幼少時代のイマジナリーフレンドの存在だ。


 その子の名前はアリス。優しくて可愛くて自分だけの友達。その日からローゼンは狂ったように人形を作り続け、朧げに浮かぶ理想の少女を求めていた。そして最後に、『隠しごとは薔薇の下』という1文で終わった。



「……え?私!?いや、私は実在するし同姓同名の別人だよね。ややこしいなぁ」

「隠しごとは薔薇の下?」イヴが首を傾げる。

「少なくとも、この棚に関係があると思うんだよ」アリスは再度棚を調べる。そして1つ、それらしいものを見つけた。

 薔薇の形をしたボタンだ。アリスはその下のボタンを調べてみると、開くようになっており中にスイッチらしきものがあった。アリスがスイッチを押すと、カラカラとカラクリが動き出し棚が移動する。


 そして、2人の目の前には地下へと続く階段があった。冷ややかな空気が足元を伝う。覚悟を決めた2人は一段一段階段を下って行った。

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